国連安保理、イスラエル非難決議を採択 米国棄権 ④

シルバートランペットから

Dear Secretary Kerry

こちらは、AJC(Global Jewish Advocacy)の代表、デービッド・ハリス氏による寄稿です。ケリー国務長官と個人的にも何度も会っているようであり、彼のスピーチが心からのものであることを同情している一方で、現実離れしていることを指摘しています。ケリー氏の指摘は、非軍事化された、民主的なパレスチナ国家ということであれば、可能なのです。けれども、無理な理由が主に二つあります。

①他の周辺アラブ諸国で起こったアラブの春の結末の、後追いをするのではないか?

パレスチナ代表のアッバス議長は、80歳代です。後継者は定めていません。既に西岸で権力闘争が起こっています。ガザ地区はハマスが掌握しましたが、これを機に西岸で力を持つことは十分にあり得ます。自治区が不安定になれば、イスラエルだけでなく、ヨルダンにも直接影響します(PLOがヨルダン国内の中に国を造ろうとして、フセイン国王が内戦を開始した「黒い九月」は有名)。

イスラエル人は大方、二国家案に賛成しています。けれども、同時に今の中東が大暴風が吹いており、相手側のパレスチナがイスラエル破滅を目標とする政体へとなるのではないか?という不安があります。平和を望むけれども、こうした深い懸念は十分に正当化できるものです。

②イスラエルの右傾化は、2000年以降から発展した衝突の蓄積の結果である。

イスラエルは、中道左派が中心の国でありました。けれども、2000年にバラク首相がガザ地区と西岸、東エルサレムのほとんどをパレスチナに引き渡す二国家案を出したら、第二次インティファーダ(自爆テロが開始)をアラファト議長が引き起こしました。イスラエルがレバノンから撤退したら、レバノン国家の中にヒスボラが占拠しました。そしてイスラエルがガザ地区から撤退したら、ハマスが自治政府を追放し、アッバス議長本人も、交渉の席に着かず、テロ行為を抑えるどころか、扇動をし、イスラエルを国際の舞台で非合法化してきました。

そして、将来をあきらめないというシモン・ペレスの言葉を持ち出して、歴史的転換は今も信じているとし、南アフリカのアパルトヘイト撤回、エジプト・ヨルダンとの平和条約、仏独の和解、ベルリンの壁の崩壊、南米の国々の民主化、ソ連邦からのユダヤ人帰還など、予想だにしなかった事がどんどん起こりました。

けれども、共産主義、ナチス、ジハードによって傷ついたこの民は、最善を願うと同時に、最悪も想定するのだ、ということです。だから、二国家における交渉の相手が、果たしてどれだけの本気度があるのか?今の時点では、あまりにも不確定すぎて、頼ることはできない、という意見です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です