2列王記8−10章 「反逆の器」


アウトライン

1A ハザエル 8
   1B イスラエル王の興味 1−6
   2B 王殺し 7−15
   3B ユダ国の弱体 16−24
   4B アハブの道 25−29
2A エフー 9−10
   1B 謀反 9
      1C 二人の王の殺害 1−20
      2C イゼベルの最期 21−37
   2B アハブ家の抹消 10
      1C 子どもたち 1−17
      2C バアル信仰者 18−27
      3C ヤロブアムの道 28−36

本文

 列王記第二8章を開いてください、今日は8章から10章までを学びます。ここでのテーマは、「反逆の器」です。8章から10章には、主要人物が二人出てきます。シリヤの王ハザエルと、イスラエルの将軍エフーの二人です。ここの箇所を理解するには、私たちは列王記第一のエリヤに対する、神のことばを思い出さなければいけません。

 エリヤがバアルの預言者450人と対決し、彼らを殺してから、イゼベルの脅し文句一言によって、彼はシナイ山まで、四十日、四十夜かけて逃げました。そこで主が、「あなたはここで何をしているのか?」と聞かれて、彼はその質問には答えず、「私は万軍の神、主に熱心にお仕えしたのに、イスラエルの人々はあなたの契約を捨てました。私ひとりだけが残っていて、彼らは私のいのちさえ取ろうとねらっています。」と言いました。そこで主がエリヤに答えられました。列王記第一1915節です。「主は彼に仰せられた。「さあ、ダマスコの荒野へ帰って行け。そこに行き、ハザエルに油をそそいで、アラムの王とせよ。また、ニムシの子エフーに油をそそいで、イスラエルの王とせよ。また、アベル・メホラの出のシャファテの子エリシャに油をそそいで、あなたに代わる預言者とせよ。ハザエルの剣をのがれる者をエフーが殺し、エフーの剣をのがれる者をエリシャが殺す。」エリヤが自分は預言者なのに滅ぼされそうになっていると嘆いたのですが、主は、「わたしは、必ずアハブ家のものたちを滅ぼす」と約束されていたのです。

 その器として、その時のシリヤの王ベン・ハダデに代わってハザエルが王となり、イスラエルを攻めて来ること、そしてエフーがイスラエルの王になることによって、神に背を向けているアハブ家が滅ぼされること、そして、神のこのようなさばきのために、エリヤに代わってエリシャが預言者となることを前もって伝えられたのでした。エリヤは直接、ハザエルとエフーに油を注ぐことはありませんが、エリヤの霊の二倍の分け前が与えられたエリシャによって、神のこの約束が実現します。

1A ハザエル 8
1B イスラエル王の興味 1−6
8:1 エリシャは、かつて子どもを生き返らせてやったあの女に言った。「あなたは家族の者たちと旅に立ち、あなたがとどまっていたい所に、しばらくとどまっていなさい。主がききんを起こされたので、この国は七年間、ききんに見舞われるから。」

 この女はシュネムの女のことです。エリシャのために、自分たちの上に彼が休んだり、勉強することができるような部屋を作った人です。エリシャの祈りによって男の子が与えられましたが、彼がおそらくは熱射病で死に、けれども、その子がエリシャの祈りによって生き返りました。

 今、シリヤによるサマリヤの町の包囲が解かれて、安堵していた時だったと思われますが、再び七年間の厳しいききんがやって来るようです。しかも、主がそれを起こされるようですから、イスラエルに対する神のさばきが徐々に始まっていることに気づきます。

8:2 そこで、この女は神の人のことばに従って出発し、家族の者を連れてペリシテ人の地に行き、七年間滞在した。8:3 七年たって後、彼女はペリシテ人の地から戻って来て、自分の家と畑を得ようと王に訴え出た。

 ペリシテ人の地は平地ですから、比較的肥沃だったのでしょう。その地に七年間いましたが、その間に自分たちの家と土地が他の人たちに取られてしまったようです。この家族は裕福であったことを思い出してください、大きな財産を奪い取られてしまいました。

8:4 そのころ、王は神の人に仕える若い者ゲハジに、「エリシャが行なったすばらしいことを、残らず私に聞かしてくれ。」と言って、話していた。

 この王はヨラムのことです。彼はエリシャを基本的に嫌っていましたが、数々の奇蹟には好奇心を抱いていたようです。あの、らい病にかかったゲハジに、王が尋ねています。

8:5 彼が王に、死人を生き返らせたあのことを話していると、ちょうどそこに、子どもを生き返らせてもらった女が、自分の家と畑のことについて王に訴えに来た。そこで、ゲハジは言った。「王さま。これがその女です。これが、エリシャが生き返らせたその子どもです。」8:6 王が彼女に尋ねると、彼女は王にそのことを話した。そこで、王は彼女のためにひとりの宦官に命じて言った。「彼女の物は全部返してやりなさい。それに、彼女がこの地を離れた日から、きょうまでの畑の収穫もみな、返してやりなさい。」

