（前記事からの続き）
近現代イスラエルの聖書的位置について論じましたが、彼らを支持する聖書的根拠をこれからご紹介したいと思います。
思いを超える神の取り計らい
イスラエルの救いというのが、ローマ9‐11章の中で論じられているのを思い出してください。そこにあるのは、私たちの思いを超えたところにある神の主権と選び、その背後にある神の憐れみを取り扱っているのを思い出してください。「神がパロの心をかたくなにする」という難しい話題を取り扱っている箇所です。近現代のイスラエルは、神がご自分の計画を完成される、その前段階の狭間にいるため、その捉えどころのない姿に人々は悶々とします。
ヨブ記が、今のイスラエルを体現していると言ってよいでしょう。つまり、自分には全く気づかないところで、神の取り計らいが進行しており、そのためにヨブの友人三人は、彼が恐ろしい罪を犯したといって責めました。もちろんイスラエルが、ヨブのように正しいと言っているのではありません。前記事に書いたように、彼らは不信仰のままで、霊的に新生していません。ですから他の人間と同じように、間違いもします。しかし、彼らのしていることが、今、受けている非難に値すると言ったら大間違いです。次元の全く違う非難を彼らは受けています。
反イスラエルから、反ユダヤへ
イスラエルに向けられる非難の根拠を問いつめていけば、「あなたたちは、その土地から出ていかなければいけない。その国をあきらめなさい。」となっていきます。事実、アメリカでは政府の中でも有名だった熟練ジャーナリストが、そうした発言をして職を辞さなければならなくなりました。キリスト教関係者であっても、「あなたたちは要らないよ。」に類似した恐ろしい言葉が口から出てくるや知れません。
イスラエルに反対する声を挙げるなら、同時に反ユダヤ主義に強烈に反対する姿勢を見せなければ、事実、反ユダヤになります。黒人の公民権運動の指導者キング牧師は、「反イスラエルとは、反ユダヤのことだ。」と、反イスラエル主義を非難していました。この論理がヨーロッパで起こった反ユダヤ主義の歴史であり、今回のも、反ユダヤ運動がガザ戦争反対のデモ中でヨーロッパ中の街中で巻き起こり、キリスト教にも潜在的にそうした論理を依然として内包しているのです。
聖書に見るユダヤ人の自衛行為
エステル記において、どうやって最後でユダヤ人たちが虐殺をしているのを正当化できるのか？という質問をある方がしました。私は答えました。「自分たちを抹殺しようと具体的に企んでいた者たちを虐殺したのです。無辜の民衆を虐殺したのではないのです。」つまり自衛の論理です。しかし、自衛にしては度が過ぎるのでは？と感じられるかもしれませえん。そこで大事なのは、どこからの自衛だったか？ということです。「民族そのものの抹殺」からの自衛です。一人残らず殺すという、人間の考える領域を越えた悪意からの救いです。まさに悪魔的計画に対する自衛でした。
出エジプト記の時から、それが始まっていました。ヘブル人の男の子がナイル川に投げ込まれるという状況があったからこそ、エジプト軍をすべて紅海の中に沈めることを神は行われました。創世記12章3節にある、あなたを呪う者をわたしは呪う、ということです。ハマスは、イスラエル全滅、ユダヤ人抹殺を憲章の中で明確に掲げ、それを小さな子供の時から教育の中で教え、そして具体的に殺人、誘拐、そしてロケット発射等によって、手段さえあれば、それをフル活用して実行している連中です。
イスラエルが潜在的に「自分たちが殺される、民族として殺される」と恐れるのを、私たちは理解しなければいけません。ハマスはまだ力がありません。しかし、イランは別です。大国だし、核ミサイルを準備しています。
イスラエル人を安心させる福音派クリスチャン
このような彼らを理解し、理解しているこそ、その同情の中でイエスを彼らのメシヤとして伝えることができるます。イスラエル批判者の多くが、イスラエルを支持するアメリカ人クリスチャンを意識して批判しています。しかし何と批判されようが、ユダヤ人の中には「アメリカにいれば安全だ」という、潜在的な安心感があります。ユダヤ人にはバビロン捕囚以後の離散史があります。生存を脅かされながら生きてきて、時代ごとに「ここなら避難できる」という土地や国がありました。今はそれがアメリカだということです。そこで、ヨーロッパのキリスト教と、アメリカのクリスチャンを分けて考える心の余裕が、いまユダヤ人やイスラエルの中にはあります。その中で幾人かでも、主の再臨の前に、キリストによって救われる人々が起こされることを私たちは祈ることができます。
したがって、イスラエルを「神の約束の成就だから、イスラエルを支持する」という、批判者が言うような単純なものではない、ということをお話ししたいです。人や民族の生存が脅かされている状況に共にいるという支持であります。ヘブル人の助産婦たちのような支持です。ユダヤ人はその根底が揺るがされてきた歴史を現代に至るまでずっと持っており、ゆえに親イスラエルの立場を取るのです。