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WSJ Japanの記事「露イラン関係亀裂 イスラエルのシリア攻撃で」
欧米リベラルの牙城に頼るハマス
ついに、エルサレムに米大使館が移転しました。大いに祝典が大使館内で行われている時に、外ではその移転に反対するデモが起こっていました。この移転に反対する人々がいても、おかしくなく、平和的手段であれば、それはむしろ健全に民主主義が働いていると言えるでしょう。
しかし、死亡者はガザとイスラエルの境界で起こっています。こちらは、まるで様相が違います。確実に、暴力的手段に訴えています。そして、まだマスコミによって、上のような平和的デモのように宣伝し、それでイスラエルに対する心象を悪くさせていくという手法を取っています。
そして日本のお茶の間では、この二つの違いを区別せずに垂れ流しで報道し、潜在的に反イスラエル感情を埋め込まれています。
欧州が言えない本音、「反ユダヤは言えないから反イスラエルにしとく」
欧州の多くの本音というのは、だいたい、こういうものです。「中東を不安定にさせる厄介なことをしないでくれ。そこが不安定になったら利潤得られないからな。アラブのやっていることは酷いけど、あいつらがイスラエルを嫌がっているから、イスラエル、お前はおとなしくしとけばいいんだよ。できれば、なかったほうが良かったもしれないが・・でも、それ言ったら、もろ反ユダヤ主義だからな、ナチスは我々にも厄介だった。だから、それは繰り返したくない。でもな、やっぱりユダヤ人、お前らがいろいろ動くから厄介なことが起こるんだよ、邪魔なんだよ!」というものでしょう。
だから、英国のチーフ・ラビが、そのことを見事に言い当てて、ずばっと、「今の反ユダヤ主義は、反イスラエルである」と言ったのです。(リンク)
米国トランプ政権の核合意離脱、欧州はもちろんのこと、オバマ前政権の大統領や国務長官が批判をし、日本の専門家たちも声を揃えて言っています。きれいな言葉ならべているけれども、要は、西側中心の上の本音にあるような世界秩序を壊されることに対する反発を、イスラエルに対して、またトランプ政権に対して吐き出しているに過ぎないからです。
専門家たちも取り上げないロシアの思惑
けれども、中東に関しては、そうした西側諸国の秩序では測り知ることのできない、剥き出しの覇権争いが起こってきたのです。私たち日本も、西側陣営にいますから、東方のロシアの動きというのは情報として伝わって来ません。だからロシアが何を考え、動いているのか肌で分かりません。
オスマン朝が崩壊し、その山分けを僅かにもらったロシア。それまでも、「ちょっといざこざを起こしてもらって、私にとばっちりが来ない程度に喧嘩してもらって、そこで影響力をちょっと付けるね。」という行動を取り続けました。六日戦争の一端は、ソ連KGBがシリアに偽情報を渡したから起こったと言われていますし、ヨム・キプール戦争はソ連が露骨に介入、米と一触即発になりました。じわじわと勢力を伸ばしたかったのです。しかし、米国が一国支配をソ連崩壊後続け、ところがイラク戦争で頓挫、国内から世界からの反発が起こり、ほころびが出ました。
オバマ前政権で、そのほころびが一気に加速しました。イラクから米軍を早期撤退をさせたので、アルカイダが変種、イスラム国となりました。「アラブの春」を、こともあろうにアラブの民主化につながるとして高評価し、そこにあらゆるイスラム過激派が出てきました。これまでの独裁・強権から混沌状態になりましたが、その雪崩がシリアに来ました。ロシアは、「これはやばい」と思ったのです。けれども、その時、見事にオバマ政権は、シリア内戦で不干渉を決めてしまったのです。そこでロシアが一気に干渉、シリア内戦の泥沼を、イランとトルコの手も借りて、とりあえず一時収束させたのです。この瞬間、一気に中東全域がロシアの勢力圏に入りました。
