ガザ地区からのロケット攻撃、イスラエルのガザへの応酬がここ数日、激しくなっています。恵比寿バイブルスタディの参加者の方で青木さんという兄弟が、ご自身のフェイスブックで詳しく情勢解説を書き記しておられます。とても参考になるので、ご本人の許可の上、掲載させていただきます。(日にちのところのリンク先をクリックすれば元記事が読めます。他の関連記事も読むことができます。)
大事なのは、これがイランが黒幕の代理戦争になっていること、です。エゼキエル38章の預言をまた見つめなおす時です。
(またイスラエル在住している日本人による、こちらの記事も参考になります→ 「キパット・バイゼル」。イスラエルの迎撃ミサイル「アイアン・ドーム」はヘブル語では何と、「鉄のキッパ」だということ。「鉄」は文字通りではなく強さを表します。黙示録19章の再来されるイエス様の「鉄の杖」を思い出しました。)
では、青木さんの記事です。
11月15日「イスラエルとキプロスの間に発見された海底ガス田を巡る超大国の駆け引き」
最近になってイスラエル沖にその名も「リバイアサン」と呼ばれるガス田が発見されたが、海底ガス田はさらにキプロス島沖まで広がっている。この巨大な海底ガス田に大国が目をつけないはずがない。
このガス田の開発に成功すればイスラエルはエネルギーの輸出国に変わる。イスラエルはかつてはエジプトからガスをパイプラインで輸入していたが、ムバラク政権崩壊後、パイプラインがテロ攻撃されて輸送が途絶えることがある。イスラエル沖のガス田が開発されればその心配がなくなるだけでなく、イスラエルはEUへのガス輸出国になれる。そのためには、キプロスとの共同開発が必要となるが、このキプロスという国は、北はトルコ領、南は英国領と分断されたややこしい国である。
かつてはイスラエルはトルコと仲が良かったが、ここにきて、トルコは反イスラエルになり、ロシアに急接近している。そして、タックスヘイブン(租税回避地)であるキプロスには、ロシアのアングラマネーが流れ込んでいるのだ。さらに、キプロスは国としては、ギリシャと同様、EUの加盟国である。そしてイスラエルはアメリカの同盟国。イスラエル、キプロスという小国にアメリカ、ロシア、EUという超大国が加わって、ガスの利権を争う構図になる。
中東を見るとき、この海底ガス田を巡る争いはこれから注目すべきポイントになってくると思う。
(参照:拙ブログ「イスラエルの天然ガス掘削と「ゴグ」預言」)
11月15日「今、ガザ地区で起きていること」
イスラエルに家族で旅行したのはもう20年も前のことになる。長男がまだ1歳だったので、旅行会社のツアーについていくのは大変だと思ってレンタカーを借りて自分たちでいろいろな場所を訪れた。イスラエルとパレスチナの紛争はあったが、まだ無差別の自爆テロはなかった時代だ。ツーリストのレンタカーは特別なナンバープレートなので、標的にされることはないから心配いらないと言われ、パレスチナ自治区であるヨルダン川西岸地区には行った。イエスの生まれたベツレヘムや、アブ…ラハム、イサク、ヤコブら旧約聖書の族長たちの墓があるヘブロンなど聖地旅行では外せない町がヨルダン川西岸にはあるからだ。それでも間違っても入るなと厳しく注意されたのが「ガザ地区」である。ここは第3次中東戦争でイスラエルが獲得した領土で、かつてはユダヤ人の入植が行われていたが、2005年からはイスラエルは完全撤退している。イスラエルに隣接するもっとも危険な地区であり、最近はガザ地区にいるハマス(イスラム過激派)がロケット弾をイスラエル側に発射していた。
昨日、ハマスの軍のトップがイスラエル国防軍の空爆により殺害された。そして、今日、ハマスがイスラエルに報復攻撃を拡大させ、一気に緊張が高まっている。
ハマスはロケット弾を学校や住居から発射する方法をとることで、一般市民を「人間の盾」として使ってイスラエルを攻撃するという卑劣なやり方をしている。イスラエル軍からの空爆を避けるためである。(リンク先のビデオにあるが、イスラエル軍は、ハマスの軍のトップが車に乗っているところをピンポイントで空爆しており、たいしたものだと感心した。)
ハマスはイスラエルが「自ら地獄の扉を開いた」と非難しているが、イスラエルが展開している反撃は近代国家が行う戦争であり、ハマスが行う無差別テロとは違うと思う。戦争にルールもへったくれもないといえば、そうかもしれないが、無差別テロとは区別されると思う。国際社会が(やむをえず)支持に回る戦争と、国際社会が決して妥協しない「テロ」は、やはり別物だろう。(むろん戦争、そしてあらゆる人殺しはそもそも正当化されるものではないけど。)
