今、アメリカで全米歴代二位の興行成績を達成したという話題の映画です。マイケル・ムーアの「華氏911」には及ばないそうですが、政治ドキュメンタリー映画としては、第二位に食い込んでると言います。日本語の記事を探したら、次の記事が一番詳しかったです。
私は先日「もはや保守派でも、リベラル派でもない」の記事を書き、信仰的立場から今の米国保守派を批判しました。オバマ大統領については少し言及するに留めました。以前、米国リベラル派の由来についての記事を書きましたが、オバマ自身については正直なところ沢山書けませんでした。保守派からは反キリストではないかという声が有る程でしたし、彼の出生についての陰謀論が出回っていたので、私は興味が失せていました。一方、リベラル派はあの熱狂振りが理解不能でした。日本人でさえCHANGEという言葉に振り動かされていたほです。
でも、彼自身の人物像は確かな情報が出ていなかったと思います。そこで副題が、”LOVE HIM, HATE HIM, YOU DON’T KNOW HIM”というもので、実に端的に言い表していると思いました。訳せば、「オバマを愛しているにしても、憎んでいるにしても、彼のことは知らないね。」ということでしょう。どちら側も、彼を突き動かしている思想や情熱を知りません。
私個人の印象としては、前から「暗さ」を感じていました。彼の会見映像を見るたびに思います。アメリカン・ドリームとはほど遠い、というか、何か異質なものを感じます。(妻は十年以上米国に滞在し、その多くをリベラル色の強い東海岸で過ごしたけれども、私だけでなく彼女も「彼は、私の知っているアメリカと違う!」と言っています。)歴代の民主党大統領とも何かが違います。とらえどころのない謎を秘めた人です。保守派の人がこれまで民主党大統領を批判したとて、批判できるのは何か、どこかで一致できる何かがありました。けれども、それがないので空振りをしている感じです。以上が私の印象です。
そこでこの映画ですが、これはインド系米国人の政治学者ディネシュ・デスーザ氏による著書The Roots of Obama’s Rage(オバマの怒りのルーツ)を基にしています。中身は大体、次の記事二つを読めば分かるみたいです。
Forbesの記事:“How Obama Thinks”(オバマの考え方)
Washington Postの記事:“Why Barack Obama is an anti-colonialist”(バラク・オバマがなぜ反植民地主義者なのか?)
最初の産経新聞の紹介記事にまとめがありますが、「デスーザ氏は「オバマ氏の真のイデオロギー的理念は、米国がアフリカなどの開発途上国から搾取した植民地主義の結果の是正であり、そのために米国の力や富を相対的に減らすことを意図している」という結論を下す。」とのことです。私はこれで「なるほど!」と思いました。
彼のルーツは、彼のケニア人の反植民主義者の父だそうです。大していっしょに過ごしたのではないけれども、父の情熱と思想がしっかりと受け継がれていることが、彼が34歳の時に書き記した、「マイ・ドリーム―バラク・オバマ自伝」に散らばっているそうです。デスーザ氏はあるスピーチの中で次のような内容を話していました。「アメリカ人は、多様性のある多文化のアメリカの夢をオバマに投影させているが、オバマ自身の歴史を見落としている。父が反植民地主義であり、その考えをアメリカの地に適用させようとしている。普通の民主党員は、『所得をアメリカの中で再配分しようとしている』。けれどもオバマ氏は、『アメリカを世界の中に再編成しようとしている』」
これで、すとんと来ました。これが民主党や穏健リベラル派との違いです。ただ、デスーザ氏の主張がどこまで正しいのかどうか私には推し量ることはできません。特にオバマ氏による大統領としての政策に、どこまでその思想と情熱が反映できているか、つまり「したくてもできない」ものも多いのではないか、と思うからです。けれども私が前々から感じていた深い懸念と合致していました。つまり「アメリカをもうアメリカででなくしてしまい、他の世界の国々と同類にしていこうとする強い力が働いている。」と、個人的には強く感じていたからです。
最後に、私は多くの日本の人、クリスチャンを含む日本の人に言いたい。アメリカの独自性をイラク戦争後「一国主義」と言ってあれだけ批判していましたが、「本当にアメリカ無き後の世界を私たちが望んでいるのか?」ということです。アメリカが強大な国で無くなりようがないから、という甘えがあって批判していたのではないでしょうか?ちょうど、自衛隊違憲、日米安保否定の路線を立てて置きながら、一度、与党になったら一気に転回したかつての社会党のように。でも、現実にそうしていこうと思っている大統領がお望みどおり就いている、ということです。そして、あと4年続けるかもしれない、ということです。
今、現実にアメリカがアメリカでなくなっていく時代に入っていこうとしています。ジョエル・ローゼンバーグ氏が言うように、Implode(内部破裂)してしまう時期が近づいています。
最後の最後に・・・、本映画の原作者ディネシュ・デスーザ氏は福音派のクリスチャンで、キリスト教系のキングズ大学の学長でもあるそうです。キリスト教弁証学者としても有名ですが、どこかで聞いたことのある人だな?とは思っていました。また、彼はアジア系の米国移民なので、なぜ彼が保守的になったのか少し共感できます。アメリカにしかない独自性を外部にいたからこそ知ることができるので、その建国思想に純粋に帰依しやすい面があります。有色系移民一世のほうが、従来の白人よりも保守的になりやすい面が実はあります。下の記事を書いていますね。これもまたアメリカの魅力を知った時を思い出し、共感できます。(私も「アメリカに感謝している訳」なんていう記事を以前書きました。)
【後記】
カルバリーチャペルのラジオ番組KWVEで、チャック・スミス牧師がディネシュ・デスーザさんにインタビューしました!番組の録音も聞くことができます。(写真 ・ 録音)彼自身、カルバリーチャペルに通っているそうです。