ブログ記事「初めから物語る歴史 その5」で参照図書にしていましたが、実はまだ読んでいませんでした。ハーベストタイムに連載されている「イスラエル建国史」の紹介で、人物像に焦点を当てている本ということで推薦していたので、これは専門的、無味乾燥になりがちなイスラエルの近代史を知るには、良書かもしれないと思いました。そしていま読み終えて「その通りだった」と確認しました。
内容は、私個人は「イスラエル全史」に多くが既出でしたが、やはり平易な文体で各章が短くまとめられているので心に残ると思います。そして著者の見方の特徴は、シオン帰還運動を神の一代叙詩(詩篇121)と捉えていることです。これは、信仰者にとって益になることだと思います。
個人的に気に入ったのは、シオニズム運動におけるキリスト者の働きに一章が割かれていることです。当時は米国ではなく英国の中で存在していました。そして、リクード党の初の首相になったベギン氏の歴史的再評価はすばらしかったです。(彼は先の投稿の、バビロン作戦を指示・決定した時の首相でもあります。)歴史というのは、その国の権力者の目で捉えられていることを踏まえて、テロリストであるかのように見られているイルグンの活動にも、新鮮な視点を与えてくれています。その反面、一般的なイスラエル建国史の中心人物であるベングリオン初代首相が中心になっていないことが面白いのですが、やはり彼が中心であったことは他の書物によって補完すべきでしょう。
さらに最期に補足として「ある過激アラブ民族主義者の生涯 ――ハジ・アミン・アル・フセイニーについて」という章を追記しています。これは、誤った中東近代史が常識化している今、必ず知らなければいけない人物でしょう。確かにアラブ人の中に、大量のユダヤ人の帰還民流入によって反感は出てきましたが、彼が扇動して対立を造り上げたと言ってよいでしょう。彼は亡命先でもナチスと手を組んでユダヤ人撲滅の運動を展開していました。その甥が、あのヤセル・アラファトであることも付記されています。
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