想像力を働かせる

イスラエル政府は、今回の戦争でハマスとの蹴りをつけたいと思っており、戦いはさらに長引きそうです。一般の人々が抱いているこの戦争の見方は、「圧倒的な武力をもって攻めているイスラエル軍が、学校や病院を破壊し、無辜のガザ市民を殺傷している。」というものです。千人を超えた死者がいて、イスラエルの死傷者より圧倒的に多いことを見て、イスラエルの非道、あるいは仮に正当化できたとしても愚かな方法だというものでしょう。

ここでの問題は「想像力の欠如」であります。マスコミに映し出される映像や写真によって心象で判断している、何が起こっているかを深く考えていないという問題がありますが、最も大きい問題は「想像力の欠如」です。その中でも「現場の人たちの気持ち」をほんの少しも想像していません。本当に彼らのことを考えているのであれば、それが一番気になるはず。

日本と同じ民主主義の先進国

私は、イスラエルには四度行ったことがありますが、そこは、ある本の副題で「普通ではない国で普通に生きる人々」というものがありましたが、ぴったりです。こんなに普通ではない環境の中にある国ですが、人々の生活は先進国のそれとほとんど変わりません。つまり、日本人は彼らのことを共感するのは、それほど難しいことではないのです。

日常の生活で、ロケットが落ちてくるサイレンが鳴り響くその心理的ストレスは計り知れないものがある、と想像します。そして、イスラエル空軍がピンポイントで非常に正確な攻撃をしているのに対して、ハマスの打つロケットが正確性に欠けるため、むしろどこに落ちるか分からないという不安は大きいと、毎日新聞の記者がガザから報道していました。

こちらのブログ記事が、その気持ちを表しているでしょう。

続行

この記事を書いた人はイスラエル北部にお住まいで、レバノン戦争経験者ですが、だからなおのことその叫びは本物です。私は次の言葉が、ぐさっときました。「いつ終わりか分からないけれど、今なら耐えられる。でも、これがまた繰り返し、繰り返し、数年後にまた同じようにロケット砲の砲弾の雨に耐えろというのは無理です。イスラエルは、「これを最後にしよう」という気持ちでテロリストと戦っています。

私が思い出したのは、東日本大震災です。私たちはあの規模の災害を、たった一度しか経験していません。だから耐え忍べたところがあります。ここまで復興させたのに、あの規模の津波が再び押し寄せたらどうしますか?もちろん教訓が生かされて、死者は激減するでしょうが、同じように塩水が田畑を荒らし、水産業を再び破壊し、やり直しになるのです。この心理的ストレスは計り知れないものがありますが、イスラエル人はこれと似たようなところを通っていると想像しました。

一度だけでなく、何度も起これば、これをもうやめたいと願うはずです。

遠い人々を、一生懸命想像する

そして、私はパレスチナ人のことに、ずっと思いを馳せています。私は、イスラエル人よりも、彼らに触れることは少なく、その日常生活も直に触れたことはないからです。それでも、いろいろ今まで調べた結果、今のガザの状況は完全に分かったといえないのが感触であると前に話しました。そして今日、次の記事を読んで、現地のアラブ通の方も同じ感想なのだと知りました。「なぜハマスは 強硬なのか 自暴自棄なのか」今、ハマスが何を目標にしているか見えてこないとのことです。

そして過去のパレスチナ訪問経験と、自分の他国における生活を掛け合わせると、次の想像をしていたことを申し上げていました。

「ガザの市民はどうしようもないやるせなさの中にいると思います。現地のことを知る人や、内部通報者による人々の話を総合しますと、そこは少しでもイスラエル寄りのことを話したら、リンチにされる警察社会です。もちろん、イスラエルに対する怒りはあります。だからその部分を発散させて公の場では話しますが、ハマスに対する怒りは、家の中や、本当に頭に来た時に道端でも不満をぶちまける程度でしょう。そのような中にいると、「ひたすら黙っている」という習慣が付いていますし、しかし、そのような圧迫の中でも毎日の生活を楽しんでいこうという生活の術を身につけていると想像します。」

