クリスチャンとイスラエル

クリスチャンと中東問題 2000/10/24
シンドラーズリストを見て 2000/10/25
ユダヤ教とキリスト教とイスラム教 2000/10/26
クリスチャンにとってイスラエルとは 2000/10/26
わたしの証人 2000/10/31
今回の紛争のきっかけは? 2000/11/07
現在までの経過 2002/08/27
あなたの持っているメガネは何? 2003/06/02
現代イスラエルと聖書預言 2003/07/30


クリスチャンと中東問題 2000/10/24

キリスト教には、生々しい流血の歴史を持っています。ユダヤ人への迫害、虐殺はその一つです。カトリック教会にも、またプロテスタント教会にもその歴史があるため、現在の私たちクリスチャンも、現在生きているユダヤ人、また現代のイスラエル国家に対して、無関心あるいは敵意さえも抱く傾向を持っています。

よく、「歴史は繰り返す」と言われます。聖書において、例えば、アンティオコス・エピファネスが終わりの時の「荒らす憎むべき者」の予型であったように、過去に起こったことが、将来にも似たような様相で起こることはよくあることです。現代の日本の政治が、戦前の日本の政治と酷似しているように、ユダヤ人がホロコーストの中に入っていったときの似たような要因を、今日私たちの世界にも見ることができます。

確か、ミクロネシア諸島でしたでしょうか、そこの首相あるいは大統領は、イスラエルに訪問したとき、イスラエル国家とその理念を支持しました。その理由は、その国の90パーセントがクリスチャンであり、カナン人の土地は神がユダヤ人に与えられたものであるという神のことばを信じているからです。日本において、またアメリカや他の国でもそうですが、そのような見方をクリスチャンがしているのは一握りにしかすぎません。ですから、今世紀の中東紛争について、クリスチャンとしてどのように受けとめて行けばよいのか分からず、とまどってしまう人たちが多く出てくるのです。

あの有名なキング牧師は、反シオニスト運動をしている黒人に対して、それは反ユダヤ主義であると言って、手紙を出したことがあります。黒人がその生存権を神から賦与され、アフリカ諸国がその主権が認められているように、ユダヤ人にも生存権があり、また祖国に戻る権利が神から与えられていると書きました。ハーベストタイムの中で中川師は、渡り鳥が決まったところに飛んでいき、人間が神を求めるように、ユダヤ人はシオンの地への思慕が神によって埋め込まれている、と言っていましたが、それは聖書的であり、正しいことです。

ユダヤ人が今世紀に入って、大量移住したとき、イスラエルの土地は荒地と沼地でした。アラブ人の地主から、何も役に立たないような土地を買い取って、そこを開墾し、畑ができ、町々が出来ました。このとてつもない影響力が一部のアラブ人にとって脅威となり、ユダヤ人に対する敵意と暴動が始まったことが、中東紛争の発端です。ユダヤ人はアラブ人と共存することを望んでいます。またアラブ人の多くも、ユダヤ人と共存することを望み、喜んでいます。現在でもそうです。しかし、その一部の過激イスラム教による扇動と暴動によって、多くの共存を望んでいる一般のユダヤ人とアラブ人が苦難を強いられるようになったのです。そしてアラブ人自身もしだいに、この過激イスラム教徒たちが率いる組織に影響されて、ユダヤ人に敵意を抱くようになっている、というのが事実です。

ユダヤ人は自分たちを守るために軍を形成しはじめ、そしてイスラエル国防軍(IDF)を創設しました。自分たちがまさに全滅されようとしている、という危機を抱き、彼らは強兵政策を取りました。周辺アラブ諸国による一斉攻撃によって、中東戦争は始まりました。アラブ諸国が圧倒的に軍事力が勝っていたのに、イスラエルは勝ちました。その後の中東戦争でも、アラブ諸国が戦争を始め、イスラエルが防衛をし、戦争に勝ち、その結果、領土を広げるという歴史が繰り返されました。そして、アラブ諸国は、戦争を勃発させるという戦術をやめ、プロパガンダによって国際世論に訴えて、その圧力でイスラエルの土地を奪っていくという方法を取り始めました。ですから、私たちが日々のマスコミで聞く情報は、現地在住の外国人にとっては、半分が偽りとの所感が今や一般的になっているほどです。そのため、私たちの間に、「ユダヤ人が、聖地獲得のために、パレスチナの国を力ずくで奪った。」という、根も葉もない主張が、常識としてまかり通っているほどになっているのです。

