ハマスの戦法:非対称戦争と宣伝戦

フェイスブックにおける投稿で、次のようなコメントを受けました。

「ハマスの攻撃に対抗することを大義にパレスチナ自治区に過剰攻撃をして多数の一般市民を傷つけているイスラエル軍」

ハマスはいわゆるイスラエル軍と「非対称戦争」をしています。そして「宣伝(プロパガンダ)戦争」をしています。この二つの分野において非常に長けているので、軍事的には圧倒的にイスラエル軍が優勢であるにもかかわらず、生き残れています。

まずは、4年前のガザ戦でやっていたことを、記事にしていました。どれだけ少ない物量でイスラエルに対峙し、心理的打撃を与えているかが良く分かります。いわゆるイスラエルのアキレス腱である「女子供を守る」という価値観を、逆手に取り、女子供を人間の盾にしています。

停戦中だから見えてくる報道

ハマスのイスラエル攻撃には歴史があり、「自爆テロ」→「イスラエルが封鎖」→「ロケット」→「アイアン・ドーム」→「イスラエル領へトンネル」→「トンネル発見技術を開発、空爆で破壊」→「凧あげに火薬」など、イスラエルが科学的に、軍事的に対処していくごとに、彼らの戦術も進化していっています。

その中でいつまでも効果的なのは「人間の盾」です。不思議なことに西側リベラルのマスコミは、パレスチナ自治区の西岸とガザ地区には、大量の取材陣を送り込みます。滑稽なのは実際のデモの人数よりも多かったりしますから。そして、ちょっとしたことを劇場にようにして報道します。これをハマスが利用しない手はないのです。今回もハマスは組織的に、粛々と戦っています。一昨日は、ロケット百発を花火のようにして打ってきました。これでフィナーレでしょう(であることを願います)。

多くの人がイスラエルの過剰防衛であるとしていますが、これが一般の国連や西側のリベラル勢の見立てです。それに対して、英軍の高官であった人が最前線の現場から直接、国連の会議場に入り、「過剰防衛どころか、著しく抑制している非常に優れた対応だった」と評価しています。

次に、テロリズムを専門的に分析する機関による結果です。今回のガザ行進(暴動)の評価を出していますが、イスラエル軍が死傷させた八割はハマスを始めとする工作員であることが判明しています。

Findings of the ITIC’s examination of the identity of Palestinians killed in the events of the “Great Return March” (March 30, 2018 – May 15, 2018)

非対称というのは、いわゆるゲリラ戦です。物量や技術では絶対に勝てないので、むしろその高度な軍事技術で網羅できない部分を狙って、戦います。ハマスはそこで、「都市型テロ」を行ないます。ガザ地区は密集地域が限られているので、人気のいないところに軍事拠点を置けばいいのに、けれども、わざと人口密集地域に置きます。学校の地下、病院の地下、国連の施設の隣とか。

そして宣伝戦については、アラファト時代から非常に長けていました。なにしろ、パレスチナ人の子供が機関銃を持っているイスラエル兵や戦車に向って投石している姿は、まるでダビデがゴリアテに投石するさながらの写真じゃないですか、強烈に人々の印象にこびりつきます。イスラエル側が、一生懸命、イスラエル兵士がパレスチナの子供にお菓子を上げている(本当にこれやっています、日常風景として)写真とか掲載しますが、どうしてもインパクト薄いんですね。

イスラエル軍や外務省もSNSを駆使して、逐一、パレスチナ過激派と戦争については、映像や写真を流しています。でも、やはりパレスチナ過激派は、臭いをかぎわけるように国際世論がどう動くか分かっています。宣伝戦では、パレスチナがいつも優勢です。

結論として、イスラエルはイスラエルの国として市民の安全と生命を守るための防衛をしているのですから、その手法に多少の評価は分かれても、基本的な主権国の権利を行使しています。私は、大方においてその対応を支持します。パレスチナについては、ハマスという組織を自由・民主主義の価値観で見るならば明らかにテロ組織であり、非難されるべきだと思います。

しかし、このままではパレスチナの人々は可哀想

しかし、それでパレスチナの現地の人々をないがしろにするのは、あまりにもひどすぎます。ガザ市民が封鎖されていることによって、行動の自由が制限され、電気供給もままならず、失業率があまりにも高いという事実は変わりません。

見るに、やはりパレスチナ・アラブの指導者があまりにもお粗末だ、ということです。

今は、周囲のアラブ諸国からもハマスは見放されています、ファタハもそうです。アラブ諸国はアラブの大義のためにパレスチナ解放のために戦ったのですが、もう状況が変わって相手にしてられないというのが、本音です。ガザについて騒いでいるのは、国連と西側リベラル勢だけになっているのですが、肝心のアラブ諸国が非難も何もだしていない、デモも起こっていないのはそれが理由です。

けれども、ハマスが今生き残れているのは、イランが資金提供、技術提供をしているからです。今回も公に、ハマスは、「イランよ、ありがとう!」と集会で叫んでいました。イスラエルとアメリカ、サウジアラビアや湾岸諸国がが、イランの核合意で怒っているのは、何も核だけでなく、「テロの拡散」を中東全域に行なっているからです。

けれども、パレスチナ人の中にも、欧米に留学して、非常に優れた官僚的手腕を持っている人々は少なくありません。なので西岸は特に、富豪の人が建てた都市区画があったり、なかなか経済発展しています。問題は政治指導者として、アッバス議長の後に出てこれるか?です。現実主義に立ち、勇気を出して政治的な譲歩も辞さない指導力が必要です。

エジプトもヨルダンも、いろいろな問題がありますが、けれどもイスラエルを認知し、平和条約を結び、安定と平和、経済的な安定も勝ち取っています。アラブ人でも優れた指導者が現れたら、できるのです。すぐれたパレスチナ人指導者が現れることを願い、祈ります。

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