キリスト教は一神教だから排他的?

日本の方々がキリスト教に触れると、一神教の排他性を言及する人が多いです。その排他性のゆえに対立が起こっているのだから、一つのものだけを信仰するのは危険だ、と考えています。


真実な愛

けれども、人間としての社会生活をある程度送っている人であれば、誰でも排他性を持たずして生きていることはないことを気づくべきでしょう。キリスト教の神は、「愛」であり「義」であると信じています。真実な愛は必ず排他的です。恋愛において二股をかけたら、それは裏切りであり、相手をただ弄んでいるだけの自己中心的なものです。どんなに人徳のある人物であっても、他の人々に対する親切と、自分の家族に見せる優しさには、当然ながら歴然とした差があり、両者は次元の異なるものです。もし全ての人を等しく愛しているという人がいれば、その愛こそ空疎なもので、やはり自己中心的と言わざるを得ないでしょう。

キリスト教の神は、この真実の愛を持っておられます。「わたしは妬む神である」とご自分を紹介されています。ご自分と、ご自分を信じる者たちを、夫と妻の関係に例えておられます。婚姻のような契約に基づく、忠誠と真実に基づく愛について話しています。

したがって、この神を信じるとはあくまでも自分自身がこの方のみを特別に信じていくのであって、他の人々に強要していくものではありません。夫のみを愛し、従う妻が、どうして他の人々に対して同じ忠誠を強要することができるでしょうか?そして一人の夫のみを愛している女性が、他の人々に親切にすることができないのでしょうか?排他的な愛だからこそ、その人格的な愛が深化して、他の人々に対してより親切にしていくことができるのです。

キリストが語られた最高の命令とは、「神は唯一である。心を尽くし、思いを尽くし、力を尽くして主なる神を愛しなさい。」と、「自分自身のように隣人を愛しなさい。」でした。神と人という縦の関係にある自己が確立しているからこそ、人と人という横の関係を正すことができるのです。

正義の普遍性

そして、義または正義について考えてみましょう。それぞれの文化や社会、また状況に即した神を選び取り、一つだけに拘らないという生き方が果たして、まっとうな人生を歩めるのでしょうか?人間関係でさえ、自分の意見や個を持たずに、対人関係の調整だけで生きる人のことを「八方美人」と言います。八方美人は、自分がよく思われたいという恐れがあるから、そうしているのであり、はやり自己中心的です。自分を突き動かす信念や情念があるからこそ、真実に付き合うことができるのであり、信念は当然ながら排他性が伴っています。

もし、正義というのが相対的であれば、人間は混乱した世界で生きるしかありません。ある人が「これが正義だ」と思えば、例えば殺人をして良いのでしょうか?どんなに原始的な生活をしていて殺し合いが絶えず行われている社会であっても、それは「自分の仲間が殺されたから」という理由で殺しているのであって、やはり「殺人は悪だ」という価値観に基づいているのです。この普遍の価値観こそ、唯一の正義、つまり唯一の神を指し示しているのではないでしょうか?

ある教授は、「絶対真理というものはない。すべてが相対である。それぞれが真実だと思っているものが真実なのだ。」と大学の授業の中で教えました。そこである学生が、授業中に立ち上がり、教壇のところに行き、教授を平手で打ち、教授の講義ノートをびりびりに破りました。教授は怒りました。「何をするのか!」と。学生は答えました。「今、自分の内にのみ真実があると言ったではないですか。」

排他性のない真実や正義こそ、むしろ無秩序や争いを引き起こすのです。

生きることの問いかけ

私たちキリスト者が、「神は唯一であり、救いも唯一、キリストによってのみである。」と言っているのは、小難しい宗教論議の中での信仰告白ではありません。表面的な調整や、頭の整理の中での帳尻合わせでもありません。自分の人生の根幹部分における問いかけの結果、告白しているものです。

自分はなぜ生きているのか?
自分はどうしてこの地上に生まれてきたのか?
死んだら自分はどうなるのか?

この三つの問いかけに対して、真正面から答えようとしているのです。これが、どうして排他的にならないでいることができるでしょうか?絶望せずに、かえって平安と希望をもって自分をさらに一日生かしていくものは、当然、不動のものであり、不変のものであり、あらゆるものを超越していなければなりません。「空気を吸う」「水を飲む」というのと同じぐらい、生きるための必然なのです。

この観点から、ぜひキリスト教を考えてみてください。いや、イエス・キリストを知ってみてください。

 イエス・キリストとは誰ですか



(参考記事:一神教は排他的で多神教は寛容という虚構


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