ユダヤ人も人間ですから、もちろん間違いは犯します。止む事のないパレスチナ人の投石や銃撃に対して、しびれを切らして発砲してしまうという事件も、たまに起こります。また、強引な軍事的行動を発動してしまうときもあります。しかし、彼らが行なっていないことを行なっていると言い、また行なっている良い事が何も知らされていないという今、公正な見方を意識して身に付けることが、私たちクリスチャンの責務であると思われます。ナチスが台頭してユダヤ人大虐殺をしたときに、その事実を無視し、迫害を支持さえしたキリスト教会に倣わないためにも。


シンドラーズリストを見て 2000/10/25

スピルバーグが監督の、あの「シンドラーズ・リスト」をたしか4年ほど前に見ました。その前から、ホロコーストの問題に興味を持っていたのですが、ここで、ユダヤ人がどのような人生観、また民族意識を持っているのかを垣間見ることができました。

「シンドラーズ・リスト」とは、ナチス党員であったシンドラーが、初めは貪欲からユダヤ人を自分の工場の労働力にしようとしていましたが、ナチスが最終計画(Ultimate Solution)を実行し始めたとき、ユダヤ人を救出するために、彼らを雇っていった話しです。アウシュツウィッツなどの強制収容所に送り込まれそうになっているユダヤ人を、一人でも多く急いで、自分の工場の労働者のリストの中に加えて行き、そして仲間のナチス党員に賄賂を与えて、そのユダヤ人を買い取って自分の工場に連れて行きました。

私はそのころから、日本が朝鮮に対して行なった迫害についても、関心を持っていました。韓国のクリスチャンたちが、信仰の戦いを貫き、今もその殉教のスピリットを受け継いでいるのを知り、感銘を受けています。また同時に、日本人に対する憎しみを、クリスチャンとして心の中で戦いながら、赦すようにしていく、ということも知りました。

けれども、シンドラーズリストに登場するユダヤ人は、それとは異なりました。イザヤ書53章は、メシヤであるイエスさまの預言であることはよく知っていましたが、「ほふり場に引かれて行く小羊のように、彼は口を開かない。」という言葉のようでありました。自分に悪を企てた者に対して、憎しみを抱くようなレベルを超えて、自分たちが抹殺される、ユダヤ民族が全滅させられてしまう、という危機感を抱いていることが理解できました。

ユダヤ人迫害と虐殺は、キリスト教会だけによって行なわれたのではなく、古代ローマ、イスラム教、共産主義、啓蒙思想、国粋主義、ナチス、そして現代のアラブ諸国など、歴史を通じて、絶えず、彼らがどこに行っても、起こっていました(レビ記26:36−37参照)。自分の存在そのものを否定している人々に囲まれて彼らは生きてきたのです。したがって、彼らの救いとは、これら敵からの救いであることを知りました。ある有名な聖書教師が、イスラエルの地でこう言いました。彼らのすべての行動は、「とどのつまり、”生き残り”である。」と。

彼らは今も、イスラエル全滅、ユダヤ人撲滅を図る敵に囲まれて住んでいます。アラファトを含めるPLOの指導者みながそのように唱え、パレスチナの学校の教科書には、地図にイスラエルは存在せず、文字通り「ユダヤ人を滅ぼせ」と書かれており、モスクの礼拝ではユダヤ人に対するジハードを説教しています。私たち日本人が、地下鉄サリン事件を経験して今もってその心理的ダメージを受けているのですが、彼らは、そのようなテロ事件を年に何回も経験しています。そして今は、毎日経験しているのです。イスラエルの至るところで見かける、裸身の機関銃をぶらさげて歩く20歳前後の男女の姿は、威張り散らす強圧的な兵士のそれではなく、命がけで市民と住民を守っている姿なのです。


ユダヤ教とキリスト教とイスラム教 2000/10/26

みなさんもご存知のように、世界の三大宗教としてユダヤ教、キリスト教、イスラム教とがあります。そして、この三大宗教が、中東問題の中でどのように関わっているかをご説明したいと思います。

現代ユダヤ教の母体は、エズラ記とネヘミヤ記から見ることができます。長年、モーセの律法を忘れていたために、彼らは祖国を失い、バビロンに捕え移されたことを知りました。そこで「書記」という務めを作りました。モーセの律法を学び、それを解釈して、ユダヤ人の生活に当てはめる作業をした人々です。(彼らは、新約聖書では「律法学者」と訳されています。)初めの彼らの試みは正しいものでしたが、二世代、三世代と受け継がれるにつれて、律法の本来の意図である、神と自分たちとのいのちの関係を保つことを求めるよりも、外側の規定を守る、一種の自己実現のような道具になってしまいました。そこでイエスさまは、パリサイ派と律法学者に対して、外側の行ないではなく、内側の心の態度が大事であることを説かれました。またパウロは、律法の行ないによらず、信仰によって義と認められる真理を、律法と預言書から論じました。

