歴代誌第二8−10章 「長続きしない栄華」


アウトライン

1A ソロモンに与えられた富 8−9
   1B 神殿建設後の事業 8
      1C イスラエル各地の拠点作り 1−10
      2C 神殿礼拝 11−16
      3C 富の蓄積の開始 17−18
   2B 異邦人による証し 9
      1C シェバ女王の求道 1−12
      2C 他の諸国が見る栄華 13−31
2A 愚かな判断 10
   1B 高ぶり 1−11
   2B 心の離反 12−19

本文

 歴代誌第二8章を開いてください、今日は8章から10章までを学んでみたいと思います。ここでのテーマは、「長続きしない栄華」です。

1A ソロモンに与えられた富 8−9
1B 神殿建設後の事業 8
1C イスラエル各地の拠点作り 1−10
8:1 ソロモンが主の宮と自分の宮殿を二十年かかって建て終わったとき、8:2 ソロモンは、フラムがソロモンに返した町々を建て直し、そこにイスラエル人を住ませた。

 私たちは前回、神殿の建設が終わった後に、神殿奉献式をソロモンとイスラエルが行なったところを読みました。その後に彼が行なった事業がここ8章に書かれています。

 ソロモンの王の期間は全部で40年間ですが、その半分を主の宮と宮殿の建設のために費やしたことになります。(列王記によると、主の宮が7年間、宮殿が13年かかったと書かれています。)神殿と宮殿の建築が終わった後にもまた、彼はガリラヤ地方にイスラエル人が住めるように、町々を立て直していく事業に取りかかりました。これらの町々は元々、ツロの王フラムに、神殿建築に関わってくれた報酬として与えたものですが、彼の気にいらなかったようで、フラムから返されたものです。こうして、神殿や宮殿の建築を公生涯の半分費やし、さらにイスラエル中に建築建築事業を推進させていきました。

8:3 ソロモンはハマテ・ツォバに出て行き、これに打ち勝った。

 ソロモンの治世にて記録されている、ソロモンが戦った唯一の戦争です。戦争と呼ぶにふさわしくないほど小規模なものだったのでしょう。ソロモンの名前は、平和シャロームを由来としていますが、彼の治世は「平和」で特徴づけられていました。

8:4 ついで、彼は荒野にタデモルを建て、倉庫の町々はすべて、これをハマテに建てた。

 ハマテは、シリアのほうにあるずっと北にある町です。そこを倉庫にしました。

8:5 さらに、彼は上ベテ・ホロンと下ベテ・ホロンを建てた。これは、城壁と門とかんぬきのある防備の町々であった。

 ベテ・ホロンは、シェケムの南にある、ちょうどイスラエルの真ん中にある町です。そこを防備の町々としました。

8:6 バアラテ、およびソロモンの所有のすべての倉庫の町々、戦車のためのすべての町々、騎兵のための町々、ソロモンがエルサレムや、レバノンや、すべての領地に建てたいと切に願っていたものすべてを彼は建設した。

 自分の欲するものをすべて建設しました。

8:7 イスラエルの出でないヘテ人、エモリ人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人の生き残りの民全員、8:8 すなわち、イスラエル人が滅ぼし尽くさなかった人々の跡を継いでこの地に生き残った彼らの子孫に当たる人々を、ソロモンは苦役に徴用した。今日もそうである。8:9 しかし、ソロモンはイスラエル人を自分の仕事をさせる奴隷にはしなかった。彼らは戦士であり、彼の補佐官の長であり、戦車隊と騎兵隊の長であったからである。8:10 また、ソロモン王に属する者で、監督をする者の長は二百五十人であって、民を指揮していた。

 これら建築事業には労働力が必要でしたが、これらはイスラエルが約束の地に来る前に住んでいた先住の民に行なわせていました。そして軍事力としての人員はイスラエル人に行なわせました。