聖書でいうなら、カルケミシュの戦いで、イスラエルとその周辺地域が一挙に、エジプト勢力圏からバビロン勢力圏に移ったようなものでしょう。
イランは「シーア派終末思想」が問題
欧米リベラルは、基本的に宗教というのを忌み嫌っています。危険なもの、極端なもの、人々を抑圧するものだと思っています。だから、自分たちの中にある保守的キリスト教を忌み嫌い、外側にある過激なイスラム教は、見て見ないふりをします。その悪意があまりにも明らかでも、それは「無い」ということにしたいのです。
でも、イランは何度も何度も、平時から「イスラエルを抹殺する」「アメリカに死を」と言っています。シーア派版のメシアであるマーディが到来するには、世界に混乱が来る、だからその混乱を我々が引き起こすと考えています。そこで、地域覇権を目論み、その舞台が中東です。シリアのアサド政権は手中に収めていました。レバノンに、シーア派の過激組織ヒズボラを植えつけました。イラクにも、シーア派政党を植えつけました。(そしてスンニ派ですが、ハマスにも資金提供して、イスラエルへの暴力行為を支援しています。)
そして、欧米に対しては見事に、穏健・改革のイメージ作戦に成功しました。核合意離脱の賛成・反対で世間は賑わっていますが、問題はそこにない。イランの地域覇権の野望こそが問題なのです。簡単に言えば、「作り上げられた劇場で戦わせないでくれ、本物の戦いはこっちだよ」ということです。ネタニヤフはそれを訴えてきたし、トランプもそうだと同意したのです。欧米リベラルは、西側中心の秩序が壊れるのを最も恐れているのですが、中東ではもう崩れているのです。その本音の部分が現われただけです。
そこでシェア元記事「ロシアとイラン、ちょっとがっちんこ」
そこで、穏然と支配を拡げているロシアと、地域覇権を目論むイランが、ちょっと摩擦を起こした、というのがたった今、起こっています。アサド政権が安定化するという同一目標があったので、これまで一緒に動いているのですが、イランがシリアに軍事拠点を作って、イスラエルに打っちゃうんですからね。イスラエルは、ちょうど痴漢をしてくる男に、勇ましい女性がハンドバックでぼこぼこに叩く(中国からの動画で見たことがあります)ように、その軍事拠点、もう立ち直れないように思いっきりぼこぼこにしました。けれどもロシア、いつものようにずる賢くて、「イランとイスラエル、私に迷惑かけないぐらいにしてほしいけれども、シリアで対立してほしいな。」と思っています。
シェア元の記事にある、ロシアとイランの、シリアを巡る確執、どこが報道しているんでしょうね。WSJのように書いてくれている人たちもいますが、まあお茶の間には、シリア情勢といったら「普通は無視」、何か爆弾で人が死んだら、「ちょっと」ぐらいでしょう。でも、こっちの情報知っておかないと、「核合意離反で世界が・・」「エルサレム大使館移転で中東が不安定」とか騒いでも、結局、諸大国の思惑で作り上げた劇場で、踊らされて、ふりまわされるだけだ、と思います。
関連記事:「トランプ大統領の「エルサレムはイスラエルの首都」認知」「「プーチンの国家戦略 岐路に立つ「強国」ロシア」」「中東の超大国が米から露になった瞬間」「エゼキエルの見た幻(36-39章)」
一応、保存としてシェア元の記事をこちらにコピペします。
【モスクワ】シリア内でのロシアとイランの共闘体制に亀裂が生じている。イスラエルがシリア内のイラン軍施設に容赦のない攻撃を加えたことがその引き金で、ロシア・イラン関係は今、その限界が試される局面に入った。
イスラエルは先週、シリア領土内で過去最大の空爆を行った。これはベンヤミン・ネタニヤフ首相が9日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と共に、モスクワで年次軍事パレードに参加したその数時間後のタイミングだ。だが、ロシアはイスラエルの空爆に対して目立った反応を示しておらず、ネタニヤフ、プーチン両首脳は、双方にとって許容可能なところで手打ちした公算が大きい。こう指摘するのは、ロシア政府のアドバイザーを務めるフョードル・ルキヤノフ氏だ。