イスラエルのメシヤである方を、その時代のユダヤ人は拒みました。それゆえ、イエスさまが予告された、エルサレムの荒廃という神のさばきが下りました。福音はユダヤ人だけではなく異邦人にも宣べ伝えられるようになり、イエスさまは、全世界の主としてあがめられるようになりました。

ところが、教会は、受けるに値しないこの神の祝福を、自分たちの功徳によって得られるようなものであるかのように考え始めました。神の一方的なあわれみによって、イスラエルへの神の祝福にあずかることができるようにされた(エペソ2:11-13)、という立場から、自分たちこそが世界の光であり、自分たちが神のイスラエルであるという考えに移り始めました(ローマ11:18-20)。イスラエルと教会を置き換えてしまったのです。そのため、ユダヤ人は見捨てられた、呪われた民族であり、また、イエスを十字架につけて殺した民族であるとの考えを持ちました。そのために、数々の著名な教会指導者たちは、そのすばらしい霊性にもかかわらず、ユダヤ人に対して激しい憎しみを露にしたのです。

そして、6世紀のときに、ムハンマド(モハメッド)によってイスラム教がスタートしました。イスラム教は、ムハンマドが最後の啓示を受けた預言者であるとの信仰があります。アブラハムから始まり、モーセなどの偉大な預言者の一人にイエスさまが並べられます。しかし、啓示とは漸進的なものですから最後の啓示で完成されるのであり、彼らはコーランを土台とした信仰を築くのです。そこでイスラム教は、ユダヤ教もキリスト教も、本質はイスラム教であるとの考えを持ちました。アブラハムを初め、モーセもイエスご自身もイスラム教徒であり、イスラム教によってすべてが完成すると信じているのです。したがって、イスラエルにみなさんが行かれると、キリスト教のゆかりの地には、必ずモスクが建てられていることに気づくでしょう。ユダヤ教のゆかりの地にも、モスクが建てられています。コーランには、エルサレムという言葉は一つも出てこないし、神殿の丘にムハンマドがやって来たとの記述も何一つありません。けれども、ソロモンが神殿を建てたあの土地が、イスラム教が征服することによって完成することを示すために、あのように岩のドームを建てたのです。

ユダヤ人への迫害は、主にヨーロッパにおいてキリスト教会によって行なわれました。上で説明したように、ユダヤ人がキリストを殺し、神に見捨てられた民であるという認識に基づいて行なったからです。しかし、イスラム教徒は、ユダヤ人は初めに啓示をもたらした民であり、自分たちの下にいる民、つまり二流市民であると考えていました。したがって、ユダヤ人が彼らに従属しているかぎり、比較的迫害を受けずに済んだ、というところがあります。

しかし、このコーランの教えを根本から覆す出来事が起こりました。それがイスラエル国家の設立です。アラブの土地に、ユダヤ人が主権を持つ国が出来上がってしまったのです。そこで彼らは、二つの選択が迫られました。コーランが間違っているとするか、あるいは、イスラエルを全滅するかのどちらかです。イスラエルがどんなに小さな領土であろうとも、自分たちの支配圏にユダヤ人が主権を持っているかぎり、なくしてしまわなければいけないという考えを持つのです。


クリスチャンにとってイスラエルとは 2000/10/26

私が今、イスラエルのことに首を突っ込んでいるので、クリスチャンのみなさんに誤解がないように付記させていただきます。

1.私たちの礼拝の対象ではない。
イスラエルに行くと、何か神々しいものを感じる、というような熱狂的な意見をよく聞きますが、イエスさまがサマリヤにいた一人の女にこう言われましたね。「わたしの言うことを信じなさい。あなたがたが父を礼拝するのは、この山でもなく、エルサレムでもない、そういう時が来ます。…しかし、真の礼拝者たちが霊とまことによって父を礼拝する時が来ます。今がその時です。父はこのような人々を礼拝者として求めておられるからです。」(ヨハネ4:21-24)私たちは、霊とまことによって、どこにおいても神を礼拝することができます。キリストは実に、私たちのうちに住んでくださり、信者たちの間にご臨在してくださるのです。ハレルヤ!

2.私たちの主イエスさまを、もっと深く知るきっかけとなる場である。
私たちは主イエスを信じていますが、この方は神のみことばの中に啓示されており、聖霊によってあかしされる方です。したがって、聖書をよく読まなければいけないのですが、その舞台はイスラエルの土地、そしてイエスさまはユダヤ人として生きたお方です。日本文化や西洋文化の色眼鏡をとりはずして、私たちが礼拝するイエスさまをより等身大に見るために、イスラエル旅行はとても貴重な体験となり、ユダヤ人のことを学ぶのも有益であります。ある人が言いました。「(イスラエルの)土地そのものが、あなたに語りかけてくれるでしょう。」