こうして建設事業に励んでいたソロモンですが、彼は主を愛している人でしたが、いつしか彼の心は重たくなっていったようです。伝道者の書に、彼の心の内が書かれています。2章を開いてください、4節から読みます。「私は事業を拡張し、邸宅を建て、ぶどう畑を設け、庭と園を造り、そこにあらゆる種類の果樹を植えた。木の茂った森を潤すために池も造った。私は男女の奴隷を得た。私には家で生まれた奴隷があった。(今読んだように、イスラエルの先住民を奴隷にしたことが書かれています。)私には、私より先にエルサレムにいただれよりも多くの牛や羊もあった。私はまた、銀や金、それに王たちや諸州の宝も集めた。(次の章に、諸国の富を集めたことが書かれています。)私は男女の歌うたいをつくり、人の子らの快楽である多くのそばめを手に入れた。私は、私より先にエルサレムにいただれよりも偉大な者となった。しかも、私の知恵は私から離れなかった。(シェバの女王の質問に、ソロモンはみな答えます。)私は、私の目の欲するものは何でも拒まず、心のおもむくままに、あらゆる楽しみをした。実に私の心はどんな労苦をも喜んだ。これが、私のすべての労苦による私の受ける分であった。しかし、私が手がけたあらゆる事業と、そのために私が骨折った労苦とを振り返ってみると、なんと、すべてがむなしいことよ。風を追うようなものだ。日の下には何一つ益になるものはない。(2:4-11

 言わば、「燃え尽き症候群」状態です。主から知恵が与えられ、また富が与えられたソロモンは、主ご自身ではなく、これらの富や知恵に力を注ぎ続けたため、その心がカラカラに乾いてしまったのです。私たちキリスト者が陥る罠が、ここには書かれています。主のためにいろいろなことを行なっているつもりが、主との生きた関係、交わりよりも大事になって、労苦や骨折りばかりが増して行ってしまうことがないでしょうか?

 イエスさまは、言われました。「この水を飲む者はだれでも、また渇きます。しかし、わたしが与える水を飲む者はだれでも、決して渇くことがありません。わたしが与える水は、その人のうちで泉となり、永遠のいのちへの水がわき出ます。(ヨハネ4:13-14」イエスさまを心に抱き、この方と交わるところには泉があります。そのいのちの泉に触れるときに、私たちは主から任されたことを行ない続けることができます。ソロモンは、一義的に求めなければいけないキリストご自身を二義的なものとし、二義的な、付随してくる祝福を一義的に求めたところに、誤りがありました。

2C 神殿礼拝 11−16
8:11 ソロモンはパロの娘を、ダビデの町から彼女のために建てた家に連れて上った。「私の妻はイスラエルの王ダビデの家に住んではならない。主の箱を迎え入れた所は聖なる所だからである。」と彼が言ったからである。

 ソロモンは宗教的な事柄においても、熱心でした。エジプトの妻は、ダビデの町に住んではいけない、なぜならそこには主の箱を迎え入れたところだから、ということです。

8:12 それから、ソロモンは、彼が玄関の前に建てた主の祭壇の上に、主のために全焼のいけにえをささげた。8:13 すなわち、モーセの命令どおりに、毎日の日課により、これをささげ、安息日ごとに、新月の祭りごとに、年三回の例祭、すなわち、種を入れないパンの祭り、七週の祭り、仮庵の祭りごとに、これをささげた。8:14 彼はその父ダビデの定めに従い、祭司たちの組分けを定めてその務めにつかせ、レビ人もその任務につかせ、毎日の日課として、祭司たちの前で賛美と奉仕をさせた。門衛たちも、その組分けに従って、おのおのの門に立たせた。神の人ダビデの命令がこうだったからである。8:15 彼らは、王がすべてのことにつき、また宝物倉のことについて、祭司たちとレビ人たちに命じたことにそむかなかった。

