終わりの時に生きるキリスト者 − ダニエル書の学び
第十一回 ハルマゲドン A (11章)



以下の文は、リバイバル新聞の連載「終わりの時に生きるキリスト者」の原稿です。


 11章は21節から35節まで、「卑劣な者」アンティオコス・エピファネスに焦点を絞っています。彼は策略によって王位を得、まやかしによってエジプトに攻め入り支配し、その帰る途中でユダヤ人たちを殺し、奴隷としました。次のエジプト遠征ではキプロスから来たローマに阻まれて、非常に落胆したエピファネスは、腹いせに、ユダヤ人の徹底したギリシヤ化を行ないました。安息日に、神殿で礼拝しているユダヤ人を打ち、背教したユダヤ人を重んじ、転んだユダヤ人にはギリシヤ神の前で、酒乱と淫乱のパーティーに参加させ堕落させました。そして、祭壇の上にゼウス像を置き、豚をささげさせましたが、これが「荒らす忌むべきもの」と呼ばれています(31節)。彼が行なったことはもちろん、反キリストが大患難のときにユダヤ人に対して行なうことの、予表となっています。


世界最終戦争

 そして36節から、アンティオコス・エピファネスにも当てはまらない、とんでもない王について預言されています。「この王は、思いのままにふるまい、すべての神よりも自分を高め、大いなるものとし、神の神に向かってあきれ果てることを語り、憤り(=大患難)が終わるまで栄える。」ここから反キリスト本人の預言になります。つまり、私たちにとってもまだ将来の話です。

 彼は既存の宗教には見向きもしません(37節)。代わりに「とりでの神」つまり軍事力を神とします(38節)。そして彼に従う者たちに国土を分け与え、世界支配を確立します(39節)。

 このような反キリスト体制の中で、反旗を翻す勢力が出て来ます。まず、エジプトなど北アフリカ諸国が、反キリストと戦いを交えます(40節)。反キリストは多くの国々を倒して、南に向かいます。そして、「麗しい国」イスラエルを踏み荒らします(41節)。けれども、「エドムとモアブ、またアモン人」すなわち、ヨルダン国だけは被害を受けないようです。黙示録12章によると、イスラエルの残された者たちは、そこで養いを受けて、守られるからです。

 反キリストは、北アフリカで戦争を行なっていますが(42−43節)、「東と北からの知らせ」が彼を脅かします(44節)。そこで、彼はエルサレムに本営を張って、最後の戦いを交えます。しかし、主イエス・キリストがその時に来られて、反キリストと諸国の軍隊を、みことばの剣でことごとく滅ぼされます。イスラエルの地は文字通り血の海となり、死体の山が出来ます(45節。黙示録19章後半参照)。

 私たちは、ハルマゲドンの戦いの預言と、また歴史によって、世界にあるいくつかの勢力圏を見ることができます。一つは「西洋」です。キリストの福音がヨーロッパに伝わった後、キリスト教はギリシヤ・ローマ化されて、その純粋さを失いました。いわゆる「ユダヤ・キリスト教文明」と呼ばれる大きな勢力圏が歴史の中に出現し、現在では、アメリカを中心にこの支配が全世界に行き届いています。「キリスト教国」という名を取ったギリシヤ・ローマ世界は、反キリストを出現させる素地を作っています。

 次に、「周辺イスラム諸国」があります。「南の王」はエジプト、「ルブ」はリビア、「クシュ」は現在のエチオピアとスーダンですが、これらはみな北アフリカのイスラム諸国です。そして、「東」からの知らせとありますが、エゼキエル書38章には、ペルシヤ(現在のイラン)がイスラエルへの侵攻に関わることが預言されています。そして「ロシア」の存在があります。「北からの知らせ」がそれです。同じくエゼキエル38章によると、ロシアを中心にした連合軍がイスラエルを攻めます。さらに、「アジア」もほんの少しですが、視野に入っているでしょう。「東からの知らせ」また、黙示録16章の「日の出るほうから来る王たち」に、アジア諸国が含まれているかもしれません。

 つまり、西欧帝国主義の長である反キリストが世界総統となり、その支配下で反旗を翻すイスラム諸国があり、またロシアの侵攻とアジアの関与もあり、世界戦争が起きます。彼らは互いに敵対しながらも、イスラエルに攻め入ることおいては一致しています。「地のすべての国々は、それ(エルサレム)に向かって集まって来よう。」(ゼカリヤ12:3)とあるとおりです。


最後のパズルは埋められた

 最近、ケーブルで放映された「バンド・オブ・ブラザーズ」など、第二次世界大戦の映画をいくつか見る機会がありました。そこで、改めて驚いたのは、その戦争舞台が、ここダニエル書で預言されている場所と、ほとんど同じであることです。ナチス・ドイツの台頭、ロシアとの交戦、ヨーロッパで侵攻、アメリカ参戦、そして北アフリカ戦線がありました。日本は、どんどん西へ進軍しましたが、それは「東からの知らせ」とも合致します。もちろん、当時の為政者たちが聖書預言を念頭に置いて、情勢を変化させるなどできるはずがありません。彼らの意図に関わらず、世界は聖書通りに動いていたのです。

 しかし、ハルマゲドンの戦いに匹敵させるには、ただ一つ、けれども決定的に欠けていたものがありました。それは、「イスラエル」と「周辺イスラム・アラブ諸国」です。そのときはまだ、ユダヤ人が大量移住している途中であり、イスラエル国は存在しませんでした。しかし、1948年に建国されてから、第二次世界大戦では目立たなかったアラブ諸国がイスラエルに敵対することによって、中東地域が全世界にとって重い石となりました。こうして、「最後のパズルの一片」が埋められることになりました。

 ハルマゲドンの戦いが起こるために必要な要素は、ほとんどすべて整っています。そして、ちょうど一年前に米同時多発テロが起き、アメリカは今、イラク攻撃を控えています。日本、また世界の人々は、自分たちには到底把握できないこのような事態に対して、「テロの連鎖を絶ち切らなければならない」と叫び、平和へ思いを加速的に増し加えています。けれども、ここに大きな罠があります。反キリストは、このような世界秩序の崩壊の危機に面している時に、天才的な政治手腕をもって紛争の解決を与えるからです。まさに「救世主」的な存在です。そして、突如として破滅をもたらし、世界は一気にハルマゲドンの戦いの中に突入します。

 私たちの平和と救いはイエス・キリストのみです。「ですから、あなたがたは、心を引き締め、身を慎み、イエス・キリストの現われのときあなたがたにもたらされる恵みを、ひたすら待ち望みなさい。」(1ペテロ1:13)


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