 神さまの時ですね。主が、ちょうど良い時に、ちょうど良いことを行なってくださる方であることがわかります。主を愛する者には、すべてのことを働かせて益としてくださる方であることを、私たちは知っています(ローマ8:28)。

2B 王殺し 7−15
 そして話は、シリヤに移ります。

8:7 エリシャがダマスコに行ったとき、アラムの王ベン・ハダデは病気であったが、彼に「神の人がここまで来ました。」という知らせがあった。8:8 王はハザエルに言った。「贈り物を持って行って、神の人を迎え、私のこの病気が直るかどうか、あの人を通して主のみこころを求めてくれ。」8:9 そこで、ハザエルはダマスコのあらゆる良い物をらくだ四十頭に載せ、贈り物として携えて、彼を迎えに行った。彼は神の人の前に行って立ち、そして言った。「あなたの子、アラムの王ベン・ハダデが、『この病気は直るであろうか。』と言ってあなたのところへ私をよこしました。」8:10 エリシャは彼に言った。「行って、『あなたは必ず直る。』と彼に告げなさい。しかし、主は私に、彼が必ず死ぬことも示された。」8:11 神の人は、彼が恥じるほど、じっと彼を見つめ、そして泣き出したので、8:12 ハザエルは尋ねた。「あなたさまは、なぜ泣くのですか。」エリシャは答えた。「私は、あなたがイスラエルの人々に害を加えようとしていることを知っているからだ。あなたは、彼らの要塞に火を放ち、その若い男たちを剣で切り殺し、幼子たちを八裂にし、妊婦たちを切り裂くだろう。」8:13 ハザエルは言った。「しもべは犬にすぎないのに、どうして、そんなだいそれたことができましょう。」しかし、エリシャは言った。「主は私に、あなたがアラムの王になると、示されたのだ。」

 エリシャは、預言をしました。そして、その預言の内容はハザエルには、到底及びもつかないことでした。主君ベン・ハダデの下で忠実に働いている自分が、どうしてそのような虐殺行為をイスラエルに対して働くことができるのか?と思いました。けれども、ハザエルは帰ったら、彼の人柄が変貌してしまったのではないかと思われるようなことを行ないます。

8:14 彼はエリシャのもとを去り、自分の主君のところに帰った。王が彼に、「エリシャはあなたに何と言ったか。」と尋ねると、彼は、「あなたは必ず直る、と彼は言いました。」と答えた。8:15 しかし、翌日、ハザエルは毛布を取って、それを水に浸し、王の顔にかぶせたので、王は死んだ。こうして、ハザエルは彼に代わって王となった。

 「人は見かけに拠らない」とよく言われますが、それは神の真実を尽いています。「人の心は何よりも陰険で、それは直らない。だれが、それを知ることができよう。(エレミヤ17:9」とエレミヤ書にあります。十代の若者が、いや今や小学生までが陰惨な犯罪を犯す事件が多発していますが、周囲の人は口を揃えて、「いや、あの子はおとなしくて、学校でも良い成績取って、・・・信じられない。」と言います。けれども、それは聖書が人間についていっていることが、そのまま起こっているにしか過ぎないのです。人間は根本的に邪悪であり、神の一方的なあわれみと、聖霊の働きなしには、どのように立派に生きている人に見えても、徹底的に堕落する可能性はあるのです。こうして、ハザエルがシリヤの王となりました。

3B ユダ国の弱体 16−24
8:16 イスラエルの王アハブの子ヨラムの第五年に・・ヨシャパテがユダの王であったが・・ユダの王ヨシャパテの子ヨラムが王となった。8:17 彼は三十二歳で王となり、エルサレムで八年間、王であった。

 前にも何度か説明しましたが、イスラエルとユダの両国の王の名前が一緒だったときがあります。イスラエルの王ヨラムと、ユダの王ヨラムです。

8:18 彼はアハブの家の者がしたように、イスラエルの王たちの道に歩んだ。アハブの娘が彼の妻であったからである。彼は主の目の前に悪を行なったが、8:19 主は、そのしもべダビデに免じて、ユダを滅ぼすことを望まれなかった。主はダビデとその子孫にいつまでもともしびを与えようと、彼に約束されたからである。

