「イスラム2.0」(飯山陽 著)書評 - キリスト教との関連から

イスラム思想研究者、飯山陽さんによる以下の著書を読みました。

「イスラム2.0
 SNSが変えた1400年の宗教観」

 いつもツイッターNoteでフォローしている方々の一人です。以前、「イスラム教の論理」(拙ブログの書評)を読み、ここまで分かってしまっていいのか?という驚きを持って読みました。第二弾として、さらに突っ込んだ、今のイスラム教の世界を説明してくださっています。前の書と並んで、一般の日本人だけでなく、私のようなキリスト者にも必須図書に入れても良いほどです。いくつかの点で、日本のキリスト者に読んでほしい、という思いがあります。

教会の宣教と多様性を妨げる同質文化

 一つは、日本にある同質を求める文化や考え方では、イスラム教徒と共生はできないという点です。こう言われています。「必要なのは「シンパシー(同情)」ではなく、「エンパシー(異なる価値観を持つ他者の感情に対する理解)」です。」(9頁) 続きを読む 「イスラム2.0」(飯山陽 著)書評 - キリスト教との関連から

9/17開催 第11回「激動の世界情勢を聖書から読み解く」勉強会

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9/17開催 第11回「激動の世界情勢を聖書から読み解く」勉強会

9/17(木)18:00 YouTubeライブ配信

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上海ゲットーの歴史を塗り替える中国

(7月30日にフェイスブックに投稿)

上海でユダヤ人を救ったのは日本か?中国か?

日本がアジア各国に対して残虐な行為を起こったことは事実でもちろん反省すべきですが、そんな日本軍によってユダヤ人が生き延びることが出来たのも事実です。

 歴史認識はとても難しい問題ですね。国が違えば見方が変わるのは当たり前です。しかし、アジアに対して残虐なことをしたことを認め深い悔恨の思いを抱くことと、日本人や日本軍がすべて悪いのだとすることは全く別問題であり、私は後者に対して、強く警戒します。アメリカのキャンセル・カルチャーに見られるように、勧善懲悪的に罰することは、歴史を真摯に見ず、自分たちに生かしていないことの裏返しになり得るからです。 続きを読む 上海ゲットーの歴史を塗り替える中国

人種差別主義のルーツはダーウィン

(7月6日にフェイスブックで投稿)

日本人が生活を日常でする時に、「人種」についてあまり気にしないと思います。ほぼ同一の民族であるし、皮膚の色が違う人がいれば、「外人さん」で済ませてしまうからです。

アメリカに住んでいた時も、私は、その多民族の国のありかたを楽しんでいました。私は日本人ですが、他のアジア系の兄弟姉妹と交わると、どれほど共通点があるか分かりますし、多様な人々がそれぞれの文化を保ちながら、けれども、アメリカという国に忠誠を誓い、愛しています。

しかし、「人種(race)」という言葉を使うと、嘔吐したくなるというか、鳥肌が立つというか、単なる民族差別とは違う、おぞましいものを感じます。この頃、頻繁に、人種差別問題が語られますが、単なる民族差別とは種類を異にしています。 続きを読む 人種差別主義のルーツはダーウィン

キリスト教は、欧米のものではない

<キリスト教は、聖書的にも、世界的にも、欧米のものではない>
(7月18日にフェイスブックに投稿)

 キリスト教文化や文明と、実際のキリスト教の信仰とは、大きな開きがあります。日本では、どうしても「欧米のものを取り入れる」というものが、根底に人々の思いにあるので、それにともなう質問が大半です。なぜ、戦争をするのですか?とか、またプロテスタントとカトリックの違いは?とか。また、逆にアメリカの文化として受容するけれども、それ以上ではない場合が多いです。教会の英会話教室やゴスペル教室にはいくけれども、深入りはしないとか。

 けれども、聖書的には、その舞台は中東とその周辺です。「近東」とも言われますね。これは西欧を中心軸にした言い方ですけれども、あくまでも「東方」にあるとしています。文科省はいつしか、地理の教科書は「西アジア」に言い換えました。