3.神のみことばの確かさを知るところである。
ペテロが言いました。「また、私たちは、さらに確かな預言のみことばを持っています。(・ペテロ1:19)」使徒ペテロは、イエスさまが高い山で変貌された、その威光の姿を目撃した一人ですが、なんとペテロは、それよりも預言(神のみことば)のほうが確かであると言うのです。聖書の預言はことごとく成就しました。それはイエスさまが初臨されたときだけではなく、今も一部ですが実現しているのを見ることができます。そして、私たちは、心の中だけではなく、客観的に永遠の神がおられることを証言できるのです。

4.キリスト者が愛していくところ、また人々である。
神がアブラハムに約束された土地は今も神のものであり、また神が選ばれた民は今も愛されています。「彼らは福音によれば、あなたがた(異邦人)のゆえに、神に敵対している者ですが、選びによれば、先祖たち(アブラハム・イサク・ヤコブ)のゆえに、愛されている者なのです。神の賜物と召命はいつまでも変わることがありません。(ローマ11:28)」神が愛しておられるのであるから私たちも愛する、という立場です。

あとまた誤解がないように付記しますと、今はキリストにあって、ユダヤ人も異邦人も一つとされます。ユダヤ人もキリストを信じる信仰によって神に近づかなければ、救われません。神は、ユダヤ人だけではなく、アラブ人も神はこよなく愛され、私もアメリカにて、聖霊と愛に満ちたヨルダン人(パレスチナ人)のクリスチャンと交わりを持ちました。(彼はユダヤ人クリスチャンと仲良くしておりましたが、「エルサレムで二人でいっしょに歩いて、マスコミにでも撮ってもらおうか!」などと話していましたが…。ユダヤ人クリスチャンは、「マスコミは、そういうところは撮影せず、憎悪や敵意のあるところばかりを取材する。」と言っていました。)今、苦しみを受けているアラブ人の方々のためにも、お祈りしたいです。


わたしの証人 2000/10/31

私は94年に、妻が10年間住んでいた米国東部を彼女とともに観光したことがあります。彼女が住んでいたメリーランドのアパートと通っていた教会も訪れ、南北戦争の北部勝利の分岐点となったゲティスバーグ、そしてウェスト・バージニアの牧歌的な風景を満喫しました。

ワシントンDCにも行きました。たまたまホロコースト記念博物館を見かけました。妻もこれは初めてだとのことで、入場しました。入るのは簡単でしたが、ざっと見るだけでも4時間はかかったのではないでしょうか、とにかく大きかったです。ホロコーストの惨状はさることながら、私が圧倒されたのは、このような記念博物館を、アメリカという超大国の首都にでかでかと建て、しかも、扇情的にならずに綿密に、仔細に渡って歴史を保持しているユダヤ人の影響力です。

建物からようやく出て来たとき、その出口に向かって正面には大きく大理石に、”You are My witness.”(あなたがたはわたしの証人。イザヤ43:12)と刻まれた聖句がありました。彼らはもちろん、このホロコーストの惨状を見たあなたがたは、主なる神の証人である、つまり、他の人々にもこのことを話しなさい、と言う意図で使っているのですが、聖書の文脈では、「あなたがたは」というのはイスラエルの民であり、私たちのことではありません。けれども、このみことばが、私がイスラエルに魅せられるようになったきっかけとなりました。

それは、クリスチャンの私に対して、神さまがどのように関わってくださっているかを、彼らをとおしてはっきりと知ることができるからです。例えば、今もって、ユダヤ民族はこの世から消えていません。それは、神さまがこの私をも決して見捨てないことを証ししています(ローマ8:29;11:1-2)。また、ユダヤ人を助けた人々が世界の注目の的となっていくことから、一杯の水さえも主の報いからもれることはない、というイエスさまのことばを思い出します。オスカーシンドラー、そして日本では杉原千畝さんがいます。千畝さんご本人は、あの出来事を思い出すことはあったとしても、記憶の片隅にあっただけのようです。けれども、ビザを受け取ったユダヤ人は決して忘れませんでした。そして、外務省が彼を罷免したことを公式に謝罪させることまでに至らせました。

「決して神はいない」と教えるこの世界に対して、いやがおうにも「神はいる。」と教えてくれるのが、イスラエル民族とその土地であるような気がします。


今回の紛争のきっかけは? 2000/11/07

再びイスラエル情報を提供いたします。

9月28日のリクード党シャロン党首の神殿の丘訪問が、今回の紛争のきっかけとなったという非難をアラファトは行ない、世界のマスコミもそれを受け入れています。けれども、シャロンの訪問は今回が初めてではなく、神殿の丘はどのイスラエル市民も入ることが許されているところです。(むろん、そこは一般の観光客が毎日、たくさん訪れている場所です。)アラブ系クネセト議員三人を含む今回の訪問は、前もってパレスチナ当局に伝えられており、同じくパレスチナ当局のジブリル・ラジョウブ氏は、そこのモスクの中に入らないという条件で、その訪問を許可し、パレスチナ人による示威行為はさせないとの確約をしておりました。

したがって、シャロン党首の神殿の丘の訪問が、紛争のきっかけではありません。
では、何がきっかけか?