 今よんだように、アハブの道を歩んだのは、イスラエルではなくユダでありました。こんなとんでもないことが起こった理由は、ユダの王ヨラムは、アハブの娘と結婚したからです。そしてヨラムがアハブの娘と結婚した理由は、ヨラムの父ヨシャパテが、アハブ王と親交を深めていたからです。

 ヨシャパテは列王記においても歴代誌においても、主を愛する、主の道にしたがう善い王として描かれています。ところが彼には問題があって、この極悪王アハブに奇妙な好奇心を抱いていたために、その関係を持っていました。このことによって、彼自身は無傷だったでしょう、けれども子どもたちは違います。ヨシャパテの子ヨラムは、アハブの娘と結婚したために、ユダに罪と汚れを持ち込んでしまったのです。パウロが言いました。「ほんのわずかのパン種が、粉のかたまり全体をふくまらせることを知らないのですか。(1コリント5:6」そして、「不信者と、つり合わぬくびきをいっしょにつけてはいけません。正義と不法とに、どんなつながりがあるのでしょう。光と暗やみとに、どんな交わりがあるのでしょう。(2コリント6:14」と言いました。

8:20 ヨラムの時代に、エドムがそむいて、ユダの支配から脱し、自分たちの上に王を立てた。8:21 ヨラムは、すべての戦車を率いてツァイルへ渡って行き、夜襲を試み、彼を包囲していたエドムと戦車隊長たちを打ったので、その民は自分の天幕に逃げ帰った。8:22 しかしなお、エドムはそむいて、ユダの支配から脱した。今日もそうである。リブナもまた、その時にそむこうとした。

 ユダの国が少しずつ弱体化しているのが分かります。弱体化とユダの霊的堕落は正比例しています。

8:23 ヨラムのその他の業績、彼の行なったすべての事、それはユダの王たちの年代記の書にしるされているではないか。8:24 ヨラムは彼の先祖たちとともに眠り、先祖たちとともにダビデの町に葬られた。彼の子アハズヤが代わって王となった。

 ユダの王ヨラムは、アハズヤに取って代わりました。

4B アハブの道 25−29
8:25 イスラエルの王アハブの子ヨラムの第十二年に、ユダの王ヨラムの子アハズヤが王となった。8:26 アハズヤは二十二歳で王となり、エルサレムで一年間、王であった。彼の母の名はアタルヤといい、イスラエルの王オムリの孫娘であった。

 つまり、アハブの娘ということです。アハブの父がオムリだからです。ヨラムが結婚していたアハブの娘の名はアタルヤでした。

8:27 彼はアハブの家の道に歩み、アハブの家にならって主の目の前に悪を行なった。彼自身アハブ家の婿になっていたからである。8:28 彼はアハブの子ヨラムとともに、アラムの王ハザエルと戦うため、ラモテ・ギルアデに行ったが、アラム人はヨラムに傷を負わせた。8:29 ヨラム王は、アラムの王ハザエルと戦ったときにラマでアラム人に負わされた傷をいやすため、イズレエルに帰って来た。ユダの王ヨラムの子アハズヤは、アハブの子ヨラムが病気であったので、彼を見舞いにイズレエルに下って行った。

 かつて、祖父ヨシャパテがそうであったように、アハズヤはイスラエルの王と仲良くしていました。共同で、シリヤの王がラモテ・ギルアデを攻めて来るのを引きとめようとしています。しかし、イスラエルの王ヨラムは傷を負いました。それで、王の宮殿があるイズレエルに戻ってきてそこで静養しました。その時に、ユダの王アハズヤが見舞いに来たのです。

 このように、イスラエルだけでなくユダもいっしょになって、アハブ家の道にならって悪を行なっていたような状況がありました。そこで、神がさばきの器として、エフーに油を注がれます。

2A エフー 9−10
1B 謀反 9
1C 二人の王の殺害 1−20
9:1 預言者エリシャは預言者のともがらのひとりを呼んで言った。「腰に帯を引き締め、手にこの油のつぼを持って、ラモテ・ギルアデに行きなさい。」

 師匠エリシャが、学徒である預言者に、ラモテ・ギルアデに行きなさいと命じています。「腰に帯を引き締め」というのは、戦争や仕事をするときに、男たちが動きやすいように、衣を引き上げて、腰のところで帯で引き締めることを行なっていました。だから、これから預言者が動きやすい格好にさせています。

