先週の恵比寿バイブルスタディの中で、今のエジプトの聖書的意義についての質問を受けました。「キリスト者が考えるべき「エジプト」 - ②聖書預言」の中の内容をかいつまんでお話ししましたが、一人の姉妹が「中東で起こっていることが、これほど日本人にも関わっていると感じることはありませんでした。」と仰っていました。
「Six Days of War(戦争の六日間) 」など中東戦争史の記事で言及しましたが、エジプトは四つの中東戦争においてすべて関わった国であり、その全てにおいて指揮的な役割を話してきました。その中東全域に影響力を持つエジプトが、第四次のヨム・キプール戦争によって、当時のエジプト大統領サダトがイスラエルとの和平に大きく舵取りを行ない、イスラエルはそれ以降、国と国との戦争をせずにいられるようになり、中東全域に安定をもたらしました。
そして、その路線を踏襲し、その後、イランのイスラム革命(79年)によって顕在したイスラム主義と対抗し強権的にその分子をつぶしていったのがムバラク大統領です。
かつサダト大統領は社会主義者であったカリスマ的指導者ナセルの親ソ連の外交姿勢を大幅に変え、アメリカに機軸を移しました。経済制度において自由経済制を導入し、ムバラクもそれを推進しました。ですから、経済成長の指標においてはエジプトは好調であるように見える一方、貧富の差があまりにも大きくなってしまったので、今回のデモの一因になりました。
このようにムバラク氏の中東における役割があまりにも大きかったため、彼がいなくなった今、単純に「独裁制からの民主化」という構図で簡単に語れない、新たな不穏の動きを醸し出しています。
前の「エジプトの騒乱 - 危険な振り子」の記事に「ムスリム同胞団」の存在を書きました。「キリスト者が考えるべき「エジプト」 - ①情勢分析」で、ある牧師さんのまとめられた要点の三つ目にこう書いてあります。
その反政府デモを支持しているグループの一つに、イスラム原理主義の立場を堅守し、もし政権を取るならばイスラエルとの平和条約を破棄すると言明している「ムスリム同胞団」が加わっている。 もしその通りになれば中東のパワーバランスは一気に変化し、イスラエルは窮地に立たされ、アメリカの中東政策は崩壊する。
この懸念に対して、私がある書き込みのところで言及したら、「ムスリム同胞団は過激派ではない。彼らに一度、政権を取らせて、その民主化のプロセスをやらせてみるべきだ。もし民主化の方向に向かなければエジプト国民が彼らを引きおろすであろう。」という返事が、おそらくヨーロッパの人であろう人から返ってきました。
果たしてそうなのでしょうか?日本語によるこの団体を説明している記事においても、この団体を「イスラーム的な文化・伝統を重視する民主主義を前提とした穏健保守政党」と位置づけています。
ムスリム同胞団は何を目指しているのか?その方針と政策のまとめ
そして米国政府もこの見方によってムバラク後のエジプトを歓迎しました。
ところが、さっそく不穏な動きが出ています。
Military opens Tahrir Sq. for Islamic radical to preach jihad
(軍は、タフリール広場を、イスラムの過激派のジハード説く場とした)
ここに、エジプトから追放されていた「アル・カラダウィ」という、ムスリム同胞団の人気説教者が
アル・アクサ(神殿の丘)の征服
「同胞ハマス」の為、エジプト-ガザ地区境界を啓開
イスラエルとの79年平和条約の破棄
を叫んでいました。(こちらに英語字幕付きのビデオがあります)
驚くべきは、これがエジプトを暫定統治をしているエジプト軍が行なっていることです。他の野党には演説を許さず排除した上で、彼を国営放送で高らかに説教させるようにしました。
エジプト軍最高評議会は、さらにイランの軍艦がスエズ運河を通過し、シリアへ航行する許可を与えています。(そのことも、アル・カラダウィが賞賛しています。)
これがいかに危機的状況を作り出しているかは、今、アフマディネジャド大統領が「第十二代目イマーム(イスラム版メシヤ)がエジプトの暴動を指揮しておられるのを目撃している。イスラエルとアメリカ、西洋の力が滅びる裁きの日は来ている。」と説き、イランの核施設が復帰している中でイスラエルの近海を航行していくのです。
「エジプト軍最高評議会下のエジプト」への1件のフィードバック
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