「イスラエル建国史」滝川義人著

重厚な建国の歴史紹介

先の、「サイクス=ピコ協定」についての書籍の紹介で、時のユダヤ人の離散と帰還についても触れましたが、ここで思い出したのが、ハーベストタイム・ミニストリーズ出版の冊子で連載された、以下の「イスラエル建国史」です。

「イスラエル建国史」バックナンバー

紀元後70年のローマによるエルサレム破壊によって離散したユダヤ人が、どのように離散した地で社会を形成し、それから近代に入り、祖国帰還が起こったかを概観することができます。この重厚な内容を無料で読めるのは、凄いです。

BFPのティーチングレター「奇跡の国-イスラエル -前編-」から

ちなみに、以前紹介した、物語調の本「イスラエル建国の歴史物語」が読み易いと思います。そして、しっかりとイスラエル近現代史を知りたい方は、邦訳されたものとしては「イスラエル全史」をおすすめです。

左翼と陰謀論の反シオニズムには注意 続きを読む 「イスラエル建国史」滝川義人著

「サイクス=ピコ協定 百年の呪縛」②

サイクス=ピコ協定 百年の呪縛前記事①においては、本書の前置きの話で終わってしまいましたが、ここから中身に入ります。

ダニエル書にある世界帝国

私は、この本に衝撃を受けたのは、まず、ダニエルの見た幻にある「世界帝国の姿」の続きを見たからです。ダニエルは、ユダの国とエルサレムが神によって引き抜かれた後の、異邦の諸国、殊に世界帝国となった国々の興亡の幻を見ました。ネブカデネザルは、金属によってできた人の像であり、金がバビロン、銀がペディヤ・ペルシヤ、青銅がギリシヤ、鉄がローマ、そしてその後の世界はローマの影響を残しながら緩くつながり統合できていない、粘土と鉄のまじりあった姿を描いています。足の指はもちろん十本です。

The great image that God revealed to Nebuchadnezzar in a dream was interpreted by the prophet Daniel. Each section represents a world-ruling superpower. Each succeeding metal is less valuable, but each succeeding metal is stronger, as each empire was more powerful than the last.
The great image that God revealed to Nebuchadnezzar in a dream was interpreted by the prophet Daniel. Each section represents a world-ruling superpower. Each succeeding metal is less valuable, but each succeeding metal is stronger, as each empire was more powerful than the last.

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「サイクス=ピコ協定 百年の呪縛」①

サイクス=ピコ協定 百年の呪縛先日、池内恵氏による「サイクス=ピコ協定 百年の呪縛」を完読しました。

「いまや中東の地は、ヨーロッパへ世界へと難民、テロを拡散する「蓋のないパンドラの箱」と化している。列強によって無理やり引かれた国境線こそが、その混乱を運命づけたとする説が今日では主流だ。しかし、中東の歴史と現実、複雑な国家間の関係を深く知らなければ、決して正解には至れない。危機の本質を捉える緊急出版!」(新潮社のウェブサイトから)

終末論や陰謀論をまともに扱ったイスラム研究者

その前に、私の読書の中での池内恵氏との出会いを紹介したいと思います。その付き合いは、2001年の米国同時多発テロの起こった後に出版された、「現代アラブの社会思想 ― 終末論とイスラーム主義(本ブログ記事)」からでした。今でさえ、現実の世界趨勢として、差し迫った危機として一般社会でも認知されていますが、当時、「終末論」や「イスラム主義」を直球で、まともに取り扱っていたのは見ることはなく、私は、アメリカの聖書教師によるものしか知りませんでした。池内氏はキリスト者でもなく、ムスリムでもないのに、どうして、等身大のイスラムの世界をこれほどまで精緻に描写できるのか、とても不思議でありました。 続きを読む 「サイクス=ピコ協定 百年の呪縛」①

「お金と信仰」

この本を先週、読みました。
okane_shinko
お金と信仰 高橋秀典著
立川福音自由教会牧師

~ 人は「お金」とどう向き合えばよいのか。
キリスト教会で、あまり語られないこの課題に、元証券マンで現在は牧師として活躍する著者が、聖書から、また日本社会の経済状況から答える。~