9:2 そこに行ったら、ニムシの子ヨシャパテの子エフーを見つけ、家にはいって、その同僚たちの中から彼を立たせ、奥の間に連れて行き、9:3 油のつぼを取って、彼の頭の上に油をそそいで言いなさい。「主はこう仰せられる。わたしはあなたに油をそそいでイスラエルの王とする。」それから、戸をあけて、ぐずぐずしていないで逃げなさい。

 エフーは、ラモテ・ギルアデでシリヤの王ハザエルと戦っていました。そこに行って、彼に油を注いで、それからすぐに逃げなさい、と言っています。エフーがすぐに行動を開始して、その戦いに巻き添えを食うようなことがないようにするためでしょう。

9:4 そこで、その若い者、預言者に仕える若い者は、ラモテ・ギルアデに行った。9:5 彼が来てみると、ちょうど、将校たちが会議中であった。彼は言った。「隊長。あなたに申し上げることがあります。」エフーは言った。「このわれわれのうちのだれにか。」若い者は、「隊長。あなたにです。」と答えた。9:6 エフーは立って、家にはいった。そこで若い者は油をエフーの頭にそそいで言った。「イスラエルの神、主は、こう仰せられる。『わたしはあなたに油をそそいで、主の民イスラエルの王とする。9:7 あなたは、主君アハブの家の者を打ち殺さなければならない。こうしてわたしは、わたしのしもべである預言者たちの血、イゼベルによって流された主のすべてのしもべたちの血の復讐をする。9:8 それでアハブの家はことごとく滅びうせる。わたしは、アハブに属する小わっぱから奴隷や自由の者に至るまでを、イスラエルで断ち滅ぼし、9:9 アハブの家をネバテの子ヤロブアムの家のようにし、アヒヤの子バシャの家のようにする。9:10 犬がイズレエルの地所でイゼベルを食らい、だれも彼女を葬る者がいない。』」こう言って彼は戸をあけて逃げた。

 預言の内容は、かつてエリヤに対して主が語られていた通りのものでした。アハブが、ナボテ所有のぶどう畑を、彼を殺すことによって盗んだことをきっかけにして、エリヤがアハブにこう言いました。列王記第一2121節からです。「今、わたしはあなたにわざわいをもたらす。わたしはあなたの子孫を除き去り、アハブに属する小わっぱも奴隷も、自由の者も、イスラエルで絶ち滅ぼし、あなたの家をネバテの子ヤロブアムの家のようにし、アヒヤの子バシャの家のようにする。それは、あなたがわたしの怒りを引き起こしたその怒りのため、イスラエルに罪を犯させたためだ。また、イゼベルについても主はこう仰せられる。『犬がイズレエルの領地でイゼベルを食らう。』アハブに属する者で、町で死ぬ者は犬どもがこれを食らい、野で死ぬ者は空の鳥がこれを食らう。」(1列王21:21-24」かつて、ヤロブアム家は、バシャによって粉砕されました。そしてバシャ家もジムリによって滅ぼされました。同じようにアハブ家も滅ぼされる、という預言です。これを実行するのがエフーになります。

9:11 エフーが彼の主君の家来たちのところに出て来ると、ひとりが彼に尋ねた。「何事もなかったのですか。あの気違いは何のために来たのですか。」すると、エフーは彼らに答えた。「あなたがたは、あの男も、あの男の言ったことも知っているはずだ。」9:12 彼らは言った。「あなたは偽っている。われわれに教えてくれ。」そこで、彼は答えた。「あの男は私にこんなことを言った。『主はこう仰せられる。わたしはあなたに油をそそいでイスラエルの王とする。』と。」

 エフーも、またその家来たちも、あの預言者の、走って逃げていくという奇妙な行動にとまどいを覚えていました。家来は「あの気違いは」と彼のことを呼んでいますし、エフーも、話をそらそうとしています。けれども、家来たちの要求に応じて、本当のことを話しました。

9:13 すると、彼らは大急ぎで、みな自分の上着を脱ぎ、入口の階段の彼の足もとに敷き、角笛を吹き鳴らして、「エフーは王である。」と言った。

 上着を脱いで足もとにひいたり、角笛を吹き鳴らすのは、王の就任のときに行なわれていたことです。家来たちは、預言者の言葉を聞いたらすぐに応答しています。エフーも自分が、神の器になったことをすぐに認識したようです。彼らはみな、自分の王ヨラムが行なっていることは、どこかでおかしいと思っていたのでしょう。そこで、預言者がやって来て、すぐに信仰によって、行動するのはこの時であると思ったのでしょう。シリヤのハザエルと同じく、エフーもすぐに行動に移しました。