ロシアとイランが協力したことで、シリア情勢はバッシャール・アサド大統領に有利な方向へと傾いた。その結果、ロシアは再び世界の大国としての地位を取り戻し、イランは中東での影響力を拡大した。だが足元では、イスラエルとの敵対ムードが強まる中、ロシアとイランとの緊張増大が露呈している。
アサド氏がシリア国内の大半を再び掌握した今、ロシアとイランの利害は逆方向を向き始めた。イランがシリアを足がかりにイスラエルを脅かすとともに、レバノンやヨルダン、パレスチナ地区で自らの影響力拡大を目論んでいることに対し、ロシアは懸念を強めているとみられる。
イランに駐在した経験を持つ元ロシア外交官で、現在はサンクトペテルブルクにある欧州大学の教授、ニコライ・コザノフ氏はこう話す。
「内戦終結後のシリアがどうあるべきかを巡り、イランとロシアは著しく異なる考えを持っている。そのため、ロシアはシリアでのイランの影響力を削ぎたいはずだ」
シリアにおけるイランとロシアの共通目標は、アラブ諸国の独裁政権が次々と崩壊した「アラブの春」の二の舞を防ぎ、アサド政権を温存することだった。イランはロシアが軍事介入する以前から、密かにロシアに代表団を派遣し、陸上で展開するイラン軍のプレゼンスとロシア軍の空爆力を統合する戦略をまとめていた。イランはシリア領内に構える空軍基地少なくとも1カ所をロシアに開放し、空爆を支援していたという。
戦略国際問題研究所(CSIS)の中東プログラムで非常勤フェローを務めるディナ・エスファンディアリー氏は、「イランは、制裁下でも味方になってくれたロシアのようなパートナーを持つことに満足している」と指摘。「だがこれは実利的な関係であり、良い時も悪い時も共に切り抜けるような相手ではないと考えている」と話す。
ロシアはイスラエルの国境付近でイランが存在感を高めていることを問題視しており、イスラエルの要求に応じるため、イランに限られた影響力を駆使しようとしたもようだ。ロシア軍はイランに対し、政府軍、またはシリア南西部に見られるイランの代理勢力に対して、航空支援を提供しないと警告したという。
前出のコザノフ氏は、ロシア政府は、イスラエルとイランの間に非公式な外交経路を確立させようとさえ試みたと語る。ロシア政府は最近、イスラエルと深いつながりを持つロシア市民をイランに送り、イスラエルからのメッセージを伝達させたという。
ネタニヤフ氏もモスクワを何度も訪れるなど、プーチン氏との個人的な関係の構築に努めており、国境付近のイランの存在を脅威と見なすことを伝えたもようだ。
またイランとロシアは、戦利品を巡っても対立している。シリアの経済ニュースを配信するシリア・リポートによると、パルミラ近辺のリン酸塩の鉱山開発で、ロシアは最近、シリア政府を支援する権利を獲得した。これに先立つ数カ月前には、イランの企業がこの権利を得たとの感触を得ていたもようだが、最終的にはロシアへと渡ったとしている。
昨年には、イランが後ろ盾となっている兵士が、ロシアとイランが合意した標的を無視し、その兵士らが標的とする相手に対してロシアの空爆を求め、ロシア側を激怒させたという。
こうした中、シリアのアサド大統領は、ロシアとイランの分断につけ込み、揺さぶりをかけている。シリア危機問題にかかわった欧州の外交官はこう語る。「アサド政権は、イランへの依存度を強めるかもしれないとの素振りを見せ、ロシアとイランと争わせようと仕向けるのがうまい」
広範な戦略を欠くプーチン氏は、おなじみの戦略である様子見姿勢に徹している。ロシアの利益を損なわない、または中東での全面戦争を招かない程度に、イランとイスラエルは戦火を交えて欲しいというのが本音のようだ。
前出のロシア政府アドバイザー、ルキヤノフ氏は「プーチン氏にしてみれば、イスラエルとイランが一定の範囲内に収まっている限り、戦い続けても大丈夫ということだろう」と話す。
こちらの高原剛一郎さんの講演も、いいです。