その時期は、ユダヤ人にとって政暦の新年です。ラッパを吹き鳴らす聖なる会合(ロシュ・ハシュナ)から始まり贖罪日まで、ユダヤ人は祈りに専念し、自分の一年の行ないを調べ、吟味する時期となっています(レビ23章参照)。あらかじめ、神殿の丘の敷地には、大量の投石用の石や火炎瓶が用意されていました。9月29日、イスラムの礼拝が終わった午後1時すぎに、数百人のパレスチナ・イスラム教徒が、ユダヤ教徒の祈りの場である嘆きの壁に投石を開始して、暴動が始まりました。さらに、同日イスラエル各地で、インティファーダを起こしています。その週末には、イスラム指導者が繰り返し、大音響のスピーカーで、イスラエルに対してのジハード(聖戦)を呼びかけました。

これらのことから、今回の紛争は、パレスチナ・アラブ人が、ユダヤ人の新年に反イスラエル闘争を展開させた、と言えます。

ちなみに、マスコミは、パレスチナ人何人死亡、負傷者、との報道を繰り返していますが、イスラエル市民とイスラエル兵の死亡や負傷者については、意図的ではないかと思われるほど報道しておりません。

(情報源:LCJE日本支部事務局長、石黒イサク氏によるニュース・コメンタリー。Hope For Todayの月刊ニュースレター。)


現在までの経過 2002/08/27

ある掲示板で書き込んだ僕の駄文ですが、以下に貼り付けます。ご参考にしてください。

**********

> 最近のイスラエルは擁護できないとか、

 最近のイスラエルが変わったのは、いろいろないきさつがあります。
 イスラエルの現代史を見るときは、以下のポイントをつかむと良いでしょう。


1.主要な三つの中東戦争

 もちろん、1948年、1967年、1973年の戦争です。イスラエルはいずれも、「アラブ周辺諸国」が戦争の相手でした。ユダヤ人たちは、英国がかつて分割したパレスチナ(現代のヨルダン)と、ユダヤ(西岸がガザ地域を含む現在のイスラエル)に分けた、そのユダヤ側をさらに分割した国連分割案に同意しました。アラブ周辺国はそれを拒否しました。アラブは、イスラエルが自分たちの支配権にあることそのものを由としない立場によって、この三つの戦争を始めました。(67年は正確には、イスラエルの弾から始まりましたが、その前にアラブ諸国の軍事行動が今にも始まろうとしていたところでした。)

 アラブは、「自分たちのところに、ユダヤ人の国があってはならない。」という立場であり、ユダヤは、「とにかく、自分たちの固有の土地がほしい。それがかなえられたら、僕らは満足だ。」という立場です。この双方の立場を念頭に入れると、今の中東紛争理解へ弾みがつきます。

 そのような確執の中で、見捨てられた人々がいわゆる「パレスチナ難民」です。アラブ諸国は、48年の独立戦争の時に、イスラエルにいたアラブ人に、そこから退避する呼びかけをしました。一方、アラブ諸国にいるユダヤ人もまた難民となり、イスラエルへと避難してきました。ユダヤ人難民は、後にイスラエルによって吸収されました。彼らとその子孫はいま、イスラエル市民です。けれどもアラブ難民は、吸収されませんでした。なぜならアラブ諸国が、彼らを人質として使って、イスラエルが自分たちの民を虐げているという構図を作り出そうとしたからです。

 67年でヨルダンが負け、西岸を手放さなければならなくなり、その西岸はイスラエルの管轄地になりました。けれども、そこに住むパレスチナ人たちを代表するような組織もなければ、ましてや自治区などありませんでした。

 けれども、エジプトにて結成されたパレスチナ解放機構は、この西岸に住むアラブ人たちを踏み台として、イスラエルをすべてアラブのものにする組織を作り始めました。彼らは初めに、ヨルダンにいて、ヨルダンから追い出されてレバノンに行き、イスラエルがレバノン侵攻したことによって、彼らが婦女暴行など数々の犯罪を犯していたことが明らかになりました。飛行機のハイジャックなど、近代テロリズムが始まったのは、このパレスチナ解放機構とアラファト議長によってです。

