エジプト旅行記その2 − ピラミッド事情


 今回の旅行の主目的はイスラエル旅行。しかし日本からイスラエルに直接行く便は無いので、どこかを経由することになる。経由の仕方は様々だが、おおむねヨーロッパのどこかの都市を経由することが多い。ちなみに経由地の待ち時間で言えば、「全日空で香港を経由してエルアル航空でテルアビブ」または、「エールフランスでパリを経由してテルアビブ」がスマートな感じ。しかし、いずれもこの燃油税高の折、とんでもなお値段。そこで考えたのが、カイロ経由で陸路イスラエルに入るというもの。少なくとも、一人当たり飛行機代だけを考えれば10万円は安い計算だった。かける2となると、20万円浮く計算。しかし、実際は陸路の交通手段の費用や、エジプトのビザの費用、国境越えの費用(出国時に払うお金)、ホテル代などがかかり、実質的に節約できるのは10万円そこそこ。しかし、せっかくカイロまで来て、ピラミッドを見ないわけはない。ということで、ピラミッドを見ることに。ただし、ピラミッド見学(カイロ散策)にあまりお金をかけすぎると、節約の意味が無くなる。

 安宿で紹介されたピラミッドツアーは、ギザの3大ピラミッドとルクソールのピラミッドをまわる半日強のツアーが一人40ドルと言われたのだが、ピラミッドだけにそんなに時間をかけていると他の物が何も見られなくなる、ということで、ギザだけ3時間で回るコースをお願いすると、一人25ドルという対案が来て、OKした。ガイドブックによるとピラミッドは、朝7時半からオープンになっていたので、7時出発をお願いすると、ピラミッドは9時にしか開かないから、8時に出発と言われた。しかし、ガイドブックには7時半と書いてあるのに・・・。この暑さで午前中ずっとピラミッドはつらいし、ほかのものも見られなくなるからと、譲歩して7時半出発にした。

 ところが、ところが、どっこい、行く途中に、ツアーガイド兼運ちゃんが、ここが政府の建物だ、博物館だ、地下鉄の駅だ、ナイル川だと素人でも説明できそうな説明しかしない。しかも、ピラミッドまで1時間かかるのかと思っていたら、30分弱でピラミッドの入り口近くまで到着。すると、ピラミッドの入り口ではなく、らくだ乗り場・馬車乗り場のところで、しばし車を止められた。ピラミッドの中を歩いてまわるのは大変だから、ここで頼めば安心で安いからと言われた。え〜っ!ピラミッドツアーって、車でまわりながら、ピラミッドの説明をしてくれるんじゃないわけ?ツアーガイド兼運ちゃんは、ピラミッドの敷地内にタクシーは入れないから、あっちの駐車場で待ってるから、自由にまわってきてね、とのたまわる。ピラミッドツアーって、タクシーを頼むのとどうちがうの?

 ここで事を荒立ててもしょうがない。歩いてまわることに。

 そもそもピラミッドの敷地内に入るのに一人50エジプトポンド(約1,000円)、二人で2,000円かかる。さらに、クフ王のピラミッドの中に入ろうものなら、一人100エジプトポンド(約2,000円)、二人で4,000円かかる計算。個人レベルではなく、国をこぞってぼったくり。中に入るのは、はなからあきらめ。時間もないし、外を眺めて写真をとればよし、ということに。ところで、9時にオープンなんてまるで嘘。8時ちょっと前に着いたときには、もう既に中にはかなりの人が入っていた。やっぱり、7時半オープンじゃん。

 入り口を入るとはるかにピラミッドが3つ見えた。大半の人は観光バスでピラミッドのごく近くまで乗り付けて中に入っている。台数は少ないものの、タクシーらしき乗り物もちらほら。本当にピラミッドの敷地内にタクシーが入れないのか?つまりは観光タクシーのライセンスが無い車が入れないって事なのじゃないのかと、疑ってしまう。しかし、徒歩でまわっている人もかなりいた。中には中国人も。北京オリンピックを無視して、エジプトくんだりまで来るとは、本土ではなく、華僑?ともかく歩けない距離ではないので、がんばって歩く。