以下に、元になっている記事の一部を読むことができます。

雑誌「リバイバル・ジャパン」新連載 お金と信仰
第一回 職業と神の召し

著者、高橋秀典牧師は、フェイスブックでお知り合いになって初めてなのですが、その書かれていることがとても魅力的で、引きこまれる言葉を持っておられることを感じていました。そして、経済やお金の動きにはどうしても疎く、引きこもりがちな私も、現実の世界で生きておられる兄弟姉妹が教会にも集っており、今の経済や政治を、キリスト者としてどのように生きるのか?という問題意識もあり、買いました。 続きを読む 「お金と信仰」

距離を置きたいような神学論議

私は、これまで、警戒しているというか、適当に距離を置いて見ている神学議論があります。その一例が、こちらの神学者のブログ記事です。こんな文言があります。「オープン神論では、全能の神は世界に対するご自分の支配を自発的に制限し、被造物が自由意志をもって自分の行動を選択できるようにされたと考えます。」(引用元)つまり、「神は支配者」という真理に制限をかけているのです。私は正直、このような発言に怒りさえ抱くことがあります。聖書が明言している真理について、人間の論理や感情でそれをばっさりと否定していくように見える文言が多いからです。

しかし、先日、ある牧師さんとよい交わりができました。結局、私たち日本人キリスト者(特に牧師のような教職者)は、「欧米の神学、欧米のキリスト教ばかりに目を向けている」というもっと前提になっている問題があるとのご指摘。プロテスタントの宗教改革以降存在している落とし穴があります。例えば、この記事において、

1.神は全能である。
2.神は善である。
3.世界には悪が存在する。

ということについて、問いかけをしています。しかし、その大前提に「一貫した合理性、前提から結論までつなげる論理をほしがっている」飢え渇きがあるのです。それで、従来の、全ての事象に対して神を第一原因に結びつけていくカルビン的な世界観なのか、それともそれをオープンにするべきかという二者択一の議論をしているのです。 続きを読む 距離を置きたいような神学論議

「ユダヤ人陰謀説―日本の中の反ユダヤと親ユダヤ」

Jews in Japanese Mind 「ユダヤ人陰謀説―日本の中の反ユダヤと親ユダヤ」

ご紹介する本はかなり前に出版されたものですが、日本における反ユダヤと親ユダヤについて非常に多くの文献を揃えた良書です。まずは「内容の紹介」から:

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日本人はなぜ、ユダヤ人が「好き」なのか!?

実際に接する機会はほとんどないのに、左翼も右翼も、知識人もジャーナリストもユダヤ人を語りたがる。その馬鹿げた空想の背景にあるのは、深刻な精神荒廃だ!

ユダヤ人に対する日本人の態度は日本の文化に深く根ざして、形づくられてきたものである。ユダヤ人の存在を知る以前すでに、日本には外国人との関係のもちかたに一定の形ができあがっていた。それが日本人がやがてユダヤ人について想像するようになったとき、その中身を決定する基盤になってきた。
歴史をとおして見ると、日本では外国人は畏怖の目で見られるか、あるいは反対に軽蔑の目で見られるか、いつもそのどちらかだった。
つまりよそ者は、恩恵をほどこす神々と見なされることもあれば、脅威をもたらす悪鬼であることもある。このように相反する感情が共存してきたことには、とても大きな意味があるだろう。――
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目次はこちらのサイトをクリックしてください。 続きを読む 「ユダヤ人陰謀説―日本の中の反ユダヤと親ユダヤ」

邦訳「第三の標的」!

去年、ご紹介した本「The Third Target(第三の標的)」が、なんと日本語に翻訳されました!これは絶対に、みなさん注文してください。一年前のですが、まだ現在進行中のイスラム国とヨルダンの関係を読むことができます。
theThirdTarget
第三の標的
著 : ジョエル・C・ローゼンバーグ
定価 : 1,000円(+税)

ちなみにたった今、その続編であるThe First Hostage(第一の人質)がちょっと前に出版されて早速Amazon.co.jpで注文して、到着するのを待っている最中です。

「神はなぜ戦争をお許しになるのか」③

前々記事:「神はなぜ戦争をお許しになるのか」
前記事:「神はなぜ戦争をお許しになるのか」②
関連記事:「悪という現実に付き合う神」

神はなぜ戦争をお許しになるのか読後の感想の続きです。今回は、第一章「神の御前における人間」に書かれていることに注目してみたいと思います。

それを一言でいうなら、単に「戦争をやめてください」という祈りは聞かれない、ということです。平和を求める一見正しい祈りが、紛れもなく聞かれなかったという事実に、直球で体当たりしている説教です。