 そして世界的には、戦後の趨勢として、圧倒的にアフリカ大陸です。また、アジア大陸も多数のキリスト者を有しています。お隣の国、韓国はキリスト者の多さは知られるようになっていますし、中国はアメリカのキリスト者よりも多くの信者がいるのではないか?とも言われるほどです。(最近の習近平体制での弾圧は、あまりにもキリスト者が多いことへの恐れから来ていると言われます。)迫害を受けながらも信者が爆発的に増えているイランなど、中東にも信仰を持つ人々が出て来ています。 続きを読む キリスト教は、欧米のものではない

コロナ流行中に広がる「世界の賛美」

 コロナ流行によって、互いに国々を行き来できなくなり、あたかも私たちが分断されたかのような痛く、辛い思いをしています。けれども、逆行するように、これまでなかったつながりも、できているかもしれません。

 昨日、イエス様が十字架に磔になっている時、その罪状書きが三つの言語で書かれていたことを指摘しました。

ヘブル語、ラテン語、ギリシア語に書かれていることがあります。これは、ローマのこの地域がいかに重層的になっているか、物語っています。まず、ユダヤ人の間ではヘブル語が使われていました。あるいは会話では、アラム語が使われていたと言われます。ユダヤ人の王として死なれたのですから、これは理解できますね。ラテン語は何でしょうか?ローマの公用言語です。公式には、ラテン語がローマの言語でした。しかし、一般の人々はローマ帝国においてギリシア語を使用していたのです。なぜ、ローマなのにギリシア語なのか?ローマ帝国の前は、長いことギリシア帝国が支配していました。その時に、ギリシアの文化や言語が深く浸透して、ローマに支配が移ってからも、人々はそのままギリシア語を使い続けたのです。

ここの意味しているところは、隅々まで、どの民族でも、どの言語でも、「ユダヤ人の王、ナザレ人イエス」が伝えられたということです。ヘブル語では、ユダヤ人の間で。ラテン語は、ローマ帝国の中で。そしてギリシア語は、その時代の全ての人々に対して、ということです。天において、教会がイエス様に向かって賛美しました。「黙5:9あなたは屠られて、すべての部族、言語、民族、国民の中から、あなたの血によって人々を神のために贖い」
ヨハネ19章後半「完了した御業」から)

 ほぼ単一民族、単一言語(注:厳密には少数民族がいます、北海道のアイヌと沖縄の琉球です)で長い歴史を持つ日本にいると、主がどうして、「すべての部族、言語、民族、国民」と強調されているか分からないかもしれません。けれども、天に教会が引き上げられたら、このような姿になっており、神の国でもこのような姿になっています。 続きを読む コロナ流行中に広がる「世界の賛美」

政治運動ではなく、切実な黒人の訴えに耳を傾けよう

(6月15日にフェイスブックに投稿)

 ずっとアメリカでの黒人差別抗議運動を見て、タイムラインでもそれに関する投稿をしていましたが、実は英文で多く行っていました。特に、カルバリーチャペルの黒人の牧師で、トニー・クラーク(Tony Clark)さんへのインタビューで、何が問題なのかが分かってきました。

 それを一言でいうなら、「命の危険も感じる経験、トラウマ」と言ってもいいと思います。あるいは犯罪人のように見られる目と言ってもいいです。警察に止められたら、「なんか、免許見せないといけないのかな?」というものでは、ありません。警官が、近くで小競り合いなどの事件が起こっているという報告を受けて、疑わしき人(皮膚の色でプロファイリングしているようです)を見つけ、銃を所持していることも想定して、ほとんど「従わなかったら、撃つぞ」的な拘束をしてきます。

 確かに「差別なんかない」とまで言い切る黒人の人たちも少しいるけれども、それは、社会制度的に、黒人を例えば雇用で差別するとか、そういったことは全くないという意味で使っています。事実、ないです。 続きを読む 政治運動ではなく、切実な黒人の訴えに耳を傾けよう

感染症対策「森を見る」思考を

 今も現在進行中の世界中でのコロナ対策ですが、ずっと世界で不思議がられているのは、欧米とアジアまたアフリカ諸国での圧倒的な、感染者・死亡者の割合の違いです。BCGのおかげなのか、日本では衛生意識が高いのか、とか、いろいろ言われていますが、私自身はキリスト者なので、その信仰をもって眺めていた面があり、感染症専門家の言葉には、当然、傾聴しなければいけないと思っていました。

