ジョエル・ローゼンバーグ著の新作を、休暇中も含めて読んでいき、昨夜、完読しました。今回は、楽天ブックスの電子辞書が安かったので、スマホでいろんなところで読めたのが良かった。
私は、神がジョエルさんを、「小説より奇なり」を地で行くように用いておられることを知って、かれこれ20年近くフォローしています。そして、中東に対するキリスト者の見方、また祈りや支援をどのようにすべきかを、彼の著作や発言を基にしてきたと言っても過言ではありません。
本の紹介についてのインタビュー
ユダヤ系アメリカ人で、イスラエル国籍を持ち、福音派で親イスラエル
彼は非常に独特な出自を持っています。父方にロシア系ユダヤ人の先祖を持ち、ポグロムから免れてお祖父さんが米国に移住しました。正統派ユダヤ教の家系です。けれども、ジョエルさんのお父さんは悪い経験しかなく、宗教の実践をやめていました。ところがある時に、新約聖書を読み、イエスがユダヤ人のメシアであることを知り、信じます。異邦人の奥さんも信じます。その父母の間に生まれたのがジョエルさんです。彼も、ずっと後で信仰を持ちます。
「ノストラダムス」とも呼ばれる、現実となった小説シリーズ
彼が、政治系のフィクション小説を書くことにしました。彼は聖書信仰を持って、終末の預言も信じていますが、諜報機関の人たちからもよく取材して、こんなストーリーの原稿だったのです。「民間機をハイジャックして神風攻撃をし、米国が攻撃を受ける。大統領は対テロ戦を展開し、イラクのフセイン大統領に対して宣戦布告をする。」この原稿を書き終えそうになっていた時に、自宅の上空を、ペンタゴンに向かうハイジャックされたジェット機が迂回していたのです。
一躍有名になり、ノストラダムスと言われるようになりました。彼のその後の小説も、だいたい世界情勢の中でその通りになっていくのです。
その彼は、ヨシュア基金という働きに従事します。神は中東に目を留めておられる。ユダヤ人だけでなく隣人のアラブ人たちにも目を留めておられる、ということで、イスラエルを始めとして、パレスチナ人や周辺国のアラブ人に対して、主にキリスト者を通して支援を開始します。
終末的政治絵巻を書く小説家が、一躍、「中東平和使節」に
そして、彼の働きが突如として、「平和の人」の働きとなっていきます。これもまた現実のものとなりましたが、「イスラム国が出現」を描いた「第三の標的」(邦訳あり)があります。イスラム国がついにヨルダンを攻撃、アブドラ国王の宮廷を破壊するというシナリオです。
時に、アブドラ国王はオバマ政権下の米国に訪問します。なんと、オバマ大統領はアブドラ陛下に会うことすらしません。彼のイスラエルのみならず同盟国のアラブ諸国の軽視ぶりは、中東関係者では有名です。この姿勢に対する批判記事をジョエルさんが書いていました。たまたま、イギリス発アメリカ着の飛行機に乗ろうとしていた、 国王の側近が空港の書店で、「第三の標的」を見つけて、機内で完読しました。彼は、国王に「陛下、ぜひ読んでください。あなたが主役です。」と強く勧めます。王はちょうど、オバマ大統領に会えず二日間、時間を持て余していたので、本を完読しました。
ジョエルさんのご家族は、イスラエルに帰還していました。アメリカとイスラエルの二重国籍で、エルサレムに住んでいました。突如、国王の側近から連絡があり、ヨルダンのアンマンに招待されたのです。なんと、王宮で昼食をいただき、それから五日間、王と密着で時間を過ごしたのです。
考えても見てください。ハシミテ王朝は、ムハンマドの直系です。そのムスリムの国王が、イスラエル人で、アメリカ人。そしてユダヤ人で、親イスラエルの福音派信者をこのような形で歓迎してくださったのです。これだけでもすごい。でもこれは、ほんの始まりにすぎませんでした。
ジョエルさんは、アメリカの福音派は影響力が強いのに、イスラエルだけに関心があり、穏健イスラムのアラブ諸国、アメリカの同盟国には関心がほとんどない、知らされていない。福音派指導者の代表団を連れてきてもよろしいですか?と問いかけました。すると、ぜひ!というご返答でした。
Delegation of American Evangelicals Travels to Jordan to Thank King Abdullah II for Advancing Peace, Caring for Refugees, Fighting Radicalism & Protecting Christians
そしてしばらくして、今度は、エジプトのシシ大統領と少し挨拶する機会がありました。エジプトも、イスラム過激派であるムスリム同胞団と戦い、過激イスラムと対峙し、少数派のコプト教徒を保護する、これまでにない大胆な戦いを展開している、独特な大統領です。その挨拶の時に、なんとシシ大統領は、アメリカの福音派の代表団とぜひ会いたいとおっしゃったのです。
Sisi meets world Evangelical churches delegation in Cairo
ヨルダンもエジプトも、非公式の会合になるはずでした。そういわれていたのですが、彼ら自身が会見したことを公開し、それぞれの国のマスコミに大きな記事として取り扱われました。
そのことを知ったのが、アラブ首長国の首脳陣です。あちらから連絡があり、ジョエルさんは、自分の友人で、信頼のできる福音派の指導者のチームを作り、訪問し、皇太子MBZに謁見します。アラブ首長国連邦の成り立ちがすごいです。まだ貧しく、赤ん坊の死亡率が高かった時、医療宣教師である福音派信者の夫婦が、国王の赤ん坊も病弱だったので手当をしました。見事に回復しました。それで診療所開設を許したのです。その赤ん坊がなんと、皇太子ご本人MBZでした!