9:14 こうして、ニムシの子ヨシャパテの子エフーは、ヨラムに対して謀反を起こした。・・ヨラムは全イスラエルを率いて、ラモテ・ギルアデでアラムの王ハザエルを防いだが、9:15 ヨラム王は、アラムの王ハザエルと戦ったときにアラム人に負わされた傷をいやすため、イズレエルに帰って来ていた。・・エフーは言った。「もし、これがあなたがたの本心であれば、だれもこの町からのがれ出て、イズレエルに知らせに行ってはならない。」9:16 それから、エフーは車に乗って、イズレエルへ行った。ヨラムがそこで床についており、ユダの王アハズヤもヨラムを見舞いに下っていたからである。

 ヨラムの謀反をだれかが伝えに行ったら、計略はみな台無しになります。だから、だれも伝えるな、と命じています。

9:17 イズレエルのやぐらの上に、ひとりの見張りが立っていたが、エフーの軍勢がやって来るのを見て、「軍勢が見える。」と言った。ヨラムは、「騎兵ひとりを選んで彼らを迎えにやり、お元気ですかと、尋ねさせなさい。」と言った。

 ヨラムはこの時点で、エフーが謀反を起こしていること、いや、やって来ているのがエフーなのかどうかも知りませんでした。

9:18 そこで、騎兵は彼を迎えに行って言った。「王が、お元気ですかと尋ねておられます。」エフーは言った。「元気かどうか、あなたの知ったことではない。私のうしろについて来い。」一方、見張りは報告して言った。「使者は彼らのところに着きましたが、帰って来ません。」

 ものすごい急用である、と思って、迎えに行った騎兵はエフーの軍勢に参加しています。

9:19 そこでヨラムは、もうひとりの騎兵を送った。彼は彼らのところに行って言った。「王が、お元気ですかと尋ねておられます。」すると、エフーは言った。「元気かどうか、あなたの知ったことではない。私のうしろについて来い。」9:20 見張りはまた、報告して言った。「あれは彼らのところに着きましたが、帰って来ません。しかし、車の御し方は、ニムシの子エフーの御し方に似ています。気が狂ったように御しています。」

 これでエフーであると分かりましたが、まだ彼の謀反には気づいていないようです。

2C イゼベルの最期 21−37
9:21 ヨラムは、「馬をつけよ。」と命じた。馬を戦車につけると、イスラエルの王ヨラムとユダの王アハズヤは、おのおの自分の戦車に乗って出て行き、エフーを迎えに出て行った。彼らはイズレエル人ナボテの所有地で彼に出会った。9:22 ヨラムはエフーを見ると、「エフー。元気か。」と尋ねた。エフーは答えた。「何が元気か。あなたの母イゼベルの姦淫と呪術とが盛んに行なわれているかぎり。」9:23 それでヨラムは手綱を返して逃げ、アハズヤに、「アハズヤ。悪巧みだ。」と叫んだ。

 ここでようやく、ヨラムはエフーの謀反に気づきました。そして、今、彼らは、あのナボテの所有地にいます。

9:24 エフーは弓を力いっぱい引き絞り、ヨラムの両肩の間を射た。矢は彼の心臓を射抜いたので、彼は車の中にくずおれた。9:25 エフーは侍従のビデカルに命じた。「これを運んで行き、イズレエル人ナボテの所有地であった畑に投げ捨てよ。私とあなたが馬に乗って彼の父アハブのあとに並んで従って行ったとき、主が彼にこの宣告を下されたことを思い出すがよい。9:26 『わたしは、きのう、ナボテの血とその子らの血とを確かに見届けた。・・主の御告げだ・・わたしは、この地所であなたに報復する。・・主の御告げだ・・』それで今、彼を運んで行って、主のことばのとおり、あの地所に彼を投げ捨てよ。」

 エフーは、アハブが生きているとき、この侍従とともに王についていったようです。そして、エリヤの言葉を二人とも聞いていました。そして預言者による油注ぎがありました。彼は、自分が神に選ばれた、さばきの器であることを認識していたのです。

9:27 ユダの王アハズヤはこれを見ると、ベテ・ハガンの道へ逃げた。エフーはそのあとを追いかけて、「あいつも打ち取れ。」と叫んだので、彼らはイブレアムのそばのグルの坂道で、車の上の彼に傷を負わせた。それでも彼はメギドに逃げたが、そこで死んだ。9:28 彼の家来たちは彼を車に載せて、エルサレムに運び、ダビデの町の彼の墓に先祖たちといっしょに葬った。9:29 アハズヤはアハブの子ヨラムの第十一年に、ユダの王となっていた。