 以下の記事が、まさに、自分の感じていたことが、日本人の感染症専門家の見立てと合致していたので、驚いている次第です。

『感染症対策「森を見る」思考を ― 何が日本と欧米を分けたのか ―』巻頭インタビュー 押谷仁『感染症対策「森を見る」思考を ― 何が日本と欧米を分けたのか ―』巻頭インタビュー 押谷仁
(雑誌「外交Vol.61 May/Jun.2020)

 ぜひ本文全体を読んでいただきたいのですが、題名にもなっている「森を見る」とはどういうものか?欧米諸国の場合は、感染者周辺の接触者を徹底的に検査して、新たな感染者を見つけ出すことで、ウイルスを一つ一つ「叩く」ことに力を入れてきました。そのやり方と日本を比較するので、欧米だけでなく日本国内からも、日本の対策に甘さを厳しく批判する人たちが多かったです。欧米在住、また欧米と関わりのある日本人はその傾向が強く、在日の欧米人にも、とてつもない不安を抱いている人たちが多かったように思われます。

 しかし傾向として、アジアまたアフリカの国々が総じて感染者・死亡者数共に少ないです。一見、まとまりのない、不備の多そうな印象のあるこれらの国々で、むしろ感染拡大の抑制に比較的、成果を上げています。押谷教授は、「私は、これまで世界をリードしてきた欧米流の社会のあり方、そして世界のあり方が、大きく問われているような気がしています。」と話しています。そしてこう論じています。 続きを読む 感染症対策「森を見る」思考を

キリスト以外のアイデンティティー

ヘブル文化を知らないと、聖書を理解できない?

 「ヘブル的解釈」を軸に教会の中で運動をしている人々がいます。その運動体の中にいる人々全員がそうだということではなく、一定の距離を置いて、聖書理解の助けとして活用している方々が多くいます。その一方で、深く関わっていて人々の間には、数多くの問題を教会に起こしています。一言でいうと、「分派」です。

 私の友人の牧師が、以下のように理解しています。

日本の多くの教会が聖書のいうイスラエルを単にクリスチャンと置き換えた『置換神学』となってしまい、時間軸を忘れて、いつしか聖書の教えが道徳や理念のように受け取られる間違いを打破しようとして、既存の教会に通う信徒たちに聖書が言うイスラエルを教えた。

当然彼らが毎週彼らの所属する教会で聞く聖書のメッセージとは異なる。日本のクリスチャンを、日本の教会を内側から変えないと本当の福音宣教はないという理念で、既存の『置換神学』打破のために「ヘブル的聖書解釈」という視点を強調し、今度その「ヘブル的聖書解釈」がアイデンティティになった。

① 既存の教会内に『こっちがホントウだ』という分派を作った。
② 知識を得たクリスチャンが勘違いした。1コリント8:1
③ 既存の教会内に分派ができることを正当化するために、地域教会ではなく「普遍教会」こそが本来の教会だと言って地域教会軽視が生まれた。
https://twitter.com/Santou/status/1263304675551399947

 「分派」は、肉の行いであり(ガラテヤ5:20)、除名しなければいけない罪として数えられています(テトス3:10)。パウロは、分裂をもたらす者に警戒しなさい、遠ざかりなさいと教えました(ローマ16:17)。 続きを読む キリスト以外のアイデンティティー

「中国モデル2.0」

 2年半前の記事ですが、非常に的確です、おそらくコロナ後の世界はこうなるのでは?と思えるものです。

視点:「中国モデル2.0」の衝撃、日本企業も進退判断を=呉軍華氏

 「中国モデル2.0」とは何か?それを知るためには、「中国モデル1.0」を知る必要があります。

この間、旧ソ連の崩壊や冷戦の終結などの大事件があった。中国共産党がソ連共産党の轍を踏まずに済んだのは、基本的には党の政治エリートと、資産家や経営者などの経済エリート、そしてインテリ層の間で、経済成長至上主義に利害の一致をみる同盟関係が成立していたからだ。この同盟の下では、一党独裁政治に楯突かない限り金儲けし放題で、実質的に中国社会の多元化は大きく進んだ。

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