 ピラミッドまで行く途上で、何度となくらくだにのらんかな、の声が。ノー・サンキューを繰り返しているうちに、らくだがぼたんと落し物を。もう少しで、跳ね返りを浴びそうに。湯気が出そうな出来立てほやほやを見物する羽目に。しかし、これだけらくだが多いと、そこら中、糞だらけ。ピラミッド・イコール臭い、のイメージが強く残った。

 物売りもしつこい。売っているものはある程度決まっている。かぶりもの、ピラミッドの置物、ペンなど。何度いろいろな人に買わんかな、と言われても、いらないものはいらない。断るだけで、時間を浪費させられる。しかも、暑い。
 ピラミッドの中に警備員(警察官かもしれない)がさっそうとらくだに乗って、あちこちを巡回している。観光客用の薄汚いらくだではなく、白っぽいこぎれいならくだに乗る姿は、りりしく見えた。しかし、この国、いたるところに警官がいる。そんなに治安が悪いのかなと不安な気分にもなる。

 ピラミッドは大きかった。よく大昔にこんなものを作ったものだと、感心させられた。やっぱり、一度は見る価値がある(二度見る価値があるかどうかは・・・???)。

 ピラミッドを回っていて気づいたのは、ピラミッドのまわりに、石がごろごろ落ちていること。つまり、ピラミッドは作られて以来、風化などで、どんどん石が剥がれ落ちて、落石が進んでいるのだ。いつこれらの石は落ちてきたのだろう?落石防止壁やネットなんてどこにもないけど・・・。頭上に注意しながらまわる。スフィンクスと一番大きいピラミッドと二番目に大きいピラミッド(ガイドの説明がないのでとにかく見るだけは見たが)をまわったらもう暑さでへとへと。三番目のピラミッドを遠目にして、10時過ぎにギブアップ。もし、宿屋の主人のアドバイスを聞いていたら・・・と思うと恐ろしくなった。日が昇れば昇るほど暑くて、体力を消耗する。

 結局、10時20分には駐車場の車の中に。車に入ってほっと一息つく前に、人が寄ってきて何か運転手に話している。物乞いだと思って無視を決め込もうとしているところに、運転手が私たちに何か話しかける。「バァールキング」と聞き取れた。えっ!駐車料払えって言うこと?それって、ツアーにコミコミじゃないの?しかたなく、1エジプトポンドを払うことに。

 帰りは、場所の説明はほとんどなく、カイロ市内まで20分とかからない。つまり、安宿からピラミッドまで、20分程度しかかからなかった計算になる。宿屋の主人は大うそつき。もともと行くのに1時間近くかかるようなことを言われたので7時半から11時半まで3時間のチャーターにしたのに、市内でさよならしたのは、10時40分。これなら2時間チャーターで十分だったじゃない、と悔しさいっぱい。主人はあきらめきれずに、宿屋の主人に文句を言う、とカンカン。私は既にもうお金は返ってこないとあきらめた。後に、宿に帰って私の判断が正しかったことが判明するのだが。

 危害を加えるとか、悪質なだましとかではないので、名指しの批判は控えるが、有名な某ガイドブックで、日本語が通じる安宿と言えばここしかないので、想像力を働かせていただけばすぐわかるはず。そこのピラミッドツアーはよしたほうがよさそうだ。

 この悪い経験のせいで、カイロを離れるさいに、バス停までタクシーで連れて行ってあげようかと宿屋の主人に言われたが、お断りした。たいした距離でもないのに、どれほどぼられるのかと怖くて、地下鉄を使ってバス停まで行った。ちなみに地下鉄はどこまで乗っても1エジプトポンド(20円)。これだけでも、ピラミッドツアーの50ドルがどれほど高い値段かは、想像に難くないだろう。