 アハズヤもまた、アハブ家の血を受け継いでいます。それでエフーは彼も殺しました。

9:30 エフーがイズレエルに来たとき、イゼベルはこれを聞いて、目の縁を塗り、髪を結い直し、窓から見おろしていた。

 イゼベルはまだ生きていました。もうおばあさんになっていたことでしょう。彼女は、自分のこれからの運命を察知していたのでしょうか、目の縁を塗り、髪を結い直して、自分が死ぬことの準備をしているようにさえ見えます。

9:31 エフーが門にはいって来たので、彼女は、「元気かね。主君殺しのジムリ。」と言った。

 ジムリは、王バシャを殺した人物です。けれども、たった七日間で、アハブの父オムリに殺されました。そこでイゼベルは、ジムリの名を使っています。

9:32 彼は窓を見上げて、「だれか私にくみする者はいないか。だれかいないか。」と言った。二、三人の宦官が彼を見おろしていたので、9:33 彼が、「その女を突き落とせ。」と言うと、彼らは彼女を突き落とした。それで彼女の血は壁や馬にはねかかった。エフーは彼女を踏みつけた。

 イゼベルは、こんなにも簡単に死んでしまいました。もうかなり、アハブ家については家臣たちを含めイスラエルの民は、嫌気がさしていたのでしょうか?また、エフーを恐れたからでしょうか、イゼベルの側近の宦官が突き落として、いちころでした。

9:34 彼は内にはいって飲み食いし、それから言った。「あののろわれた女を見に行って、彼女を葬ってやれ。あれは王の娘だから。」

 イゼベルはシドンの王の娘でした。

9:35 彼らが彼女を葬りに行ってみると、彼女の頭蓋骨と両足と両方の手首しか残っていなかったので、9:36 帰って来て、エフーにこのことを知らせた。すると、エフーは言った。「これは、主がそのしもべティシュベ人エリヤによって語られたことばのとおりだ。『イズレエルの地所で犬どもがイゼベルの肉を食らい、9:37 イゼベルの死体は、イズレエルの地所で畑の上にまかれた肥やしのようになり、だれも、これがイゼベルだと言えなくなる。』」

 エフーは、またしてもエリヤの言葉がその通りになったことを確認しています。陰惨な光景ですが、その前にイゼベルが行なったことが、これだけ陰惨なことであったことを物語っています。殺人と盗みの罪を犯したその場所で、このような死に方をしました。

2B アハブ家の抹消 10
 エフーは、王とイゼベルを殺すにとどまりませんでした。アハブ家のいっさいのものを抹消するまで動き続けました。

1C 子どもたち 1−17
10:1 アハブにはサマリヤに七十人の子どもがあった。エフーは手紙を書いてサマリヤに送り、サマリヤのつかさたちや長老たち、および、アハブの子の養育係たちにこう伝えた。

 アハブにはずいぶんたくさんの子供がいたようです、七十人の子供がいます。

10:2 「この手紙が届いたら、あなたがたのところに、あなたがたの主君の子どもたちがおり、戦車も馬も城壁のある町も武器もあなたがたのところにあるのだから、すぐ、10:3 あなたがたの主君の子どもの中から最もすぐれた正しい人物を選んで、その父の王座に着かせ、あなたがたの主君の家のために戦え。」10:4 彼らは非常に恐れて言った。「ふたりの王たちでさえ、彼に当たることができなかったのに、どうしてこのわれわれが当たることができよう。」

 エフーは、挑戦状を突きつけています。

10:5 そこで、宮内庁官、町のつかさ、長老たち、および、養育係たちは、エフーに人を送って言った。「私どもはあなたのしもべです。あなたが私どもにお命じになることは何でもいたしますが、だれをも王に立てるつもりはありません。あなたのお気に召すようにしてください。」10:6 そこで、エフーは再び彼らに手紙を書いてこう言った。「もしあなたがたが私に味方し、私の命令に従うのなら、あなたがたの主君の子どもたちの首を取り、あすの今ごろ、イズレエルの私のもとに持って来い。」そのころ、王の子どもたち七十人は、彼らを養育していた町のおもだった人たちのもとにいた。10:7 その手紙が彼らに届くと、彼らは王の子どもたちを捕え、その七十人を切り殺し、その首を幾つかのかごに入れ、それをイズレエルのエフーのもとに送り届けた。10:8 使者が来て、「彼らは王の子どもたちの首を持ってまいりました。」とエフーに報告した。すると、彼は、「それを二つに分けて積み重ね、朝まで門の入口に置いておけ。」と命じた。