 ソロモンは、モーセの律法にある例祭、またダビデの定めによる神殿奉仕の組み分けをことごとく守らせました。彼はしっかりと、モーセとダビデの言い伝えを継承しました。

8:16 このように、ソロモンの工事は、主の宮の礎を据える日まで、また、その完成まで、すべてが整えられていた。主の宮は完全であった。

 これですべての神殿事業が終わったのですが、けれども先に話しましたとおり、宗教的行為に熱心であっても、それ自体が仕事になっており、彼の心は主ご自身の中にあるとは言えない行動も取っていきます。次をご覧ください。

3C 富の蓄積の開始 17−18
8:17 それから、ソロモンはエドムの地の海岸にあるエツヨン・ゲベルとエラテへ行った。

 エラテは、イスラエルの南端にある町です。その町はイスラエルの中で唯一、紅海に面しているので、そこから航行が出来ます。

8:18 フラムはそのしもべたちを通して、何隻かの船と海に詳しいしもべたちを彼のもとに送り届けた。彼らはソロモンのしもべたちといっしょにオフィルへ行き、そこから、金四百五十タラントを取って、これをソロモン王のもとに持って来た。

 約15トンの金を運んできています。オフィルは、ちょうど紅海が終わるところにある、エチオピヤの町ですが、そこから金を持ってきました。先に伝道者の書を読んだところにあったように、彼は金銀を求め、蓄えていきました。確かに主は富も加えて与えると約束されたのですが、それを一番にして求めてはいけないものでした。けれども、彼はそれを行なってしまいました。

2B 異邦人による証し 9
 そして異邦の諸国の間で、ソロモンの栄華が広まっていく姿を次の章で読んでいきます。

1C シェバ女王の求道 1−12
9:1 ときに、シェバの女王が、ソロモンの名声を伝え聞き、難問をもってソロモンをためそうとして、非常に大ぜいの有力者たちを率い、らくだにバルサム油と、多くの金および宝石を載せて、エルサレムにやって来た。彼女は、ソロモンのところに来ると、心にあるすべてのことを彼に質問した。

 シェバは、ちょうど先のエチオピヤのオフィルの、紅海を挟んで向こう側にある地域です。今のサウジアラビアの南部に当たります。そこから女王がやって来ました。

9:2 ソロモンは、彼女のすべての質問を説き明かした。ソロモンがわからなくて、彼女に説き明かせなかったことは何一つなかった。9:3 シェバの女王は、ソロモンの知恵と、彼が建てた宮殿と、9:4 その食卓の料理、列席の家来たち従者たちが仕えている態度とその服装、彼の献酌官たちとその服装、主の宮に上る階段を見て、息も止まるばかりであった。

 英語では、”There was no more spirit in her.”とかかれており、「彼女のうちに、これ以上の霊はなかった。」という直訳になります。つまり、日本語訳のとおり、ソロモン宮殿の栄華を見て、息も止まるばかりになりました。

9:5 彼女は王に言った。「私が国であなたの事績とあなたの知恵とについて聞き及んでおりましたことはほんとうでした。9:6 実は、私は、自分で来て、自分の目で見るまでは、彼らの言うことを信じなかったのですが、驚いたことに、私にはあなたの知恵の半分も知らされていなかったのです。あなたは、私の聞いていたうわさを上回る方でした。9:7 なんとしあわせなことでしょう。あなたにつく人たちは。なんとしあわせなことでしょう。いつもあなたの前に立って、あなたの知恵を聞くことのできるこの、あなたの家来たちは。9:8 あなたを喜ばれ、その王座にあなたを着かせて、あなたの神、主のために王とされたあなたの神、主はほむべきかな。あなたの神はイスラエルを愛して、これをとこしえにゆるがぬものとされたので、彼らの上にあなたを王として与え、公正と正義とを行なわせられるのです。」

