イラクがサダム政権陥落後、最も大きな試練を迎えています。イスラム過激武装集団である、ISIS(「イラクとシャームのイスラーム国」)がイラク第二の都市モースルを攻略し、首都バグダッドに向かっているそうです。
もう一度おさらいすると、中東情勢において知らなければいけない存在は、イスラム過激主義です。アラブ人だからといって宗教的な訳ではありません。世俗派とイスラム復古主義との対立は激しいです。そしてイスラム復古主義の中でも、サウジのような王権を保持するところと、王政も破壊しイスラム法による統治を行う勢力との確執も大きく、見極めが必要です。
ですから、エジプトで起こった反クーデターは、世俗的な軍部と、イスラム原理主義を標榜するムスリム同胞団の対立であり、シリアの内戦は、世俗的なアサド政権に対抗する反乱軍の中に、こうしたイスラム過激主義が入り込んで勢力を伸ばしているというのが現状です。
イスラエルが戦っているのは、こうした過激派です。レバノンでは、シーア派のヒズボラからのミサイル、ガザ地区ではスンニ派のハマスがいます。そしてその背後には、イスラム法による統治を行なうイランの支援があります。
今回の過激武装組織はアルカイーダ系であり、国境を超えたネットワークを持っています。
過激化する霊的背景
なぜ、人々がこのように過激化するのか?日本人の私たちが絶対に関連づけなければいけない事件は、オウム真理教の地下鉄サリン事件なのです。
過激組織に傾倒する人々が現われる背景は、必ずと言って良いほど「物資主義の力」があります。アメリカがなぜ、アルカイーダによって世界貿易センターが破壊されたのか?その時は冷戦が終わり、アメリカが世界一の経済世界大国を誇っていたからです。そこにある、目に見えない価値観が抹殺されている、人は物だけでなく霊によっても生きているという飢え渇きが押しつぶされている、という呻き苦しみを利用して、その象徴的存在を倒すという願望が現われます。しかしもちろん、その組織を運営する者たちは、彼ら自身、金と権力も亡者になりますが、実行部隊たちは純粋に物質主義という彼らにとっての悪魔的存在と戦っているのです。
オウム真理教は、日本経済のバブルを背景に持っています。
そしてなぜ中国の主要都市や新疆で、数々のテロ事件を起こしているのか?イスラムだけでなくキリスト教系の新興宗教も無差別殺傷事件を起こしたようですが(ニュース記事)、多くがイスラム系の過激派です。これも、中国が物質主義の大国化をしているからに他なりません。
しかし、彼らを突き動かす憤りは、実は黙示録18章に書かれている、商業主義バビロンの崩壊にも現われています。「ともしびの光は、もうおまえのうちに輝くなくなる。花婿、花嫁の声も、もうおまえのうちに聞かれなくなる。なぜなら、おまえの商人たちは地上の力ある者どもで、すべての国々の民がおまえの魔術にだまされていたからだ。(23節)」
しかし私たちキリスト者は、同じ問題意識を持ちながらも、過激派とは真逆の動きをします。「しかし、いま聞いているあなたがたに、わたしはこう言います。あなたの敵を愛しなさい。あなたを憎む者に善を行ないなさい。(ルカ6:27)」主はその直前に、「富んでいるあなたがたは、哀れな者です。(24節)」と言われました。物質主義に溢れて生きている私たちですが、そのためにキリストの福音がバビロンの都で殉教の血を流す兄弟たちと同じように踏みにじられているのですが、しかし、これは霊の戦いであり、血肉に対するものではありません。そして、私たちは霊の戦いを、徹底的な愛と赦しの中で攻撃的に戦うのです。
彼らは武器を手にして、バグダッドを陥落させようとしていますが、私たちはキリストの愛と義の武具を身につけて陥落させようとしているのです。
イラク人キリスト者への執り成し
今回ISISによって乗っ取られた、モースルの町はアッシリヤ帝国の首都ニネベの古代遺跡を持つ町であり、古代からのアッシリヤ人キリスト教徒の多く住む町でした。しかし、ここ十年間、彼らは信仰のゆえに誘拐や脅迫、また死まで直面していました。モースルの町にいるクリスチャンは、大量に避難しました。
イラクにおけるクリスチャンの動きについては、2007年に書いた記事を参照してください。