そしていつも思うことだが、中東のイスラム社会には女性の姿がないことだ。リンク先のビデオを見てもわかるが、ハマス側の映像で出てくるのは男ばっかりだ。男、男、男。むさ苦しくなってしまう。一方、イスラエル側の映像は、SPが取り巻く物々しい雰囲気の中にも女性の姿を見るし、政府高官の中にも女性がいる。やはり男ばっかりだと武装化するのだろうと思う。イスラム教自体が完全に「男の宗教」だし、イスラム教が生まれた時代背景からいっても、どうしても「武装化」ということが根底にある。イスラム社会が残念ながら西洋のように近代化できないのはそこに問題があるだろう。
ハマスを軍事的に支援しているのはシリアとイランだ。ガザ地区という狭い場所でのイスラエルとハマスの小競り合いのように見えるかもしれないが、これはイスラエルとイスラム勢力の代理戦争のようなものだ。先行きが案じられる。
(こんな物騒な問題を抱えたイスラエルですが、危険な地域に行かない限りは、イスラエルの治安は良いと思います。聖地旅行に行っても大丈夫だし、ハイテク産業に強い国なのでビジネスも盛んです。日本はイスラエルと仲良くしておいた方がよいです。)
なお、一般にはあまり知られていないことであるが、このようなことは旧約聖書と新約聖書の終末論を読めば、読み解ける世界の構図である。
エゼキエル書38章には、マゴグ(=ロシア)とペルシャ(=イラン)の同盟軍がゴメル(=トルコ)やプテ(=リビア)などを伴ってイスラエルに攻め入ることが預言されているし、ダニエル書やヨハネ黙示録には復興ローマ帝国(現在のEUであると思われる)が預言されている。
聖書はこれからの中東世界情勢を読み解く基本書である。これは単なる宗教や道徳の本ではないのだ。
旧約聖書エゼキエル書38章2節~9節
人の子よ。メシェクとトバルの大首長であるマゴグの地のゴグに顔を向け、彼に預言して、言え。神である主はこう仰せられる。メシェクとトバルの大首長であるゴグよ。…わたしはあなたを引き回し、あなたのあごに鉤をかけ、あなたと、あなたの全軍勢を出陣させる。それはみな武装した馬や騎兵、大盾と盾を持ち、みな剣を取る大集団だ。ペルシヤとクシュとプテも彼らとともにおり、みな盾とかぶとを着けている。ゴメルと、そのすべての軍隊、北の果てのベテ・トガルマと、そのすべての軍隊、それに多くの国々の民があなたとともにいる。…多くの日が過ぎて、あなたは命令を受け、終わりの年に、一つの国(注:イスラエルを指す)に侵入する。その国は剣の災害から立ち直り、その民は多くの国々の民の中から集められ、久しく廃墟であったイスラエルの山々に住んでいる。その民は国々の民の中から連れ出され、彼らはみな安心して住んでいる。あなたは、あらしのように攻め上り、あなたと、あなたの全部隊、それに、あなたにつく多くの国々の民は、地をおおう雲のようになる。
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11月16日
既に300発近いロケット弾がガザ地区からイスラエルに打ち込まれているが、テルアビブに2発着弾した長距離ミサイルはファジル5(Fajr-5)というイラン製ミサイルで、イスラミック・ジハードのグループが発射したとのことだ。発射に際し、イランのイスラム革命軍のアドバイザーが監督にあたったという情報が流れている。この戦争には、イランの代理戦争という側面があり、国際社会が対応を誤ると、イスラエルーイラン戦争につながりかねない危険性がある。
11月17日「ガザ侵攻はイラン-イスラエル戦争の導火線となるか」
イランがガザ地区からのミサイル攻撃への関与を認めたとの報道がなされている。そればかりか、ガザ危機をさらにエスカレートさせるようにイランから命令が出されているという。
エルサレムへのロケット弾の着弾という事態にまで発展し、イスラエルは今夜にも予定されるガザ侵攻に向けて7万5千人の軍隊を集結しつつある。しかし、イスラエルの軍事目標はガザを占領することではない。イスラエルがもっとも警戒し、当面の軍事目標としているのはイランの核施設である。イスラエルが今回のガザ危機で大きな人的被害を受ければ、イラン核施設への先制攻撃の格好の口実にもなる。
16日国際原子力機関(IAEA)はイランが地下核施設でウラン濃縮用の遠心分離機を増やし、濃縮作業を倍増できる体制を整えたと報告。イランは理論的には核兵器の開発が可能な能力に達した。ネタニヤフ首相がレッドライン(超えてはいけない一線)として国連で国際社会に訴えた最終ラインである。