 現在、お茶の間で見ることが出来る報道だけですと、「イスラエル 対 パレスチナ難民を代表するPLO」という構図になっていますが、以上説明したように、「イスラエル 対 周辺アラブ諸国」の構図が正しいのです。PLOとシリヤ、サウジアラビア、イラク、イランなど、水面下でいろいろつながっています。周辺国もイスラエルを攻めたいのですが、直接体当たりすれば、今までのように負けてしまいます。そこで国際世論に訴え、同情を引き出しているPLO支配下のパレスチナは、彼らにとっては好都合な存在です。

2.オスロ合意

 こうした中、イスラエルは、PLOというテロ組織と戦っていましたが、彼らは、アラブ人を倒すことはその目標になっていないことを思い出してください。彼らと共存する、というか、自分たちの生存が脅かされないでいれば、それで十分です。そうした中で、政治的な人質にされているパレスチナ住民も、その経済的鬱積状態の中で、インティファーダ(蜂起)を散発的に起こすようになりました。

 ラビンは、こうした人々に同情して、PLOがにっくきテロリスト集団であることを知りながらも、彼らを代表する組織として、オスロ合意でアラファトと握手を交わしたのです。そして、安全が確保されることと引き換えに、管轄している土地を、新しくパレスチナ自治区として譲渡していくという、「平和と土地」の原則に立ちました。

 けれども、テロ行為は続きました。いや、オスロ合意後のほうが、テロ事件はさらに増えました。その理由は、アラファトが、その合意によってなるべく土地の譲渡を引き出しておいて、それから一挙にイスラエルを攻めるという段階的戦略を持っていたからです。

3.2000年9月に始まった、インティファーダ

 そうした中で、オスロ合意に基づいて、バラクが最大限の譲歩をしました。西岸とガザ回廊の97パーセント、そして何と、エルサレム分割案までも差し出しました。それを蹴ったのはアラファトでした。彼の目標は、「イスラエル全体を解放して、パレスチナに戻す」ですから、それでも満足できないのです。首相がシャロンになったときに、神殿の丘訪問をするときを見計らって、前もって石を積み上げたりして、新たなインティファーダの準備を整えていました。そして起こったのが、あの2000年秋、ユダヤ人が新年を祝っていたときに起こった、インティファーダです。これは、イスラエル中に広がって、今騒がれている「自爆テロ」が頻繁に行なわれるようになりました。

4.イスラエル国防軍の軍事作戦/アラファトの権力失墜

 アメリカの仲介のもと、イスラエルは何とかしてこの事態を収拾したいと願っていました。けれども、アメリカから仲介役がやってくる度に、テロ事件が起こり、ついに三月、イスラエル国防軍が撤退を開始したその翌日から毎日のようにテロが起こり、ついにネタヌヤで、過越の祭りの食事のパーティーをしているところで、自爆テロが起こりました。インティファーダ開始以来の最大の被害が出ました。

 かねてから、イスラエルは、アラファトがこれらテロ行為に深く関与している証拠を持っていましたが、今回は、そのテロの巣窟を一掃する目的で、「守りの壁」作戦を、たしか4月1日に開始しました。ここで、あのいわゆる「ジェニン虐殺」疑惑が起こって、この掲示板でも荒らしが起こったのです。

 ジェニン虐殺はなかったというのが、国連の調査結果でもありますが、同時にこの作戦で、確かにアラファトが深くテロに関与していたことが、暴露されました。自治区における圧制の手伝って、パレスチナ人自身からの支持も低下し、国際社会からも圧力がかけられました。そして今に至っています。

(後記)
 次のサイトに、以上の説明がさらに詳しく書いてあります。ぜひご参照ください。

 イスラエルは侵略者か?
 http://www.harvesttime.tv/Israel/Tsunobue/04_08TB.htm
 (「つのぶえ」2004年8月号)


あなたの持っているメガネは何? 2003/06/02

 以下は、LCJE6月号、石黒イサク牧師による巻頭言の元原稿です。ご本人から転載許可を得ました。


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巻頭言 「神の視点でイスラエルを見る」
 
LCJE日本支部事務局長
AMFインターナショナル日本委員  
美濃ミッション富田浜聖書教会 牧師 石黒イサク

 イラク戦争の事実上終結を期に、にわかに中東和平問題=イスラエル・パレスチナ問題に世界の目が寄せられることになりました。パレスチナ側にムハマド・アバス新首相が登場し、「ロード・マップ」と呼ばれる新和平案も出されて今後の動向が大変気になるところです。

 先日、AMFインターナショナル代表のウェスレィ・テーバー師が来日され、幾度かとても興味深い講演をしてくださいました。その中から、私たちがイスラエル・中東のニュース・レポートを見聞きするときの、基本について大切なメッセージがありましたので、簡単に要点をご紹介させていただきます。

 まず私たちは知らず知らずのうちに、自分自身の固定した視点で物事を見てしまう傾向があります。すでに歴史的・文化的・思想的に色メガネをかけて物事を判断していながらも、自分はとてもバランスのとれた考えを持っていて、世の中の多くの人たちは、間違った考えを持っていると思いがちです。特に中東問題、イスラエルに関しての視点にはとても多くの考え・評価・解釈があって、困惑してしまうことが多々あります。

 イスラエルを見るメガネには、@ロマンチック・メガネ A限定焦点メガネ Bバラ色メガネ C拒絶視メガネ D現実焦点メガネの5種類のものがあります。あなたは今まで、イスラエルをどのメガネでごらんになっていましたか?