 シェバの女王が、異邦人としての神への信仰告白を行なっています。彼女は、わざわざ遠い国からやって来て、自分が聞いたうわさははたして、そのとおりかどうか調べました。この彼女の行為をイエスさまは取り上げて、福音を求める姿の事例とされています。マタイ1242節です。「南の女王が、さばきのときに、今の時代の人々とともに立って、この人々を罪に定めます。なぜなら、彼女はソロモンの知恵を聞くために地の果てから来たからです。しかし、見なさい。ここにソロモンよりもまさった者がいるのです。

イエスさまは、パリサイ人や律法学者から、しるしを求められて、これまでの証しを受け入れないあなたがたは、悪い、姦淫の時代である、とお咎めになりました。そしてヨナが三日三晩、魚の中にいたように、わたしも三日目に死者の中からよみがえる、と示唆されました。そして、今読んだ、シェバの女王の話をされています。彼女は、うわさを聞いたとき、拒むことをせず、自ら調べました。そして、神の真理を知りました。ところが、あなたがたは、さわざまなしるしを見ているのに、それを拒み続けている。自ら調べるようなことをせず、拒んでいる。だから、主が戻ってこられてさばかれるときに、義と認められたシェバの女王のこの信仰の行為が、あなたがた不信仰な者たちを罪に定めるものさしとなる、と言われています。

私たちの周りには、イエスさまについて、少しは話を聞いた人たちがたくさんいます。その中で、今の神なしの罪の生活を変えたくないから、ただ拒んでいる人たちが大勢います。けれども、これは果たして本当かどうか、調べて、それで信仰を持つ人たちもいます。

9:9 彼女は百二十タラントの金と、非常に多量のバルサム油と宝石とを王に贈った。シェバの女王がソロモン王に贈ったこのバルサム油のようなものはなかった。9:10 オフィルから金を運んで来たフラムのしもべたちと、ソロモンのしもべたちも、びゃくだんの木材と宝石とを運んで来た。9:11 王はこのびゃくだんの木材で、主の宮と王宮への大路を造り、歌うたいたちのために、立琴と十弦の琴を作った。このようなものは、これまで、ユダの地でだれも見たことがなかった。

 バルサム油にしても、びゃくたんの木材にしても、前例のないものでした。

9:12 ソロモン王は、シェバの女王に、彼女が王のもとに携えて来た品物以外のもので、彼女が求めた物は何でもその望みのままに与えた。彼女は、家来たちを連れて、自分の国へ戻って行った。

 シェバの女王の末裔であると主張するグループがエチオピヤにいます。彼らは黒人なのですが、シェバの女王がソロモンによって子を宿し、それからユダヤ教を信じるようになった、とのことです。

2C 他の諸国が見る栄華 13−31
9:13 一年間にソロモンのところにはいって来た金の重さは、金の目方で六百六十六タラントであった。9:14 このほかに、交易商人や仕入れ商人たちが携えて来たものがあり、また、アラビヤのすべての王たち、およびその地の総督たちも、ソロモンのもとに金銀を携えて来た。

 異邦の諸国から金銀がどんどん入ってきました。私は金の目方六百六十六が、不気味な数字に見えます。と言いますのは黙示録13章にて、獣の国の刻印が押されている、その獣の数字が六百六十六だからです。主を愛しているはずが、主に反するようになってくるソロモンの姿を暗示しているように見えます。

9:15 ソロモン王は、延べ金で大盾二百を作り、その大盾一個に六百シェケルの延べ金を使った。9:16 また、延べ金で盾三百を作り、その盾一個に三百シェケルの金を使った。王はそれらを、レバノンの森の宮殿に置いた。

 純金による盾ですから、あくまで装飾用です。私たちはこれだけ栄華があり、力を持っていることの象徴を、自分の宮殿の中に置きました。

9:17 王は大きな象牙の王座を作り、これに純金をかぶせた。9:18 その王座には六つの段があり、その王座には金の足台が取りつけられており、座席の両側にはひじかけがあり、そのひじかけのわきには二頭の雄獅子が立っていた。9:19 また、十二頭の雄獅子が、六つの段の両側に立っていた。このような物は、どこの王国でも作られたためしがなかった。

