公平なイスラエルのニュース、またその周辺国のニュースは、日本語のものは極めて乏しい中、次のブログ・ニュースは分かり易く、非常に良質です。
「オリーブ便り|イスラエルを中心とした中東・世界のニュースをエルサレムから」
発信者は、(ネット上で調べますと)ブリッジ・フォー・ピースの専任講師の石堂ゆみさんです。今、大変な局面に入っているエジプトでの内紛、そして現在進行形の中東和平交渉について、日本のマスコミには現れてこない情報が見えてきます。
例えば、これは信じがたいと思われる日本の人がいるかもしれませんが、現地の人にとっては周知の事実であるニュースを紹介します。
かつて、米国大統領候補のロムニー氏がエルサレム訪問でイスラエル支持の表明をした時、「パレスチナの人たちが、アメリカとイスラエルの思惑によって大変な目に合っている。」というコメントを教会の指導者がしていたのを見ましたが、それは日本の典型的な「弱者重視」を気取っている人々の意見です。けれども全く別の意味で、それは当たっています。
人は元々、政治的ではなく、生活の保障という経済性の強い生き物です。パレスチナ国家ができるかどうかが市井の市民にとって重要なのではなく、日々の飯がきちんと食べられるかどうかが大事なのです。
それが、オスロ合意が結ばれてからはパレスチナ自治区から労働者がイスラエル側に出稼ぎに大量に来ていたところ、第二次インティファーダの自爆テロをきっかけにしてイスラエルが分離フェンスを設けたために、テロ事件は激減した一方で、出稼ぎが難しくなってしまいました。けれども、その代わりではないのですが、数少ない収入源として入植地を通しての事業がパレスチナ人の実際の生活の安定した糧になっているのです。
アラブ系イスラエル人の本音も、「今、パレスチナ国家ができても、私はイスラエル市民権は放棄しない」というのがほぼ100%です。私は今年のイスラエル旅行で初めてナザレを訪れましたが、その雰囲気の穏やかさに驚きました。そこはアラブ人クリスチャンの町ですが、キリスト教徒であるということの他に、生活保護などイスラエルからの生活保障がしっかり与えられているから、心が安定し、穏やかでいられるとのことです。
日本政府も、領土交渉とは別にして、ヨルダン渓谷の「平和と繁栄の回廊創設構想」を打ち出して、ヨルダン、パレスチナ自治区、イスラエルが共同で経済基盤づくりをすることで、実際の協同作業をすることで信頼醸成をするという構想も、ブログ内の団体と共通した考えであります。
当記事において大事なのは最後の段落でしょう。
<政治と現場のギャップ>
今回私が会った人々は、西岸地区のほんの一部だが、ここではユダヤ人もパレスチナ人も、政治的に2国家に分けるということを希望と考えている人はなさそうだった。
政治さえなければ、現地ではそれなりに共存している一面も確あるからである。とはいえ、政治を無視するわけにはいかないので、人々の顔は”困った”顔なのである。
西岸地区ユダヤ人入植地代表のダニー・ダヤン氏は、次のように語った。「地元では、地元人どうしでなんとか仲良くやっていこうと努力している。
たとえば、検問所の環境や条件を交渉するなど、もっと日常生活の具体的な点を交渉することから始めるべきだ。そうした交渉なら、結果を出せる。
こうした小さな具体的な交渉を20年続けて信頼関係を築いた後なら、国境線や、エルサレム問題に入れば、結果もだせるだろう。ケリー国務長官は、いきなり国境線、エルサレム問題といっているが、それは間違った選択だ。」
したがって、今の交渉は逆の意味で、実際のパレスチナの人々を困らせていることになるのです。・・・私はキリスト者として、政治家や頭だけの評論家のようではなく、現場の人々の視点からの平和を求めたいと思います。
大分前に中東関係でコメントした鈴木と申します。この記事とブログに少しだけ補足を加えたいと思いました。
イスラエル在住のアラブ系クリスチャンと、イスラエル周辺に住むアラブ系クリスチャンで、若干温度差があることは、ほとんど日本では知られていないので、その点は指摘したいと思います。
イスラエルでは、クリスチャンは伝道活動をしない限り、信仰の自由が保障されています。ただし、ユダヤ人を改宗させることは、確か国の法律で厳禁だったと聞きます。反面、中東では、レバノンを除く全ての国で、クリスチャンは伝道活動はおろか、ジズヤ(イスラム教徒が異教徒に課す税金)を払ったり、それ以外でも既存の教会内にイスラム教徒や国家からのスパイが潜入しており、他にも様々な政治・社会的要因で、20世紀以降、急速にクリスチャンが欧州、南米そして北米へと移住し、人口が一方的に減っている状況があります。あのガザ地区も、中東戦争以前はクリスチャンの町だったそうです。フィリップ・ジェンキンスという学者が、近代以降の急速なイスラム化や、様々な政治的要因により、一部のキリスト教徒が過激になり、彼らが欧米とアラブ社会の間で葛藤した結果、アラブ人のアイデンティティを守るという大義で、PLOやハマスといったイスラム過激派に入団しテロ活動をする、といった行動も見られる、という興味深い指摘をしています。レバノンでは、マロン派などのキリスト教徒はどちらかと言えば親イスラエル派ですが、実際に私がベイルートでのMiddle East Conferenceで福音派のクリスチャンの話を聞いた範囲で感じたことは、欧米の政治・軍事介入の結果、最終的に最も(イスラム教徒から)激しく迫害され、多くの犠牲を強いられたのはクリスチャンであり、イスラム教徒以上に複雑な環境と様々な感情が交錯し、それでも茨の道を進んでいる、という状況のようです。彼らは決して国家としてのイスラエルに対して諸手を挙げて祝福しているわけではありません。それでも許している、というのが実情です。もちろん、これは私の2ヶ月ほどの滞在で得たことなので、状況は変わっているかもしれません。
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