@ロマンチック・メガネ 
 「聖地巡礼・観光旅行」などが大好きなクリスチャンに多いのがこのメガネです。イスラエル=聖書の国、ユダヤ人=聖書の民、とてもステキ! ガリラヤ湖、感激! エルサレム、しびれルー、、、、などとイスラエルを物語的・夢見心地で、評価していますので、現実の戦争や、テロのことなどが理解できず、イスラエルを支持して危険が増大したり、自分に不利になったりすると、どうして良いのか分からなくなってしまう人たちです。

A限定焦点メガネ 
 聖書学者・考古学研究者などの聖書通に多いこのメガネは、過去と未来を見ています。イスラエルの過去の歴史を綿密に研究し、土地や民族、周囲との関係を良く理解しています。また終末の預言と中東についても詳しく調べ、学びます。しかし現在イスラエルの国に住んでいるユダヤ人と、聖書に記されているアブラハムに対する神様のご計画などの関係にはあまり興味を持たず、現実離れした、聖書研究で満足している人たちです。

Bバラ色メガネ 
 「クリスチャン・シオニスト」と呼ばれる人々に多いのはこのメガネです。イスラエル国旗を体に巻いたり、ユダヤグッズのコレクションをしたりして、「神の選民=イスラエルは無条件で、支援しなければならない。」「神の民だから、神が祝福されるので、彼ら(民族も政府も)が何をしていようがそれで良い。」「彼らを愛して支援さえしていれば、自分たちも祝福される。」また「新約聖書を渡したり、イエス様の十字架を伝えて彼らを怒らせてはいけない。」と思っているので、福音宣教には熱心になれません。極端な例では、異邦人なのに何でもユダヤ的に変えてしまう人たちまで現れてきています。

C拒絶視メガネ 
 「反ユダヤ的」な人たちはこのメガネで見ています。「イスラエルは神に背いたので、神はイスラエルを見捨てられた。」「イエス・キリスト様を拒絶した民族は呪われていて、すでに神の契約から切り離されている。この世の中の問題の根はユダヤ人たちで、クリスチャンは彼らと関わりを持つべきではない。」とまで言う人たちが現に多数存在します。二契約神学や置換神学が幅広く受け入れられているキリスト教界で、テロ・紛争の問題が沸騰すると、多くのクリスチャンたちがこの考えを支持するようになっています。

 今までの4種類のメガネには、それぞれ一部真実がありますが、同時に欠陥もありますので、これらでニュースを見聞きしていますと、正しい判断ができず、論争と対立が起こるわけです。キリスト教社会の中でさえ、聖書を用いていながらも、イスラエルに対する評価や意見が大きく分かれいるのはこのためです。

D現実焦点メガネ
 私たちは上記の4種類の人間的理解法を少し脇に置き、世界の創造者であり、歴史の支配者であられる、絶対主権者の神様の視点に立たなければ、正しい判断ができません。
 現実的な視点とは、神様がイスラエルに対して何と言っておられるか、どのように取り扱っておられるのかを正確に捉えるものです。
 まず『主の聖い民、、、、己の宝の民となし、、、、主が愛するにより、、、、先祖たちに誓いし誓いを保つ、、、』(申命記7:6-8)と記されていて、イスラエルの召命は、彼らの状態によるのではなく、神様の主権のもとにあることを認めなければなりません。
 次に神の契約とイスラエルの状態は、申命記28章などに記されていますように、彼らの祝福・繁栄は、彼らの主に対する従順によって与えられ、不従順によって彼らが神の呪い、懲らしめを受ける事になっていることを忘れてはなりません。しかし彼らに対する神の愛と召命は不変です。(エレミヤ31:3、ロマ11:29など)
 しかし彼らが、たとえどれほど低迷し没落しても、必ず神の御名のために、神御自身が彼らを回復してくださる約束があることを忘れてはなりません。(申命記30:1-6、エゼキエル20:33-39など)
 そしてユダヤ人の救いも異邦人である私たちと同様に、メシアであるイエス・キリスト様を信じる信仰によってのみ与えられるものであること(使徒行伝15:11)を理解し、彼らの救いのために熱心に祈り・とりなしをすると共に、宣教に励まなければなりません。(使徒行伝4:12、ロマ1:16-17、ロマ10:12-13 など参照)
 
