今の中東情勢を知りたいと願われる方は、次の本をぜひ読んでください。必読です。
「おおエルサレム!(上)」(ドミニク・ラピエール、ラリー・コリンズ著 早川書房
「おおエルサレム!(下)」
二冊とも絶版になっていますが、図書館や古本屋にはあります。(ちなみに私は原書を読みました。)
なぜ必読かと言いますと、今起こっている中東紛争の始まりは全て1948年のイスラエル建国直後に起こった独立戦争に起因しており、この戦争とその周囲で起こったことを知らなければその後のことは何も分からないからです。この本は、独立戦争について調べる時、資料として必ず出てきます。
そしてこの本は、詳細な軍事行動よりも、当事者の人物の生きた動きを中心に描いているため、小説のように非常に読みやすく、その時の状況を肌で感じることができます。ユダヤ人・アラブ人・英国のそれぞれの立場から、同時進行で話が展開していきます。
(詳細な軍事行動については、他の中東戦争も含めて、ハイム・ヘルツォール著の「図解 中東戦争」が定番です。今、読んでいますが、軍事作戦の位置関係を追うのが難しくかなり苦しんでいます。(汗)ちなみにもっと平易なもので「中東戦争全史」(山崎雅弘著 学習研究社出版)というものもあるらしいです。)
そしてなんと、映画化もされていました!
http://www.ojerusalemthemovie.com/
アメリカでDVDになったようですが、日本にはまだ来ていないようです・・・。(残念)ただ、予告編を見た限りはやはり本そのものを読んだようがよさそうです。ちょっと脚色が多いような気がしますし、映像化したので内容も薄められている感じです。
この本の感想をかいつまんで話しますと・・・
1)イスラエルは、まだ独立していていなかったので「国家」になっていない状態で、戦争の準備をしなければいけなかったという大きなハンディ(障害)を背負っていたこと。統治している英国は武器所有を認めていなかったし、武器売買をする商人たちは、非合法の組織ではなく国家との取り引きしかしませんでした。けれども、奇跡的にそのルートを得ます。
2)アラブ諸国は、非常にまとまりがなく「イスラエルを倒す」ということ以外は自分たちのやりたい放題だったこと。「アラビアのロレンス」の映画でも感じましたが、アラブ人の良さでもありますがあの民族的誇りが彼らを邪魔します。けれども、この本でアラブ人たちにもっと親近感と好感が出てきました。(去年、エジプト旅行に行ったことも手伝っているかな?)
3)戦争勃発後、エルサレムは絶対絶命状態であったのに、国連による28日間の第一次休戦合意で、九死に一生を得ました。これがなければ、イスラエルは文字通り残滅していたことを思うと、神の御手を感じざるを得ません。
4)しばしば誤解そして歪曲されているのが、「イスラエルは在米ユダヤ人の支援があったからこそ、戦争に勝つことができたのだ。」ということ。結果として、部分的にはそう言えるのですが、在米ユダヤ人のほとんどがシオニズム(イスラエル建国)に冷淡だったという背景が見えてきます。けれども、後に首相となるゴルダ・メイアー女史がたった手持ち金10ドルでニューヨークに到着、5000万ドルを得て帰国するという奇跡的な話が出てきます。
5)アメリカがイスラエルを支援するから、イスラエルが戦争に勝つのだ、というのも誤解・歪曲です。アメリカ政府内の熾烈な確執を生々しく描いています。純粋のアメリカの国益を考えたら、イスラエルは捨てたほうが良いのです。国務省グループはみなそう考えていたところ、時のトルーマン大統領は逡巡しながら、独立宣言後すぐにイスラエルを認知する苦渋の決断を出した、という背景があります。
とにかく、この本はお勧めです。・・・あと、建国時のことをを描いたハリウッド映画で「栄光への脱出」がありますね。若き頃のポール・ニューマンを楽しめます。
次に、もう一つ大事な「六日戦争」についての本を紹介したいと思います。
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