先日、池内恵氏による「サイクス=ピコ協定 百年の呪縛」を完読しました。
「いまや中東の地は、ヨーロッパへ世界へと難民、テロを拡散する「蓋のないパンドラの箱」と化している。列強によって無理やり引かれた国境線こそが、その混乱を運命づけたとする説が今日では主流だ。しかし、中東の歴史と現実、複雑な国家間の関係を深く知らなければ、決して正解には至れない。危機の本質を捉える緊急出版!」(新潮社のウェブサイトから)
終末論や陰謀論をまともに扱ったイスラム研究者
その前に、私の読書の中での池内恵氏との出会いを紹介したいと思います。その付き合いは、2001年の米国同時多発テロの起こった後に出版された、「現代アラブの社会思想 ― 終末論とイスラーム主義(本ブログ記事)」からでした。今でさえ、現実の世界趨勢として、差し迫った危機として一般社会でも認知されていますが、当時、「終末論」や「イスラム主義」を直球で、まともに取り扱っていたのは見ることはなく、私は、アメリカの聖書教師によるものしか知りませんでした。池内氏はキリスト者でもなく、ムスリムでもないのに、どうして、等身大のイスラムの世界をこれほどまで精緻に描写できるのか、とても不思議でありました。 続きを読む 「サイクス=ピコ協定 百年の呪縛」①