イスラエルは、解散総選挙を来年1月に前倒しにして再選確実のネタニヤフ首相の体制強化を図っている。2期目で最後になるイラン・アフマディネジャド大統領はイスラエルへの核攻撃をもくろむ。同じく2期目米大統領の再選。中国の世代交代も終わった。
世界の役者はそろい、時機は熟しつつある。ガザ危機の向こう側には、もっとも大きな中東戦争の足音が聞こえる。そしてその足音は日増しに大きくなっている。
Iran admits pulling strings on Gaza crisis
11月17日「イスラエルの軍事作戦名”Pillar of Defense”の意味」
今回のイスラエルのガザ地区の軍事作戦名は英語ではPillar of Defense(防衛の柱)と報道されています。しかしヘブル語を直訳すると、Pillar of Cloud(雲の柱)と訳すのが正確らしいです。
ここまで来れば、欧米人であればピンとくる人も多いと思いますが、日本人にはまだわかりにくいと思います。軍事作戦「雲の柱」は旧約聖書から名づけられています。
モーセが海を分けた話はハリウッド映画にもなりましたのでご存じと思います。エジプトを脱出した古代イスラエル民族が紅海をわたったとき、イスラエル民族と、後を追いかけてきたエジプト軍の間に入って、エジプト軍がイスラエル民族に近づくのを防いだのが「雲の柱」です。
19 イスラエルの部隊に先立って進んでいた神の御使いは、移動して彼らの後ろを行き、彼らの前にあった雲の柱も移動して後ろに立ち、20 エジプトの陣とイスラエルの陣との間に入った。真っ黒な雲が立ちこめ、光が闇夜を貫いた。両軍は、一晩中、互いに近づくことはなかった。(出エジプト記14章19~20節)
あるラビ(旧約聖書の学者)は、エジプト軍が放つ矢を「雲の柱」が捉えて落としたと解釈しています。
ガザ地区から飛んでくるロケット弾からイスラエル市民を守る防衛作戦を、旧約聖書の出エジプト(Exodus)と紅海での彼らの奇跡的な体験になぞらえて「雲の柱」と呼んだのです。
ガザ地区のハマスがエジプトのイスラム原理主義組織であるムスリム同胞団をルーツとしていることを考えるとその意味は一層深まります。これは単なるネーミングのセンスの良さというものを超えて、イスラエルに住むユダヤ人たちが共有するユダヤ人の迫害と離散の苦難の歴史、彼らの信仰とメシア思想に通じるものがあると思います。
ガザ地区の空爆により柱のように立ち上る煙の雲。そこに現代のイスラエルは古代イスラエルをエジプトから守ったヤハウェ(神)の姿を見ているのかもしれません。
旧約聖書の話に戻りますが、エジプトの奴隷生活から解放され、紅海を渡った古代イスラエル民族は、その後、現在のイスラエルの地に帰還するまで荒野で40年間流浪しなければなりませんでした。その間、昼は雲の柱、夜は火の柱が幕屋から立ち上り、イスラエル民族を導きました。幕屋の上に火の柱、雲の柱がとどまっている間は、彼らは何か月でもその場にとどまりました。火の柱、雲の柱が幕屋を離れれば、イスラエル民族は荒野を旅しました(民数記9章15~23節)。そのようにして、火の柱、雲の柱が荒野で古代イスラエル民族を導きました。
イスラエルは、現代と旧約聖書の世界が途切れることなくつながっている不思議な国です。中東情勢を深く知るには、聖書を理解することが欠かせません。
Here’s What ‘Pillar of Defense’ Actually Means
11月19日「イスラエル国防軍「雲の柱」作戦」
ガザ地区に対する「雲の柱」作戦は、Iron Domeという迎撃システムを使ってガザからのミサイルを迎撃することと、ガザ地区のターゲットをピンポイントで空爆することの二つからなっています。200発以上のロケット弾を迎撃したというIron Domeの威力と、ターゲット空爆の正確さは目を見張るものがあります。軍事力の差は歴然としています。
日本のメディアを見ると、どうしてもガザ地区の犠牲者の数に目が行き、イスラエルに批判的な報道が多くなりがちですが、近代国家の自衛とテロ組織の無差別攻撃とを同列で議論するのは正しくないと思います。
ハマスもイスラミックジハードも市民を盾にしたロケット攻撃を行っています。学校や住居からロケットが発射されています。一方、イスラエル国防軍はできる限り個人の建物に損害を与えず、一般市民を巻き添えにしない方法でターゲットを正確にピンポイントで攻撃しています。映像はモスクのすぐ近くの地下にあるロケット発射施設を空爆したときの映像です。モスクは被害を受けていません。
日本のメディアは左翼が多いのか、ややもすると反イスラエルの報道に偏る心配があります。なので、あえて逆の立場からも発言します。