イスラエル旅行記その2 − 宿泊事情

 イスラエル(エルサレム)の1日目はまだ我々が合流するアメリカからのツアーグループが来ていないので、自力で見つけたB&B(朝食付きのペンション)に泊まった。

 国境越えでバスのほかの人がなかなか出てこず3時間の足止めを食らったので、ペンションに着いたのはもう次の日になっていた。大通りから少し離れた奥まったところにあったので、見つけるのに苦労したが、都会のど真ん中でこんなに静かに眠ることができるのかと感動する静けさだった。窓を少し開けておけば、天然クーラーで快適。洗濯物もすぐ乾く。

 到着が遅くなるかもしれないことは事前に連絡しておいたので、ドアにメモを残しておいてくれ、鍵のありかがわかった(つまり治安はいいってこと?)。アンティーク風の質素だけれどもしゃれた感じのお部屋。石鹸も、シャンプーもタオルまで用意されていて、至れり尽くせり。

 朝ごはんは8時からということで、次の日キッチンに出て行ったときに、ペンションのオーナーに初めて会う。初老の上品なおじさんだ。すこぶる親切。チーズの入ったフルーツサラダやサンドイッチなど健康的なボリュームたっぷりの朝ごはん。

 我々が泊まったお部屋は、個室バスルーム付のダブルルームと、このペンションでは一番お値段の高いお部屋だったのだが、二人で60ドル也。カイロの安宿は二人で一泊12ドルだったけど、いかさまツアーで更に50ドル払う羽目になったことを考えれば値段的には同等。しかしクオリティーにはこんなに大きな差が・・・。

 ところで、次の日はツアーグループと合流して5つ星のクラウンプラザ・ホテルというところに泊まったのだが、部屋が9階と眺めはいいのだが、うるさいし、部屋は改築が必要な感じ。困ったのは、冷蔵庫が不調で、水漏れを起こしていたこと。冷蔵庫と言っても木製で、さほど冷えない。ホテル側は、「冷蔵庫ではない、ミニバーだ。」と主張。その割には、お酒どころか、水一本入っていなかったが。設備の不調はこれだけではない。2台ある電話のうちの1台が壊れていて、大事な電話を受け取ることができなかったことなど、主人と二人で星なしの前日のペンションのほうがよっぽど良かったね、と。

 後でガイドさんから聞いた話だが、今世紀に入ってからイスラエルへの観光客がめっきり減って、ホテルは軒並み経営が苦しい期間がかなり続いて、ここ1、2年ようやく持ち直してきたばかりとか。クラウンホテルも改築中(我々の泊まったのはまだ改築されていない部屋)なので、少しは割り引いて考えてあげないといけないのかなあ。ちなみに、ガリラヤ湖に移動するまで、ここに6泊連泊。

 ちょっとベッドで気になることが・・・。キングサイズベッド仕立てなのだが、シングルベッドより幅が狭いマットレスが二つつなぎ合わせてあって、それぞれにベッドメーキングがなされている。つまり、夫婦で寝るとなると、夫婦の間に分離壁ができるようになっている。すご〜く違和感があるのだが・・・。これは文化的なものなのだろうか。それとも単なるベッドメーキングがしやすいからという理由なのだろうか。

 ガリラヤ湖でのお宿は、ガイビーチ・ホテル。ビーチと銘打つだけあって、ガリラヤ湖に面していてガリラヤ湖で泳ぐことが可能。しかし、遊泳時間は9時5時なので(ツアーが終わって戻ると5時半とか6時になっているので)、結局私は1度も泳げなかった。主人は強引に一度泳いだが、すぐに警備の人に注意されて、ちゃんと泳ぐことはできず仕舞い。ここは4泊。ちなみにここでのベッドもキングサイズベッド仕立てで、シングルベッドより幅が狭いマットレスが二つつなぎ合わせられたもの。しかし、分離壁は無かった。大幅の改善だ。

 そして最後は、ずっと南のエイラットに下ったときに泊まったクラウンプラザ・ホテル。ここは改築がされたのか、それとも比較的築年数が浅いのか、特に設備の問題は無し。ベッドもマットレス一枚で快適だった。

 ホテルは全部朝食と夕食付。できるだけ早い時間から観光に出かけて、戻って少し休んだらホテル内で夕食ができるというのはとても便利。この辺はケチらず、素泊まりではなく食事をつけたほうが観光に専念できて、かえって割り得。イスラエルは物価がとても高いので、外で食べると結構なお値段になる。朝と晩ホテルでみっちり食べて、昼は軽めに食べるとか、予算があまり無いなら、スナック菓子や果物でごまかすこともできるかも。星が多いホテルだったこともあるのか、バイキング形式で、好きなものを取って食べることができたので、良かった。

 エルサレムのクラウンプラザ・ホテルでは夕食にレギュラーコーヒー(インスタントのはあったが)が置かれておらず、コーヒー好きの主人がコーヒーを探してきょろきょろしていると、児童労働じゃないの?と思えるほど若い男の子(どう見ても小学校高学年か中学生にしか見えない)が、コーヒーをお持ちしましょうかと言ってきた。お願いします、と主人が言うと、持ってきてくれた。その後も、追加のコーヒーを入れに来て、至れり尽くせり。しかし、落とし穴が。3杯目にもういいですと言ったところでチップをねだられた。うわさだと、アラブ系の人がたくさん働いているとのこと。しかもその日は安息日だった。ちなみに安息日にはホテルの食事の時間が少し繰上げでスタートする。

 イスラエルのホテルでは一般的に夕食にコーヒーを出さないそうだ。理由は、コーヒーにミルクを入れる人が多いから。ちなみにエルサレムのクラウンプラザ・ホテルには紅茶も無く、フレッシュなミントが用意されていた。ミント・ティーにミルクを入れる人はいないもんね。イスラエルの人たちには宗教上食物規定というのがあって、乳製品と肉をいっしょに食べてはならないからだ。ガイビーチ・ホテルではさらに極端で、レストランの中ではコーヒー紅茶は一切置かれていなかった。飲みたかったら1階のコーヒーショップでどうぞ、と言われてしまった。詳しくは、次の食べ物事情の部分をご覧あれ。

 ちょっと困るのが、安息日(金曜日の日没から土曜日の日没まで)の時のエレベーター。普通は、ユダヤ人用のシャバット・エレベーターと一般向けのエレベーターに分かれているはずなのだが、我々が泊まったホテルのエレベーターは、全部シャバット・エレベーターになっていて、まずロビーから最上階へ昇っていって、偶数階に泊まるとか奇数階に泊まるとか、突然どこか別の階へ急下降してみたり、パターンが見極められなくて、困った。これならいっそのこと各階に泊まってもらったほうが分かりやすい。ユダヤ人はエレベーターのボタンを押すことは労働と考えているので、安息日には、シャバット・エレベーターのボタンは、いくら押してもびくともしない。

 この他にも、ホテルの中の公衆トイレのトイレットペーパーはロール式ではなく、ティッシュのように切れていた。これも、トイレットペーパーを切る作業が労働と考えられているせいなのだろう。

 安息日(シャバット)について、もう一言付け加えるなら、シャバットの期間中はユダヤ人街は店がすっかり閉じられてがらんどうになる。従って、ユダヤ人地区での買い物はできなくなる。しかし、ご心配なかれ。アラブ人街に行けば、お店は全部開いている(彼らの休みは金曜日)。安息しなければいけないはずのユダヤ人の多くが、この日はアラブ人街でお買い物をするとか。自分たちも守れないなら、最初っからやせ我慢しなけりゃいいのに。