 金の王座は、イスラエルだけでなく全世界を見渡しても、このような物は存在しませんでした。

9:20 ソロモン王が飲み物に用いる器はみな金であった。レバノンの森の宮殿にあった器物もすべて純金であった。銀はソロモンの時代には、価値あるものとはみなされていなかった。9:21 王は、フラムのしもべたちを乗せてタルシシュへ行く船を持っており、三年に一度、タルシシュの船が金、銀、象牙、さる、くじゃくを運んで来たからである。

 タルシシュは、地中海の南西の海岸、つまり今のスペインのところにある町と言われています。そこから、金銀、象牙、さる、くじゃくなどの珍重品を運んで来ました。こうして、当時知られていた世界のすべてに渡って、富を蓄積するための貿易を行なっていました。

9:22 ソロモン王は、富と知恵とにおいて、地上のどの王よりもまさっていた。9:23 地上のすべての王は、神が彼の心に授けられた知恵を聞こうとして、ソロモンに謁見を求めた。9:24 彼らはおのおの贈り物として、銀の器、金の器、衣服、武器、バルサム油、馬、騾馬などを、毎年きまって携えて来た。9:25 ソロモンは四千の馬屋と戦車、および騎兵一万二千を持っていた。彼はこれらを戦車の町々に配置し、またエルサレムの王のもとにも置いた。

 シェバの女王だけでなく、世界中の王が、その栄華のゆえに彼のところにやって来ました。

9:26 彼は大河からペリシテ人の地、さらには、エジプトの国境に至るすべての王を支配していた。

 ここの大河は、ユーフラテス川のことでしょう。そこからエジプトの国境にいたるまでの王を支配していました。

9:27 王は銀をエルサレムで石のように用い、杉の木を低地のいちじく桑の木のように大量に用いた。9:28 人々は馬をエジプトや諸国からソロモンのもとに運んで来た。9:29 そのほか、ソロモンの業績、それは最初から最後まで、預言者ナタンの言行録、シロ人アヒヤの預言、および、先見者イドが見たネバテの子ヤロブアムについての幻の記録にしるされているではないか。9:30 ソロモンはエルサレムで、四十年の間、全イスラエルの王であった。9:31 ソロモンは彼の先祖たちとともに眠り、人々は彼をその父ダビデの町に葬った。彼の子レハブアムが代わって王となった。

 こうして、ソロモンはその栄華のゆえに異邦人の王の注目の的となりましたが、その栄華はたった一代で終わりました。次の息子レハブアムの愚かな判断によって、栄華を極めたこの王国は二国の分裂してしまったのです。

 イスラエルは、世界の光として神からの召しを受けていました。イスラエルが祝福されることによって、この国には神がおり、この方こそまことの神であると異邦人が認めることができるために、神はイスラエルを選び出されました。申命記26章にはこう書かれています。「きょう、主は、こう明言された。あなたに約束したとおり、あなたは主の宝の民であり、あなたが主のすべての命令を守るなら、主は、賛美と名声と栄光とを与えて、あなたを主が造られたすべての国々の上に高くあげる。そして、約束のとおり、あなたは、あなたの神、主の聖なる民となる。(18-19節)」そこでソロモンの栄華は、シェバの女王のような反応をもたらすことができましたが、主ご自身を求めるのを忘れてしまった栄華は、たった一代で廃れてしまったのです。

 主による祝福ではない、自分の頑張りによる祝福は、必ずどこかで軋みをもたらします。その話が次に出てきます。

2A 愚かな判断 10
1B 高ぶり 1−11
10:1 レハブアムはシェケムへ行った。全イスラエルが彼を王とするため、シェケムに来ていたからである。

 シェケムは、イスラエルの真ん中に位置する町です。レハブアムはもちろんエルサレムにいますから、そこからシェケムにやってきて、全イスラエルの王としての就任式を行なおうとしました。