 すごい光景ですが、当時の社会では、このように負けた者たちの首を陳列することによって、自分たちが勝ったことを示していました。

10:9 朝になると、エフーは出て行って立ち、すべての民に言った。「あなたがたには罪はない。聞け。私が主君に対して謀反を起こして、彼を殺したのだ。しかしこれらの者を皆殺しにしたのはだれか。10:10 だから知れ。主がアハブの家について告げられた主のことばは一つも地に落ちないことを。主は、そのしもべエリヤによってお告げになったことをなされたのだ。」

 イスラエルの民は、このような首さらしの光景を見て、動揺していたのでしょう。エフーが、何が起こっているのかを説明しています。自分が王を殺したが、これはかつてエリヤを通して主が語られたことなのだ、と説得しています。

10:11 そして、エフーは、アハブの家に属する者でイズレエルに残っていた者全部、身分の高い者、親しい者、その祭司たちを、みな打ち殺し、ひとりも生き残る者がないまでにした。10:12 それから、エフーは立ってサマリヤへ行った。彼は途中、羊飼いのベテ・エケデという所にいた。10:13 その間に、エフーはユダの王アハズヤの身内の者たちに出会った。彼が「あなたがたはだれか。」と聞くと、彼らは、「私たちはアハズヤの身内の者です。王の子どもたちと、王母の子どもたちの安否を気づかって下って来たのです。」と答えた。10:14 エフーは「彼らを生けどりにせよ。」と言った。それで人々は彼らを生けどりにした。そして、ベテ・エケデの水ためのところで、彼ら四十二人を殺し、ひとりも残さなかった。

 ユダから来た、アハズヤの者たちは、このような事態の急展開を何も知りませんでした。アハズヤがイズレエルにいるヨラムを見舞いに行っていると思っていました。けれども、エフーは、アハブ家の血が混じっている彼らをも容赦せず、殺しました。

10:15 彼がそこを去って行くと、彼を迎えに来たレカブの子ヨナダブに出会った。エフーは彼にあいさつして言った。「私の心があなたの心に結ばれているように、あなたの心もそうですか。」ヨナダブは、「そうです。」と答えた。「それなら、こちらに手をよこしなさい。」ヨナダブが手を差し出すと、エフーは彼を戦車の上に引き上げて、10:16 「私といっしょに来て、私の主に対する熱心さを見なさい。」と言った。ふたりは、彼の戦車に乗って、10:17 サマリヤに行った。エフーはアハブに属する者で、サマリヤに残っていた者を皆殺しにし、その一族を根絶やしにした。主がエリヤにお告げになったことばのとおりであった。

 レカブについては、エレミヤ35章にて、その子孫の話が出てきます。かつてレカブが行った言葉をそのまま守っている、律法に熱心な人たちでした。今ここで、そのレカブの子ヨナダブがエフーに会い、共にこの主の働きをしていくことになります。

2C バアル信仰者 18−27
 エフーは、アハブ家を根絶やしにするだけでは終わりませんでした。アハブ家が残した最悪のもの、バアル信仰を滅ぼすことに着手しました。

10:18 エフーは民全部を集めて、彼らに言った。「アハブは少ししかバアルに仕えなかったが、エフーは大いに仕えるつもりだ。10:19 だから今、バアルの預言者や、その信者、および、その祭司たちをみな、私のところに呼び寄せよ。ひとりでも欠けてはならない。私は大いなるいけにえをバアルにささげるつもりである。列席しない者は、だれでも生かしてはおかない。」これは、エフーがバアルの信者たちを滅ぼすために、悪巧みを計ったのである。10:20 エフーが、「バアルのためにきよめの集会を催しなさい。」と命じると、彼らはこれを布告した。10:21 エフーが全イスラエルに人を遣わしたので、バアルの信者たちはみなやって来た。残っていて、来なかった者はひとりもいなかった。彼らがバアルの宮にはいると、バアルの宮は端から端までいっぱいになった。10:22 エフーが衣装係に、「バアルの信者全部に祭服を出してやりなさい。」と命じたので、彼らのために祭服を取り出した。10:23 エフーとレカブの子ヨナダブは、バアルの宮にはいり、バアルの信者たちに言った。「よく捜して見て、ここに、あなたがたといっしょに、主のしもべたちがひとりもいないようにし、ただ、バアルの信者たちだけがいるようにしなさい。」

 バアル信者すべてをバアルの宮の中に集めました。そして、注意深く、ヤハウェの信者がそこにはいないように気をつけなさい、とヨナダブが行っています。彼らの企みはまだ、だれも分かっていません。

10:24 こうして、彼らはいけにえと、全焼のいけにえをささげる準備をした。エフーは八十人の者を宮の外に配置して言った。「私があなたがたの手に渡す者をひとりでものがす者があれば、そのいのちを、のがれた者のいのちに代える。」

