福音宣教者としての「沈黙」

次の記事の続きです。「映画「沈黙」- 観るべきか、観ざるべきか?」「キリシタン名跡サイト「天上の青」」「『恐れ』を恐れよ

今週水曜日、映画館で「沈黙 -サイレンスー」を鑑賞しました。フェイスブックにて、長いレビューを二日に渡って書きましたので、こちらにまとめて掲載します。

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私は、海外宣教もしていたことのある、日本人の牧者であると同時に、宣教者としての思い入れの強い、端くれです。ロドリゴの心の動き、そしてキリシタンの村の人々の心の行き交いは、非常に心を打つものでした。あまりにも生々しいので、いろんな思いが一挙に、交差しました。(※以下から話す言葉は激しいものになっていますが、決して、遠藤周作やマーティン・スコセッシ監督に向けられたものではありません。むしろ、このような作品を作ってくれたことによって、キリスト者信仰の生々しい戦いと葛藤の実存を、上手に表してくれたことに、感謝しているほどです。)

「助けてあげよう」という思いから「何もできない自分」へ

ロドリゴとガルベが、自分たちの師と仰ぎ、絶大な尊敬と信頼を持っていたフェレイラらが棄教した、という知らせを聞いた時に、日本に潜入することを申し出ます。ここの会話には、既に「私たちが行って、助け出します。」というヒロイズムが入っています。 続きを読む 福音宣教者としての「沈黙」

「恐れ」を恐れよ!

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今晩、次の説教要約を見て、なんと言ったらいいか、言葉に言い尽くせない憤慨の思いが込み上がってきました。

ヨシュア記1-3章「恐れるな。わたしがあなたとともにあるから」

今話題の、小説・映画「沈黙」と、ヨシュアの信仰がいかに対照的であるかを述べているものです。全文をぜひ読まれることをお勧めしますが、最初の一部を下に引用させていただきます。

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日本におけるサタンの最大の働きは、人々の目を漠然とした「恐怖(terror)」に釘付けにし、主に信頼する一歩を踏み出させなくすることです。

最近、遠藤周作の「沈黙」が映画化され上映されていますが、「神は、忠実な信徒が死に直面しても、沈黙したまま」という恐怖感を広める結果にならないかと心配です。なお、主人公の神父ロドリゴは、日本人信者の命を守るために棄教せざるを得なくなりますが、それはかなり史実を反映しています。

古代教会以来、殉教者の血が流されるたびに、かえって福音が爆発的に広がったと言われますが、日本だけは例外です。1700年代初めの幕府の権力者、新井白石の記録では、20万人から30万人もが日本で殉教の死を遂げたとさえ言われています。残念ながら、それらが、「死の恐怖に勝利した」美談ではなく、日本の伝統に背いた「のろい」かのように見られるのは、世界では珍しいことかもしれません。

しかも、当時の迫害の先頭に立ったのは、大目付の井上政重を初めその多くは転びキリシタンだと言われます。彼らは信仰者の心理を熟知していました。これほど巧妙で残酷な迫害が行なわれた国はないのかもしれません。 続きを読む 「恐れ」を恐れよ!

ホロコーストと中絶

フェイスブックには、昨日と今日、二つの大きなイベントがタイムラインに流れています。1月27日は、「国際ホロコースト記念日」です。ホロコーストの犠牲者を記念する日です。もう一つは、ワシントンDCにおいて、胎児の生命尊重を訴える「マーチフォーライフ」が行なわれました。日本でも、カトリック関係者の方と、小さないのちを守る会の代表によって、この行進が行われています。

ホロコーストと中絶の合法化に共通することがあるんですね。それが「優性保護法」です。「優生学」に基づいています。 続きを読む ホロコーストと中絶

トランプ大統領とクロス王

フェイスブックからの引用:

マスコミがほとんど、ヒラリー女史が当選すると言っていた中で、トランプ氏の支持が実は高いことを伝え続けていた数少ない人の一人が、この方です。私は、冷静に眺める時に、このような見方になるのではないかと思います

トランプ大統領就任 
(注:
こちらに、日本語訳付きの就任演説を見られます。)