10:2 ネバテの子ヤロブアムがそのことを聞くと、・・彼はソロモン王の顔を避けて逃げて行き、エジプトにいたのである。・・ヤロブアムはエジプトから戻って来た。10:3 人々が使いをやって、彼を呼び寄せたので、ヤロブアムは全イスラエルとともにやって来て、レハブアムに言った。

 ヤロブアムは、政治的な手腕家でした。ソロモンの下で働いていましたが、反逆的行為を行なったようです。けれどもソロモン王の権力は非常に大きかったので、彼はエジプトに逃げていました。けれどもソロモンが死にました。そこで、イスラエルに戻ってきたのです。そして彼は人々に呼ばれて、今、ソロモンの後継者に苦情を申し立てます。

10:4 「あなたの父上は、私たちのくびきをかたくしました。今、父上が私たちに負わせた過酷な労働と重いくびきを軽くしてください。そうすれば、私たちはあなたに仕えましょう。」

 ソロモンは、建築事業を強力に推し進めたため、イスラエルの民に重税を課していました。それが大きな重荷となっていました。主の祝福ではなく、ソロモンの頑張りがこのような弊害となって現われています。

10:5 すると、彼はこの人々に、「もう三日したら、私のところに戻って来なさい。」と言った。そこで、民は出て行った。10:6 レハブアム王は、父ソロモンが生きている間ソロモンに仕えていた長老たちに相談して、「この民にどう答えたらよいと思うか。」と言った。10:7 彼らは王に答えて言った。「もし、あなたがこの民に優しくし、彼らに好意を示し、彼らに親切なことばをかけてやってくださるなら、彼らはいつまでもあなたのしもべとなるでしょう。」

 これは、とても良い助言です。ソロモンの重税によって苦しめられていた民の姿を長老たちは知っていました。そこで税を軽減して、民に優しくしたら、いつまでもあなたに仕えてくれるでしょう、と言っています。

10:8 しかし、彼はこの長老たちの与えた助言を退け、彼とともに育ち、彼に仕えている若者たちに相談して、10:9 彼らに言った。「この民に何と返答したらよいと思うか。彼らは私に『あなたの父上が私たちに負わせたくびきを軽くしてください。』と言って来たのだが。」10:10 彼とともに育った若者たちは彼に答えて言った。「『あなたの父上は私たちのくびきを重くした。だから、あなたは、それを私たちの肩から軽くしてください。』と言ってあなたに申し出た民に、こう答えたらいいでしょう。あなたは彼らにこう言いなさい。『私の小指は父の腰よりも太い。10:11 私の父はおまえたちに重いくびきを負わせたが、私はおまえたちのくびきをもっと重くしよう。私の父はおまえたちをむちで懲らしめたが、私はさそりを使うつもりだ。』と。」

 この助言をしているのは、8節にあるとおり、レハブアムとともに育った若者です。神を愛するところから出てくる、人々へのあわれみが彼らには欠けていました。無知な高慢な姿です。そしてレハブアムは、長老たちの助言ではなく、この若者たちの助言を選びとりました。彼の心も、この若者たちと同じだったからです。

 ソロモンはかつて心配しました。自分がこれだけ労苦して築き上げた富を、私が死んでから、結局、愚か者によって使われてしまうのは空しい、と告白しています。「私は、日の下で骨折ったいっさいの労苦を憎んだ。後継者のために残さなければならないからである。後継者が知恵ある者か愚か者か、だれにわかろう。しかも、私が日の下で骨折り、知恵を使ってしたすべての労苦を、その者が支配するようになるのだ。これもまた、むなしい。(伝道者の書2:18-19」ソロモンの懸念は、レハブアムによって見事に実現してしまいました。