 一人でも生き延びたら、あなたが死ななければならない、と言われています。

10:25 全焼のいけにえをささげ終わったとき、エフーは近衛兵と侍従たちに言った。「はいって行って、彼らを打ち取れ。ひとりも外に出すな。」そこで、近衛兵と侍従たちは剣の刃で彼らを打ち、これを外に投げ捨て、バアルの宮の奥の間にまで踏み込んだ。10:26 そしてバアルの宮の石の柱を運び出して、これを焼き、10:27 バアルの石の柱をこわし、バアルの宮もこわし、これを公衆便所とした。それは今日まで残っている。

 すごいですね、けれども偶像礼拝を破壊するとき、しばしば、このような汚し方をします。ヨシヤの時は、人骨をばらまいたり、ゴミ捨て場にしました。

3C ヤロブアムの道 28−36
 こうして、主が言われていることをすべて行なったエフーですが、このエフー自身が偶像礼拝から抜け出せない姿を次に見ます。

10:28 このようにして、エフーはバアルをイスラエルから根絶やしにした。10:29 ただし、エフーは、イスラエルに罪を犯させたネバテの子ヤロブアムの罪、すなわち、ベテルとダンにあった金の子牛に仕えることをやめようとはしなかった。10:30 主はエフーに仰せられた。「あなたはわたしの見る目にかなったことをよくやり遂げ、アハブの家に対して、わたしが心に定めたことをことごとく行なったので、あなたの子孫は四代目まで、イスラエルの王座に着こう。」10:31 しかし、エフーは、心を尽くしてイスラエルの神、主の律法に歩もうと心がけず、イスラエルに罪を犯させたヤロブアムの罪から離れなかった。

 エフーの問題は、主の働きについては熱心だったけれども、主との関係においては弱かったことです。今日の教会に当てはめれば、伝道や教会活動には熱心だけれども、本当の意味で、主を知って、主との親しい交わりを持っているわけではない人になるかと思います。バアルの偶像礼拝については、非常に怒りを覚えているのに、ヤロブアムの金の子牛は捨てることができなかった、ということは、一つの命令は強く感じていて、それを、とことんまでやっているのに、他の主の命令には無頓着であることがあります。

10:32 そのころ、主はイスラエルを少しずつ削り始めておられた。ハザエルがイスラエルの全領土を打ち破ったのである。10:33 すなわち、ヨルダン川の東側、ガド人、ルベン人、マナセ人のギルアデ全土、つまり、アルノン川のほとりにあるアロエルからギルアデ、バシャンの地方を打ち破った。

 エフーの霊的状態も手伝って、北イスラエルの国がどんどん削り取られて行きました。これは、私たちの霊的生活にも当てはまります。私たちが、霊的生活で妥協していれば、主の祝福を楽しむことができる領域がどんどん少なくなっていきます。主との関わりが強ければ強いほど、いわば「国境」が広がるのですが、そうでなければ狭められていくのです。

 そして興味深いことに、削り取られた初めの地域は、ヨルダン川の東であることに注目してください。そこには、ルベン、ガド、マナセ半部族の相続地があります。彼らは、ヨルダン川を渡る前に、「私たちはこの土地が良いですから、よこしてください。」とモーセに言った人たちです。約束のものを手に入れることなく、現状で満足する、また貫徹することのない姿勢は、このように必ず後で障害が出てきます。

 さらに興味深いのは、エフーの領土をハザエルが削り取っていることです。主はエリヤに、ハザエルもさばきの器として油を注ぎなさい、と命じておられましたが、本人がさばきの器であるはずのエフーが、これまた別のさばきの器であるハザエルによってさばかれているのです。私たちが行なっている主の働きによって、私たちの霊的状態が保証されるのではないことを、如実に表わしています。

10:34 エフーのその他の業績、彼の行なったすべての事、および彼のすべての功績、それはイスラエルの王たちの年代記の書にしるされているではないか。10:35 エフーは彼の先祖たちとともに眠り、人々は彼をサマリヤに葬った。彼の子エホアハズが代わって王となった。10:36 エフーがサマリヤでイスラエルの王であった期間は二十八年であった。

 こうしてハザエルとエフーの働きについて見ました。どちらも主君に謀反を起こした形でさばきが行なわれましたが、主に喜ばれない統治を行なっているところには、混乱と不安があることを物語っています。主がおられるところには平和と秩序があります。私たちの生活にも平和と秩序がもたらされるときは、平和の主を第一に求めるときです。


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