 この現実焦点メガネこそが、神様の視点であり、正しい聖書理解でイスラエルや中東、歴史と将来を見る方法であります。LCJEフレンズの皆様、読者の皆様、そしてこの記事をごらんくださる方々皆様に、神様のお導きと祝福が加えられますように、お祈りいたします。


現代イスラエルと聖書預言 2003/07/30

 以下は、LCJEニュース8月号に掲載された巻頭言です。

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 聖書信仰を持っているクリスチャンは、今のイスラエルをどのように把握すればよいのでしょうか。聖書に書かれている過去については、書いてある通りのことが起こったことは明らかですし、未来についても預言の言葉をその通りに受け止めるなら、完成されたイスラエルの姿を詳細かつ明確に見ることができます。けれども今現在イスラエルで起こっていることについてはどうでしょうか?いろいろな方から「エルサレムの平和のために祈れ」の意味は何か、また、イスラエル・パレスチナ間の対立について何を祈れば良いのか分からない、とよく聞かれます。そこで、現存するイスラエル国とユダヤ人を聖書的に見ることによって、主のみこころにかなった祈りをどのようにすれはよいかを考えてみましょう。

 イスラエルの国や民族を理解するためには、神が彼らに与えてくださった契約と約束をしっかり把握しておくことが必要です。アブラハム契約(創世12:1−3)、パレスチナ契約(申命30:1−5)、ダビデ契約(2サムエル7:12−16)、新しい契約(エレミヤ31:21−34)と言われるのがそれです。その際大事なことは、一つの契約のみに焦点を合わせるのではなく、いくつかの契約が複合的に展開していることを知ることです。

 主はアブラハムに、土地、民族、国家においてイスラエルを祝福してくださることを約束してくださいました。しかし、モーセを通して、イスラエルが不従順であればのろわれるとの誓いも立てられました。事実、彼らはその土地から引き抜かれて、離散の地で敵の物笑いとなりました。けれどもその後に、「わたしはアブラハム、イサク、ヤコブとの契約を思い起こそう(レビ26:42−43)」と言われ、イスラエルの回復を約束されています。

 その約束の一つが、地の果てに追いやられているイスラエル人たちが、かの地に集められるというものです。離散していたユダヤ人が19世紀後半から大量帰還し、20世紀にイスラエル建国が実現しました。しかしご存知のように、現在数多くのイスラエル人はイエスさまをメシヤと信じていません。そのためクリスチャンの中でも、現代イスラエルは神の意思によって出来たものではなく人為的なものであり、自己矛盾を抱えているという意見があります。しかし、そうした主張が見落としているのは、イスラエルに与えられる新しい契約の"過程"です。

 エレミヤは、イスラエルがシナイ山で与えられた契約を守り行なうことが出来なかったので、主が彼らの心に律法を書き記す、と預言しました。つまりイスラエルが律法の行ないや自分の力ではなく、ただ神の恵みとあわれみによって、信仰によって神を求めるようになるということです。

 そのため主は、新しい契約の中に彼らを導き入れるために、「ヤコブの苦難(エレミヤ30:7)」と呼ばれる期間を定められました。主は、とてつもない患難の中で彼らのかたくなさを砕き、民の力を尽き果てさせ、ただ主のみにより頼むようにさせようとされています。そしてこの苦難は、異邦の諸国がイスラエルに敵対することによってもたらされます。イスラエルに敵対することは、「あなたをのろう者を、わたしはのろう(創世12:2)」とあるように、神の御怒りを招きます。と同時に、主はこれらの反対者らを用いて、イスラエルを目覚めさせようと考えておられます。

 このことについて語っている預言はたくさんあります。例えば、イスラエルの反逆者が患難の中で選り分けられた後、「わたしが主であることを知ろう」とあるエゼキエルの預言(20:38)があります。また、三分の二は断たれるが残りの三分の一が「わたしの名を呼び、わたしは彼らに答える。」というゼカリヤの預言(13:9)、国々がエルサレムを攻めるときに、かつて突き刺したイエスご自身が彼らを助けに来られるのを見るとのゼカリヤの預言があります(12:10)。

 したがって現代イスラエル国において、確実に神のご計画が実行されています。この国に敵対するアラブ諸国やそれを後押しする国際世論は、イスラエルにとって試練であると同時に、神に立ち返るための好機でもあります。自爆テロの脅威は日増しに拡大し、ロードマップによる土地分割など彼らに対する圧力はますます強まるばかりですが、この危機を通してイエスさまをメシヤとして受け入れるための心が整えられつつあります。ゆえに、私たちはイスラエル人が平和に安全に暮らせるようになることを祈りつつ、同時に、苦境の中で彼らが真に霊的に祝福されることを祈ることができるのです。


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