そして、下の調査結果がこの想像を事実として紹介しているのを見つけました。

Gaza Public Rejects Hamas, Wants Ceasefire
(ガザの世論は、ハマスを拒否、停戦を願っている)

これは、The Washington Instituteという中近東研究所でありますが、パレスチナにおける最近の世論調査をまとめたものです。7月15‐17日にまとめたとのこと。

– 70%は、ハマスがガザと西岸のどちらにおいてもイスラエルとの停戦を維持すべきと強く支持している。
– 73%は、パレスチナ人は占領に対する(非暴力の)民衆抵抗の提案を受け入れるべきと考える。

そしてハマスのガザにおける実効支配についての問題点を指摘。

– 71%が「犯罪」が重大な問題だと考えている。
- 3分の2が、政治の腐敗が問題としている。
– 78%が、正規の安全保障体制なしの組織のない民兵は、中程度の問題であると見ている。

ハマスの軍事部門と管理について不満を抱いている人々の殆どは、パレスチナ自治政府がガザを統治してほしいと願っている。88%がそう考えているとのこと!さらに、次の選挙において誰を大統領に選ぶかについては、アッバスもしくはファタハの他の指導者であり、ハマスの指導者は15%のみ。

そしてガザ市民の大部分がイスラエルで職を探したいと思っている。

– 40%の失業率まで下がっている。
– 82%が、パレスチナ人の生活の糧のためイスラエルに期待している。
– 56%が、イスラエルに高給の仕事があれば、そこで勤めたいと願っている。

したがって、ガザ市民は仕事を得るために、イスラエルと関係正常化を実際は願っていると言える。

【追記】次のビデオは、上のガザ市民の気持ちを表に出すことのできている貴重な報道です。それに、この戦争中もたくましく、笑顔をもって生きている彼らの姿も見ることができ、とても嬉しいです!

このように、自分の名が表に出ない調査の場合は、本音が出てきます。私は次の要素で、ガザの人々がそう考えていると想像していました。

– 貧しいから、日々の生活の必要が満たされることで精一杯であるはず。
– 彼らの経済は、イスラエルに依存していた。通貨もシェケル、水道や電気はイスラエルから供給されている。だからイスラエルで働くことに違和感はない。
– 封鎖の前は、パレスチナ人は出稼ぎでイスラエルに来ていた。
– もちろんイスラエルは嫌いだ。占領されていると思っている。
– しかし現実を受け入れて、その中で理想を求めなければどうにもならない。
– ハマスは嫌いだ。しかしそれを表現する選択肢はない。ハマスの支配は生活の一部になっている。うまく付き合わないといけない。

私は日本より貧しいところ、そして政治的自由のないところにいましたので、そこまでは想像できました。その国もマスコミは違った色を見せ、市井の市民の本音はもちろん報道しません。しかし、日本人はマスコミ情報だけを鵜呑みにしている姿を見ています。だからガザ市民も似たような感じではないか、と思ったのです。

ヨブの友人が、ヨブの苦しみの現実から目を背けて、「正しいこと」だけ言いました。それ自体は正論なのかもしれないけれども、その現実に合っていなかったのです。主は友人らに、「ヨブのように真実を語らなかった」と言われました。イスラエル人も、パレスチナ人もありのままを知って、想像力を働かせなければ、何も分かっていない正論だけふりざす、見当はずれの意見になってしまいます。

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「想像力を働かせる」への2件のフィードバック

  1. 以前働いていた会社で、パレスチナに輸出する、直ぐ軍用になる四輪駆動車の出荷にかかわる業務をしたことがありました。パレスチナ向は商社経由で見積りを出し、輸出していました。当時、少しは関心があっても全くといってよいほど無知のままで、深く知ろうとしませんでした。私たちの仕事は自分たちのビジネスの基準(注文要件に適合させたものを出荷し経済条件に合うか)で、云々するだけで、無知=罪でした。

  2. ご投稿ありがとうございます!たとえ軍用でも、それが安全ために用いられるのであれば、十分、平和に貢献していると私は思いますよ。西岸のパレスチナ自治区の警察は、頑張ってくれていますし。要は、それを利用する人々の意図が大事だと思います。

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