つまり、日本がアメリカにおんぶにだっこの時代は終わりつつある、ということです。自分でしっかりと、自国について考えないといけない時代になっている、ということです。国の指導者のために祈るキリスト者の働きは、ますます顕著に重要になっています。

そして彼女の論評に補足させていただくと、トランプ・チームの人選、就任式やその後の国家祈祷会において、これまでにない数の福音派の指導者が目立っているということです。これまで、国に対して見張り役として声を挙げていた人々が、最高司令官のそばに呼ばれている、という感触を持っています。 続きを読む トランプ大統領とクロス王

映画「沈黙」- 観るべきか、観ざるべきか?

遠藤周作原作「沈黙」を題材にした映画「沈黙 -サイレンス-」が開始されましたね。私個人は観たいのですが、教会の人たちには言及はしたものの、かなり抑制して紹介しました。クリスチャンの間でこれほど賛否両論が出ているものは珍しいです。それだけ、信仰や福音宣教における心の琴線に触れてしまっている題材だからだと思います。自分の書いたフェイスブックの記事を紹介します。(今のところ三つまで書いています。)

1)「欧米の植民地主義的キリスト教」の弊害?

沈黙 -サイレンス- 映画が語らない真実

間もなく映画上映される、話題の「沈黙」についての記事です。本映画について、かなりFBのタイムラインにいろいろな人のシェアが流れてきます。好意的な人、楽しみにしている人もいれば、かなり衝撃を受けている人、否定的な人もいます。否定的な評価をしている人の中で、多くの方がシェアしていたこの記事を紹介します。

私は、同感する部分と疑問点のどちらもがありました。

①遠藤周作の小説

筆者の書いている、遠藤周作氏についての紹介はその通りです。彼は母親がカトリック信者であったけれども、その中で「自分の気持ち」を小説として描いているということです。彼は文学者としては素晴らしいと思いますが、云わば、完全に回心できなかったキリスト教の家庭の二世、ということです。したがって、そこで描かれているキリスト教は、聖書の描いているキリスト教ではなく、そういった視点から書かれている、個人の悩みを言い表しているのだ、という点を抑える必要があると思います。 続きを読む 映画「沈黙」- 観るべきか、観ざるべきか?

オバマ大統領「雄弁な言葉を持つ、行動しない指導者」

以下の文章はシルバートランペットからです。オバマ氏の演説は、「心に響く言葉を持っている、しかし腹にまで落ちない、いやむしろ、腸が煮えくり返ることさえあった。」と言えるでしょうか。怒らせても、納得させてしまう指導者もいますが、オバマ大統領は気持ちよくさせて、怒らせてしまうという珍しい人だったのではないか、と思います。「ポスト真実」と呼ばれる時代のそれこそ象徴的指導者だったのではないか?と感じます。

しかし、トランプ次期大統領において、従来のアメリカを取り戻せるというのも、私は個人的には懐疑的です。時代が変わってしまったのではないか?と感じています。誰が大統領になろうとも、どうにもできない道なのではないだろうか?と感じるからです。けれども運命的にはなっていません、むしろ国を救うのは人ではなく、神であるのだという希望を強くします。そして、主は確実に、ご自分の救いの計画を完成に向けて強く動かしておられます。

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オバマ大統領が任期最後の演説をしました。(日本語訳の全文はこちらをクリック

彼の言葉は、これまでの演説の特徴と変わることはありませんでした。理想的、進歩的なことを志向する人々には、実に美しく、気持ちが高揚します。けれども、現実の生身の人間との接触による感覚とは大きな開きがあり、違和感を抱かせ、実際に大きな齟齬が起こって、不満と怒りがかえって溜まる、と言えるでしょう。 続きを読む オバマ大統領「雄弁な言葉を持つ、行動しない指導者」

中東の超大国が米から露になった瞬間

シルバートランペットから:

2016年の年末、最後から最後まで世界に目が離せません。

ついに、シリア内戦の停戦がまとまりました。そして、ロシアまたトルコ主導によってです。そしてシリアのアサド政権がそこに残ることで決まりました。

ロシア、シリア停戦合意を発表 和平協議入りも(CNN.co.jpから)