この説教は、第二次世界大戦が勃発したばかりに行ったものです。第一次世界大戦の時に多くの人が祈りましたが、戦争は起こってしまった。そして第二の戦争が起こり始めていた。「なぜ、神は私たちの捧げた祈りを聞いてくださらなかったのか?」と疑問に思っています。

第三次世界大戦の兆候

これはあまりにも生々しく、私たちに迫っている非常に大きな霊的危機です。ローマ法王が先月、パリ同時多発テロに言及して、「第三次世界大戦の断片は既に始まっているかもしれない」と言ったのです。(BBCの記事)この中でイスラム国に武力行使をすることは正当化されると述べ、キリスト者を含む大量の人が虐殺されていると話しています。そして以下の記事は、イスラム思想研究者によるものですが、確かに第三次世界大戦は既に始まっていると言いうることを書いています。

イスラム国との戦いは第三次世界大戦か?

戦争に反応する祈り 続きを読む 「神はなぜ戦争をお許しになるのか」③

「神はなぜ戦争をお許しになるのか」②

神はなぜ戦争をお許しになるのか神はなぜ戦争をお許しになるのか」の続きです。完読しました。第二次世界大戦の始まる頃に語られた、ロイドジョンズの説教はあまりにも、今日の教会の状況と似ており、身に迫るものがありました。そして、私が聖書を読んでいて、クリスチャンになって以来、その中にある戦争の記述の意味を、これほどはっきり知ったことはなかった、と言っても過言ではないぐらい、読みながら、圧倒的な神の臨在がありました。そこで教わったことはあまりにも多いのですが、かいつまんで、少しずつ話していきたいと思います。

戦争=心の鏡

私は、拙書も出しているぐらい、聖書預言や神の持っておられる終末のご計画に関心を持ち、その学徒でありました。しかし、主の再臨を語りながら、それが近づいていると話しながら、自分は安全圏の中で語っているから語れているのではないか?という思いがよぎりました。事実、終末を感じさせる重い事件が数多く起きました。世界情勢はもちろんのこと、キリスト教会の中で起こっていること、それから身近なところでも起こって、改めてテサロニケ人への手紙など、終わりの日に生きるキリスト者の姿を見ると、これほど重いテーマを彼らは抱えて、なおのこと希望と信仰と愛を抱いていたのだ、ということに気づきました。私が、唯一、キリストのみに望みを置いていたのだろうか?その問いが続き、ますます聖められなければいけないと思うようになりました。 続きを読む 「神はなぜ戦争をお許しになるのか」②

「神はなぜ戦争をお許しになるのか」

下の本を先ほどオンラインで注文しました。

「神はなぜ戦争をお許しになるのか」ロイド・ジョンズ著

神はなぜ戦争をお許しになるのか

注文したきっかけは、次の書評を読み、とても共感できたからです。

「D・M・ロイドジョンズが「戦争」について書いた本『神はなぜ戦争をお許しになるのか』(いのちのことば社)から、いろいろと教えられている。同書は、1939年10月に著者がロンドンのウェストミンスターチャペルで5回にわたって行った説教を書き起こしたもの。その前月には、ナチスドイツのポーランド侵攻があり、そこから戦火がヨーロッパ全体、世界全体に広がっていくという、非常に緊迫した状況の中で語られたものだ。

ロイドジョンズはここで、戦争は罪の結果の一つ、罪の現れの一つ、であるとして、「戦争を起こさないでください」と神に願うのは、あらゆる罪の現れのうちの、ある特定の結果が起こらないよう神に願うことだとし、その願いには自分本位さが含まれているとする。

つまり、罪そのものには関心を抱かず、一つの罪の結果──それは私たちの安逸な生活を破壊する──に関心を持ち、それが起こらないように願うという姿だ。ロイドジョンズは、聖書から、神が戦争を許されるとする。

同書を読み、日本が戦後70年の間に積み上げてきた罪について思った。日本は確かに、「戦争」はしなかった。しかし、罪がなかったわけではない。「平和」の下で積み重ねられてきた罪がある。金や性を偶像化する罪。この平和の中で、キリストの福音に心を開くこともなかった。

本質を言えば、憲法9条によって日本の平和が守られてきたわけではない。神の憐みによって守られてきたにすぎない。私たちが今なすべきことは、先の戦争の反省もさることながら、戦後にこの国が積み上げてきた罪の現実を見つめ、とりなし、地の塩としての働きをすることなのだろうと思う。」(引用元はこちら。太字は私によります。) 続きを読む 「神はなぜ戦争をお許しになるのか」