2B 心の離反 12−19
10:12 ヤロブアムと、すべての民は、三日目にレハブアムのところに来た。王が、「三日目に私のところに戻って来なさい。」と言って命じたからである。10:13 王は彼らに荒々しく答えた。レハブアム王は長老たちの助言を退け、10:14 若者たちの助言どおり、彼らに答えてこう言った。「私はおまえたちのくびきを重くする。私はそれをもっと重くしよう。私の父はおまえたちをむちで懲らしめたが、私はさそりを使うつもりだ。」10:15 王は民の願いを聞き入れなかった。それは、かつてシロ人アヒヤを通してネバテの子ヤロブアムに告げられた約束を主が実現するために、神がそうしむけられたからである。

 レハブアムのこの愚かな判断は、実は、ソロモンの離反に対する神のさばきの一貫でした。列王記第一11章にて、預言者アヒヤがヤロブアムにこう言っています。「十切れを取りなさい。イスラエルの神、主は、こう仰せられます。『見よ。わたしはソロモンの手から王国を引き裂き、十部族をあなたに与える。しかし、彼には一つの部族だけが残る。それは、わたしのしもべダビデと、わたしがイスラエルの全部族の中から選んだ町、エルサレムに免じてのことである。というのは、彼がわたしを捨て、シドン人の神アシュタロテや、モアブの神ケモシュや、アモン人の神ミルコムを拝み、彼の父ダビデのようには、彼は、わたしの見る目にかなうことを行なわず、わたしのおきてと定めを守らず、わたしの道を歩まなかったからである。(31-33節)』ソロモンが晩年に、主から心が離れて偶像を拝んだので、そのさばきとして王国を分裂させる、ということですが、これを実現するときに、レハブアムの愚かさを用いました。レハブアムが神のことを知らず、人に対して無慈悲になっているのも、ソロモンの離反が遠因としてあります。

10:16 全イスラエルは、王が自分たちに耳を貸さないのを見て取った。民は王に答えた。「ダビデには、われわれへのどんな割り当て地があろう。エッサイの子には、ゆずりの地がない。イスラエルよ。おのおのあなたの天幕に帰れ。ダビデよ。今、あなたの家を見よ。」こうして、全イスラエルは自分たちの天幕へ帰って言った。10:17 しかし、ユダの町々に住んでいるイスラエル人は、レハブアムがその王であった。

 民の心は離れました。けれども、レハブアムが住んでいるユダ族とベニヤミン族の人たちは、レハブアムを王としました。イスラエルはヤロブアムを王としますから、こうして二国に分裂したのです。

10:18 レハブアム王は、役務長官ハドラムを遣わしたが、イスラエル人は、彼を石で打ち殺した。それで、レハブアム王は、ようやくの思いで戦車に乗り込み、エルサレムに逃げた。

 役務長官は、税の取り立て屋です。何を生意気なことをやってやがる、とレハブアムは民に対して怒ったことでしょう。けれども、役務長官をイスラエルが殺したのを知って、身の危険を感じてエルサレムに急いで戻ってきました。

10:19 このようにして、イスラエルはダビデの家にそむいた。今日もそうである。

 歴代誌はバビロン捕囚後に編纂されていますが、レハブアムから離反したイスラエルは、ダビデの直系の子孫を王とすることを拒んだ、という見方をしています。そして実際、イスラエル王国はこれからユダ国に敵対し、そしてアッシリヤに捕え移され、ユダとは異なって、失われた国となってしまいました。

 私たちが今日の箇所から学ぶことができるのは、主との関係を第一にすること、自分の働きよりもその関係を一番にすること、です。ソロモンの頑張りによる建築事業が、今読んだような悲惨な結果を招きました。積み上げた栄華は消え去っていきました。いつまでも御霊に導かれていくこと、が永続する祝福の鍵です。


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