その時に、ジョエルさんは、大胆にもイスラエルとの平和を提案しました。するとなんと、もっと大胆に、皇太子は、「その用意が出来ている」とお答えになったのです。そう、アブラハム合意の二年前、まだその時はオフレコだったのですが、合意が結ばれた今、著書にて公表したのでした。
The secret, visionary decision that launched the Abraham Accords
そして次に、今度は、なっなんと、サウジアラビアの目に彼らが留まったのです。サウジアラビアと言えば、メッカを有する厳格なイスラム教の国。ある日本人のビズネスマンが言っていましたが、「アラブの北朝鮮」とさえ呼ばれていた、閉鎖された国です。また、かつては米同時多発テロを実行させたビン・ラディンを生んだ国です。
ところが、サウジアラビアの皇太子MBSなど若い層は、それらテロリストたちを心底、憎みました。イスラム過激主義に闘うサウジアラビアにしたいと願ったのです。石油のみの依存に対しての危機感もあり、サウジアラビアの神学的にも、国としても近代化への道に舵を切って行ったのです。
しかしMBSは、西欧社会ではかなり懐疑的に見られています。批判的です。けれども、直接本人に話したことがある人は、ほとんどいません。その直接会って、何時間も話を聞き出すことができたのが、ジョエルたちの代表団だったのです。
彼らの訪問が決まっていた日が近づいた時に、なんと、カショギ氏がトルコでサウジ当局によって無残に殺されるという事件が起こり、欧米諸国ではサウジアラビアに対する非難を開始しました。ジョエルたちは、行くべきかどうか悩みましたが、むしろこう言う時だからこそ用意されていたのでは?という、エステルにも似た使命感で、予定を変えずに行きました。そして、カショギ氏についてのことも含めて、率直な質問をMBS本人にしたのです。
アラブ首長国もサウジアラビアも、初めは非公式でということだったのですが、ヨルダン、エジプトと同じく、自分たちで新聞の第一面の記事に掲載させるなど、公表しました。
友人のペンスさんとポンペオさんが、トランプ大統領の側近に
そしてジョエルさんは、実はかなり前から、ペンスさんとポンペオさんの友人でした。まだ議員の時だったとき友人です。ところが、お二人が、一人は副大統領に、もう一人は国務長官にまで昇進します。ペンスさんに会うためにワシントンDCに行ったところが、突如、ホワイトハウスのトランプ大統領にお会いすることになりました。
後にバーレーンの国王側近にも声をかけられ、友情を深めているそうです。
本書の最後には、イスラエルとパレスチナの和平にも触れていて、リブリン元大統領へのインタビューも掲載されています。リブリンさんは、リクード党で政治的右派であり、ユダヤ人国家を強く信じている人ですが、何世代にもわたりエルサレムに住むユダヤ人家系の人で、父はアラブ人との共存を強く信じていて、アラブ語を習得していた、ご自身もアラブ語が流暢なのだそうです。リブリン前大統領は、アラブ人との架け橋のための働きに活発でした。
こんな感じで、ジョエルさんは、小説のような、いやそれ以上の、中東諸国の政治的指導者たちとの対話を深め、またその地域の教会指導者たちとの祈りを共にしているという、「平和のための使節団代表」として、神から用いられています。
そんじゃそこらの、専門家とか評論家とか言われている人たちの憶測よりも、直接、率直に本人たちに質問しているものが本書に掲載されています。中東政治の裏側てんこ盛りです!
彼はキリスト者として、ダニエルのように、上に立つ人々への敬意と祈りをもっとも大事にしている人です。なので、知恵があり、また意見は率直に言いますが、相手も彼を敬うという、模範的な人です。とっても尊敬しています。
彼についてのノンフィクションの著書の書評は、他にも何冊がありますが、その書評も書いたことがあります。
そして、ジョエルさんは、福音派向けの二つのニュースサイトを立ち上げています。
本書の印税による収益は、すべてこの二つのニュースサイトへの支援金となるそうです。いつもフォローしていますが、ほんと、又聞ではなく、直接独自取材によるものが、てんこ盛りで、かなり高質です。