ワシントン(CNN) 米国のホルダー司法長官は11日、イランによる駐米サウジアラビア大使の暗殺計画を阻止したと発表した。計画の指示はイラン政府内部から出ていたという。
米連邦捜査局(FBI)によると、米国籍を持つイラン人のマンスール・アルバブシアル容疑者(56)と、イラン革命防衛隊に所属するゴラム・シャクリ容疑者が、外国当局者の殺害と大量兵器使用を図り、テロ行為を計画した共謀罪で起訴された。アルバブシアル容疑者は9月に逮捕されているが、シャクリ容疑者は捕まっていない。
(中略)米当局者らによれば、容疑者らはサウジ大使だけでなく、ワシントンやアルゼンチンの首都ブエノスアイレスでイスラエル、サウジ両大使館を攻撃する計画も検討していたとみられる。なぜサウジ大使が標的とされたのかや、イラン政府内部で計画がどの程度知られていたかなどは明らかでない。
・・・とのことですが、CIAのスパイとして革命防衛隊にいた人によるA Time to Betrayを最近読んでいたので、十分ありえる話だなと納得しました。もし阻止できていなければ、今頃、大変な騒ぎになっていたことでしょう。
ここでの重要な点は、「サウジアラビア」が標的にされていることです。イランがアラブではないことは、歴史的、民族的に明らかであり、また宗教的(イランはシーア派、サウジはスンニ派)な違いと、中東の覇権争いが続いています。
よろしければ、この機会に「エゼキエル38章」の聖書講解を一読してみてください。今の情勢と、預言者エゼキエルが見た幻が酷似していることを説明しました。その時点で明らかでなかったのは、1)トルコの動き、と、2)サウジアラビアでした。けれども、トルコは2010年の「ガザ支援船拿捕事件」を契機にイスラエルとの外交関係を切る脅しをかけ、ロシア、イラン、周辺アラブ諸国との連携に躍起になっています。そしてサウジアラビアは、「シェバとデダン」であり、イスラエルを攻める動きに対して反対表明を出すけれども、何の行動も出せない状況を表していますが、今回の事件でイラン(聖書上ではペルシヤ)との対立が表面化しました。
ところで、エゼキエル38,39章の預言を基調にして世界情勢小説を連載で描いている、ジョエル・ローゼンバーグ氏は、再び新著において、この出来事を言い当てるノストラダムス(?)になってしまいました。
ローゼンバーグ氏は、小説の原稿を出版社に出した後で、911を始めとする数々の中東情勢がその通りになりました(Epicenterの書評)。今回は、”Teheran Initiative“(テヘランの先制)という新書が出ましたが、イランのテロ攻撃が、米国内のアメリカ人、アラブ人、イスラエル人の指導層に対して行なわれ、この攻略によって米国の大統領府はイスラエルに対して、イラン国内の核施設に対して先制攻撃をしないように圧力をかけることから始まります。アメリカが武力攻撃も辞さない姿勢を見せていないこと、また先制攻撃を行なうな、という圧力は既にクリントン国務長官の口によって表面化しました。
ところで、「イラン」という国について、とても面白い本を先ほど読み終わりました。
「イランはこれからどうなるのか 『イスラム大国』の真実」 春日孝之著 新潮社
毎日新聞の記者としてテヘランに在住していた経験を生かして、日常生活で起こっている卑近な例を引き合いに出しながら、国内外で起こっていることを柔軟に説明してくれています。A Time To Betrayの著者レザ・カーリリ氏の反体制的な視点とは一見正反対の姿を描いていますが、どちらも真実なんだろうな、という感想を持ちました。イランの不透明さと不測な動きは、「悪の三枢軸」の中で一緒になっている北朝鮮とではなく、むしろ共産主義を国是にしながら市場経済を導入している現代中国に似ているかもしれません。
今回の暗殺未遂の事件も、既に、宗教指導層側がアフマディネジャド外しを行なっている動き(英語、日本語)に呼応した形で起こしたのではないかと言われています。大統領の取巻きにはない革命防衛隊の一部が行ったものである、とか、ハメネイ氏側が米国との限定的武力衝突を狙って行ったものだとかいう情報があります。そうすると、アフマディネジャド自身が「こんな計画は知らない。」と反論しているのもうなずけます。上記の書物にも、イスラム法学者の動きと大統領制の二重構造を上手に説明しています。