ここに、大きな世界勢力の転換を見ました。オバマ政権による米国の無能、現実を見ることのできない愚かさの中で、着実に、ロシアがトルコ、そして同じくシリア国内で戦っていたイランと共に、イスラエルの隣国シリアの中心大国となったのです。

ちょうど、それはかつて、ユダの王エホヤキムの時にエジプトの勢力支配から、カルケミシュの戦いによって、バビロンに勢力圏が移ったように、です。

イザヤ書17章にあるダマスカスの廃墟、そしてエゼキエル38章のゴグとマゴグ、すなわちロシアを中心とする、トルコやイランなどの同盟がイスラエルを一挙に攻め入るシナリオに、これまでになく接近する中東の絵図が出来上がりました。 続きを読む 中東の超大国が米から露になった瞬間

現場は「二国家」案ではない!

中東にキリスト者が良い関わりができるよう、願う働きが、福音的なキリスト者によって運営されているサイトがあり、フィロス・プロジェクト(Philos Project)と言います。ここには中東出身のキリスト者たちも寄稿や編集に関わり、そして何よりも福音的立場をしっかり貫いていることです。中東には、聖書信仰の中心でありイスラエルがあり、それを認め、信仰のユダヤ的ルーツを認めるところに立っています。かつて、「「パレスチナ人クリスチャン」の異論と希望の証し」で紹介した記事も、このサイトから引用しているものです。

そして改めて、国連における米・イスラエルの結末を、九つの項目に要約して、何が起こったのかを説明しているものが、秀逸です。これまで書いてきたものの他に、「現場にいるパレスチナ人の実感」というものを、明瞭に言い表しているところが特筆に値します。私が注目した文言は、太字や色を付けたいと思います。


9 Things You Need to Know about the U.S.-Israel Fallout at the United Nations

1.決議2334号は、イスラエルが即座に、完全に、占領しているパレスチナ領土から、全ての入植活動を停止させることを要求しています。それが、クリスマスとハヌカの前日に提出されました。国連安保理は、国際法で最も力のある組織であり、米国は反イスラエルの決議案には拒否権を行使していました。しかし今回は棄権であり、結果としてイスラエルの行動は平和への罪を犯していると世界から断じられたことになります。 続きを読む 現場は「二国家」案ではない!

オバマ氏のイスラエル軽蔑

(前記事「国連安保理、イスラエル非難決議を採択 米国棄権」①~⑤からの続き)

Obama Despises Israel Because He Despises the West

八年間のオバマ政権が終わりに近づき、その最後の偉業を米国の対イスラエル外交を根底からぶち壊すようなことをしました。次に、正統派ユダヤ教徒でコラムニストである、ベン・シャピロ氏による記事を紹介します。

「オバマ大統領が、なぜイスラエルを軽蔑しているのか?西洋を軽蔑しているから」という題名の記事です。お見事な指摘であり、私がずっと気になっていた内容でした。オバマ氏はまさに、イラク戦争以後の世界の考え方、特にキリスト界の潮流を象徴しているかのような人でした。彼の根っこの信念には、「宗教左派」というものがあります。いわゆる、リベラルなキリスト教です。

イスラエルに対して、実は今、アラブ諸国との関係は悪くなっていませんでした。
トランプ次期大統領が、あれだけの過激発言をしたにも関わらず、中東諸国はトランプ氏よりも、オバマ氏のほうに不満が溜まっていました。それは、彼は中東政策についていろいろ語り、異常なほど接近するけれども、実際は、全く不関与の態度を取り続けたからです。 続きを読む オバマ氏のイスラエル軽蔑

国連安保理、イスラエル非難決議を採択 米国棄権 ⑤

シルバートランペットから

PLOの指導者の一人が、今回の国連安保理の決議について、CNNのインタビューに答えています。パレスチナ政府の立場と言ってもよいです。先に私が先に話しました、「彼らの主張していることは、イスラエルの置き換え、借り物だ。」ということをよく表しています。 続きを読む 国連安保理、イスラエル非難決議を採択 米国棄権 ⑤